クラブヴォーバンの考える家・街

クラブヴォーバンが考える家・まちづくりはヴォーバン住宅地で採用された以下のソーシャル・エコロジーコンセプトをベースとします。

ヴォーバン住宅地で採用されたソーシャル・エコロジーコンセプトの10か条

  1. 適度な人口密度による住宅地の実現
  2. 既存の樹木や植生、地形、既存建物を最大限生かす
  3. 中心部に商業施設と雇用を呼び込み、住宅地のアイデンティティ(独自性)の確保
  4. カーフリー(カーポートフリー)での住宅地設計
  5. 近自然工法による住宅地内の緑地(公園など)の確保
  6. 屋上緑化などの対策を盛り込んだ雨水コンセプト
  7. コンポスト(堆肥)を主軸とした住宅地内での廃棄物処理
  8. 省エネ建築様式(高断熱・高気密)による住居設置の義務化
  9. 地域暖房の導入とコージェネレーションでの発熱・発電
  10. コーポラティブを主体とした集合住宅の実現

1) 適度な人口密度による住宅地の実現

従来の日本の「街」は、町屋という平面での集合住宅建築によって成り立っていました。ところが高度成長期以降、土地が膨大で石油を大量に産出する [時代]と[場所]でのみ機能するアメリカ型の戸建住宅が一般的になったことで、これだけ小さな国土でありながら、二酸化炭素の排出が世界で4番目に多いというエネルギー多投型の国へと変貌を遂げました。地球温暖化による壊滅的な被害をおさえるためには、一次産業に関わる地域や人びと以外の都市に住む人々の住宅形式は、集合住宅となることが求められます。具体的には、宅地部分で300人/ヘクタール、敷地全体に対して130~150人/ヘクタール。周辺地域の景観や土地利用、自然形態なども考慮し、平均して宅地部分の建蔽率は50%前後、容積率は200%~220%とする都市が望ましく、建物は道に対して 長屋型(あるいは町屋型)の軒が連なる連続方式を基本とし、4階建て(3~5階建て)のメゾネット方式が理想です。このような住宅地づくりを押し進めることで、公共交通機関を導入しても採算が取れ、住宅地内に小規模の商業施設や雇用を確保することにつなげます。

長屋式集合住宅といっても個性を否定することではない。日本の城下町や欧州の港町など歴史的にも、ヴォーバンでの現実でも、高い人口密度と個性の両立は可能である。 長屋式集合住宅といっても個性を否定することではない。日本の城下町や欧州の港町など歴史的にも、ヴォーバンでの現実でも、高い人口密度と個性の両立は可能である。

2) 既存の樹木や植生、地形、既存建物を最大限生かす

開発、再開発、新築しようとする宅地の元の地形や既存の建物、すでに存在する植生や樹木をできるかぎり保存し、そうした既存物を主軸とした住宅地開発を目指します。また、既存建物をリフォームすることは、スクラップ&ビルドよりもエネルギーバランス、資源消費のエコバランスに優れた手法であるため、極力、既存建物を活用することを念頭におくことが理想的です。

新築・大木付きの家。分譲する土地の中には、大木が庭の部分にすでに存在する物件もあった。もちろん、この大木の根の部分、樹幹部分の面積は保護が指定されており、切り倒したり、枝振りをして、構造物を建てることは許されていない。 新築・大木付きの家。分譲する土地の中には、大木が庭の部分にすでに存在する物件もあった。もちろん、この大木の根の部分、樹幹部分の面積は保護が指定されており、切り倒したり、枝振りをして、構造物を建てることは許されていない。

3)中心部に商業施設と雇用を呼び込み、住宅地のアイデンティティ(独自性)の確保

第1条で提言した適度な人口密度が達成できれば、住宅地の中心部の活性化が容易となり、自動車交通が低減され、公共交通が機能し始めます。学校などの教育機関や幼児施設はもちろん、介護施設なども住宅地内に組み込み、それらと合わせて中心地となる集会場/公民館やその周りには日常生活の業務をこなせる商業施設(小規模のスーパー、生協、パン屋、文具店、キオスク、喫茶店、軽食店、中古を含む衣料店、銀行の出先窓口やホームドクターの診療所、旅行代理店、自転車店や工務店などの軽手工業)を組み込むことによって、1,000人の人口に対して住宅地内に100~150人分の雇用を確保することが十分に可能です。

