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PJ80セミナー東京第3回 「日独の省エネ建築最前線 ~建物の省エネ改修の次は街の再生~」を開催しました!

7月21日の東京第三回目PJ80セミナーのテーマは「日独の省エネ建築最前線 ~建物の省エネ改修の次は街の再生~」。

 

日本ではまだまだ、住宅供給は新築が主体で、改修、それも省エネ改修の市場は、ほぼありません。一方、日本の既存の住宅の90%以上は、現行の省エネ基準に満たないと言われています新築住宅の省エネ化が進む中、次の日本の巨大なマーケットとして注目を集めているのが、既存住宅の省エネ改修。しかし、高い技術力と施工力が必要です。

 

株式会社低燃費住宅の代表を務める石川義和氏からは、香川で現在施工中の、150坪もある築37年のRC中古住宅の省エネ改修の事例の詳細説明がありました。四国とはいえ、真冬には外気温が氷点下になる日が月に5日もあり、断熱がなされていない住宅は、時には外気温より室温の方が低いことがあるとのこと。温度差が激しい住宅は、健康にも住宅にもよくありません。石川氏からは、ここ数年で小中学校の耐震改築や新築が盛んに行われたのにも関わらず、窓ガラスはいまだにシングルガラスで夏熱く冬寒いため、たくさんエアコンが導入されているが、光熱費がものすごくかかるので、使えるのは7、8月(夏休みで子どもがいない)だけ、という問題提起がありました。

 

これからの未来を担うこどもたちのための改修になっていません。これはきっと、香川のその小学校だけではないでしょう。今石川氏が行っている改修は、今後、小中学校での全国的な省エネ改修市場を見込んでの実績づくりとのことです。

次に、ベルリン在住の環境エネルギー政策専門家の西村健佑氏より、団地まるごとの省エネ改修によるまちの再生が行われている事例の紹介。省エネ改修先進国のドイツでは、建物そのものの省エネ改修はもちろんのこと、街自体を持続可能にしていこうという一歩進んだ取り組みが世界から注目を集めています。

 

ドイツ・ポツダム市郊外にある38haの巨大団地「ガーデンシティー・ドレーヴィッツ」は、社会的弱者が集まる「雰囲気の悪い団地」だったのに、今、見事に蘇りつつあります。改修前は子どもが生まれると若い世帯は団地外に引っ越す人が多かったですが、貧困層の団地の公共スペースや小学校などが、緑豊かに美しいデザインに改修されることで、子どもたちの遊び場もでき、若い世帯の定着率が高まり、家賃も1.5倍に上がり(貧困で値上がり分の家賃を支払えない人に対する配慮あり)、住民たちがそこに住むことに誇りを持ち、「アイデンティティー」を取り戻しつつあるとのことです。

 

その後、ゲストのベルリン在住の建築士金田真聡氏も交えて、日本におけるこれからの改修のビジネスの可能性について議論がありました。日本でも今後、お金のために建築をするのか、それとも未来の若い人たちのために建築をするのか?という根源的な問いかけもありました。