住宅地内のパン屋さんの前で。こうした小さな規模のお店と、そのお店のちょっとした機転(ベンチの設置)で、住宅地の中央通りは社会福祉的な機能を持つ井戸端会議の場所に。 住宅地内のパン屋さんの前で。こうした小さな規模のお店と、そのお店のちょっとした機転(ベンチの設置)で、住宅地の中央通りは社会福祉的な機能を持つ井戸端会議の場所に。

4)カーフリー(カーポートフリー)での住宅地設計

マイカーを宅地部分に駐車させることは、土地の無駄遣いの象徴です。とはいえ、駐車場を地下や屋上とすることはコスト増に繋がりますので、住宅地外縁に 1,000人規模の需要をまかなえる簡易な立体駐車場を設置し、宅地部分はカーポートフリー(駐車場の設置を禁止)にすることで、住宅地の暮らしの質の向上とバリアフリー、高齢者・子供・主婦へやさしい環境を整備します。それにあわせて、需要が増大する自転車道路や駐輪場の整備、公共交通の路線の確保が求められます。

駐車場を宅地から排除することで、道は、路地となり、社会福祉的な機能を持つ人間のための空間に変わった。ヴォーバン住宅地では、車の騒音ではなく、子供の声が絶えない。 駐車場を宅地から排除することで、道は、路地となり、社会福祉的な機能を持つ人間のための空間に変わった。ヴォーバン住宅地では、車の騒音ではなく、子供の声が絶えない。

5)近自然工法による住宅地内の緑地(公園など)の確保

〈住宅地内の庭や公園、街路樹〉、〈既存の植生や地形(農地/里山/小川/用水路/ため池など)を利用した周辺の緑地〉、〈建物における屋上緑化や壁面緑化〉などは、できるかぎり在来種を優先し、植生の遷移をうまく活用することで、小さくても多様な自然を住宅地内に取り込むようにします。とりわけ、住宅地内の緑が「ライン」で連なり、細くとも切断されない配慮は最低限必要となります。

またこの配慮は、人口密度が高く、集合住宅を中心とする街には、圧迫感を抑制するためにも必ず配慮しなければならないポイントとなります。緑は、人びとを温和にする社会福祉的な機能を併せ持つことを前提に計画することが必要です。

街路樹、前庭、壁面緑化が緑のラインをつなぐ。 街路樹、前庭、壁面緑化が緑のラインをつなぐ。

6) 屋上緑化などの対策を盛り込んだ雨水コンセプト

住宅地に降る雨水は、できる限り住宅地内の緑地に浸透させる配慮をし、平屋根には屋上緑化を義務化するなどして雨水が一度に住宅地から吐き出されないように設計します。ヒートアイランド現象の緩和と在来種の植生を考慮し、地下水位の低下防止にも気を配ります。ここまでにあげた既存の地形や植生をうまく活用する方針は、このコンセプトとの整合性を取るためのものでもあり、相互作用してこそはじめて意義が出てきます。

住宅地内に降った雨は、屋上緑化、庭、公園などで緩和されながら、最終的には住宅地内に設置された雨水マスに浸透する。ヴォーバンでは年間降雨量の6割以上が住宅地内で地下浸透されている。 住宅地内に降った雨は、屋上緑化、庭、公園などで緩和されながら、最終的には住宅地内に設置された雨水マスに浸透する。ヴォーバンでは年間降雨量の6割以上が住宅地内で地下浸透されている。

7) コンポスト(堆肥)を主軸とした住宅地内での廃棄物処理

住宅地単位の廃棄物処理でLCAにも優れ、経済的なのが、生ゴミを含む緑のゴミのコンポスト化によるリサイクルです。それ以外は、当該の自治体の処理方法に準じることになります。小規模な住宅地単位においては、生ゴミはリサイクルの優等生ですが、日本ではほとんどの場合、コンポスト化の努力はなされず、焼却処理されることがほとんどです。

たとえばスイスでは一般的に広がっている住宅地における「集合コンポスト施設」を住民参加によって設置・運営することで、汚いゴミ捨て場のイメージを払拭し、井戸端会議的な人の集まる場所、ガーデニングのための肥料と情報の供給所になるような取り組みを目指します。

8) 省エネ建築様式(高断熱・高気密)による住居設置の義務化

化石燃料などのエネルギー源は枯渇が近づくと高騰し、需給バランスが狂うため、現在すでに見られているような価格の乱高下がますます強度を上げて続いてゆきます。さらに気候変動への対策を考えたとき、最先端技術を導入した省エネ住宅の建築は、経済性を考慮したランニングコストの観点からも、環境保護の観点からも、まずは第一義に考えなければならない、避けては通れない大きな課題です。

とりわけ今の時代の新築の建物では、高断熱・高気密は当然として、太陽を受身で利用するパッシブ・ソーラーの思想や、最先端の窓サッシ、そして開口部の遮熱などは、必ず導入する必要があります。太陽光発電などエネルギー供給サイドの持続可能性を高める努力も重要ですが、まずその前に何はともあれ建物の省エネ化、そして余裕があればソーラー温水器や木質バイオマスの利用などの電気よりも、熱利用の自然エネルギー化、高効率化を優先して検討します。

南向きには大きな窓が取りつけられ、夏場と冬場の日射量を調整するパッシブ・ソーラーハウス。建物についての詳しくは、EOLWAYSレポートを参考のこと。 南向きには大きな窓が取りつけられ、夏場と冬場の日射量を調整するパッシブ・ソーラーハウス。建物についての詳しくは、EOLWAYSレポートを参考のこと。

9) 地域暖房の導入とコージェネレーションでの発熱・発電

日本においても全国を平均すると、家庭で消費されるエネルギーのうち、給湯と暖房という「熱」を発生させるために、およそ半分のエネルギーが消費されています。311以降に首都圏で計画停電が生じたとき、気温の低下と比例して電力需要が増大したのは記憶に新しいことです。

これを効率の悪い世帯単位ではなく、より広範囲な住宅地全体として、あるいは街角ごとに、共同住宅地ごとに、共通の高効率の発熱装置で発熱し、熱を各世帯に分配する方式は、ロスが少なく効率的で、かつスケールが大きくなることから高効率な機器を導入しやすい利点があります。

また、この熱の発生施設に、熱効率が著しく向上するコージェネレーション(発電・発熱併用施設:CHP)を導入すれば、地域としてのエネルギー効率を飛躍的に高めることが可能です。

もちろん、こうした地域暖房という施設の導入は、ある程度エネルギー需要があってこそはじめて設置する意味がでてきます。超高断熱・高気密住宅(例、パッシブハウスなど)と太陽温水器の活用などで、それぞれの世帯で熱需要がかぎりなくゼロに近づくのであるならば、公共施設や軽工業地以外では、地域暖房すらも必要なくエネルギー消費を減らす取り組みも考えられるでしょう。

ここで述べたことは夢物語でも、高価なパイロットプロジェクトでもありません。すでに成熟し、普及している技術の組み合わせで、住宅地内のエネルギーの大部分を賄うことは可能となっています。

ヴォーバン住宅地では、地域暖房が整備され、木質バイオマスによるコージェネレーションが稼動している。持続可能な地元林業から提供される間伐材、低級木材のチップを原料にした発熱・発電の恩恵で、住宅地から発生するCO2を大幅に削減している。 ヴォーバン住宅地では、地域暖房が整備され、木質バイオマスによるコージェネレーションが稼動している。持続可能な地元林業から提供される間伐材、低級木材のチップを原料にした発熱・発電の恩恵で、住宅地から発生するCO2を大幅に削減している。

10) コーポラティブを主体とした集合住宅の実現

第1条で示したような人口密度を達成するために、それぞれが一戸建てで、連続メゾネット式の4階建てを建築することは、今の日本の現状では、ほぼ不可能です。そのため、多くの建物が、長屋式、メゾネット式の共同住宅で形作られることが望ましいと言えます。その際に、できれば分譲住宅ではなく、住民主体のコーポラティブハウス方式によって建設することが推奨されます。その結果、住民同士の交流が図られ、社会的なネットワークが住宅地内に発生します。これが第3条の住宅地のアイデンティティの確保や地元商業施設の活性化、第4条の車のための〈道路(=社会的交流の分断)〉を暮らしのための〈路地〉とするカーフリーコンセプトと相まって、ソーシャル・エコロジー住宅地が形成されていくのです。

メゾネット式で、コーポラティブハウス方式による共同住宅は、これからの持続可能な開発を担う重要な柱となる。土地とエネルギーの浪費を同時に行う戸建住宅は、第一次産業に関連する人びと、その地域以外では排除して行く努力が必要である。 メゾネット式で、コーポラティブハウス方式による共同住宅は、これからの持続可能な開発を担う重要な柱となる。土地とエネルギーの浪費を同時に行う戸建住宅は、第一次産業に関連する人びと、その地域以外では排除して行く努力が必要である。