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持続可能なまちづくり × エネルギー自立地域をめざす全国ネットワーク

第18回 桑島隼也(CVPTメンバー / 株式会社Forchile代表 )

株式会社Forchile(フォーチル)代表の桑島隼也さんは、2013年に会社を設立して以来、ビルやマンションの建築から省エネ改修、メガソーラー建設など比較的大きなプロジェクトを手がけてきました。

かつて商社で太陽光発電を扱っていた時代には、特別な意義を感じていなかった桑島さんが、明確なビジョンを持ち、持続可能なまちづくりに挑むようになった経緯を伺いました。

太陽光発電事業に意義は感じなかった
Q:
桑島さんの会社では、どのような事業を展開されていますか?

クラブヴォーバンのメンバーの多くは住宅建設に携わっていますが、私が扱うのはオフィスビルなどの非住宅の建築物が中心です。また、既存建築物の改修工事や設備の更新を通じた省エネ化、メガソーラーの設置といった再エネ事業も手がけています。社員は現在30名ほどで、その多くが技術者です。

 

Q:環境、エネルギー分野との関わりを教えてください。

学生時代から経営に関心があり、就職してからは営業畑を歩んできました。IT関連の企業で働いたこともありますが、将来ずっとそこにいるのも面白くないと思うようになった頃に声をかけてくれた商社が、たまたま太陽光発電を手がけていました。今から10年ほど前、まだ太陽光発電がこれほど広がっていなかった時期です。そこでは、太陽光パネルを訪問販売する業者に卸し売りする営業の仕事をしました。

 

その後、固定価格買取制度(FIT)も始まり、社会で太陽光発電のニーズが一気に高まります。当時は、再生可能エネルギーを通じて社会をどうしたいという志があったわけではありません。ただ、うちの会社はマーケットの風上なので、量はとにかくたくさん扱っていました。現在はFITの買取価格も下がり、太陽光ビジネスは下火になっています。当時から、売電価格の高さに頼り、太陽光発電だけをやる事業は危ないと感じていたので、予想通りになりました。

 

ドイツで感じた日本との差
Q:
なぜ起業しようと考えたのでしょうか?

独立しようと考えたきっかけは、東日本大震災です。当時務めていた商社のオフスは東京の高層ビルの31階にあり、地震で揺れに揺れました。それに続いて、原発が爆発したことに恐怖を感じました。私たちが突きつけられたのは、社会が目先の利益だけを求めた結果として、こんなリスクを抱えてしまったという現実でした。過酷な状況を前に、「こんなことを繰り返さないためにいま何をすべきか?」とか、「未来の子どもたちが安心して暮らせる、豊かで持続可能な社会を作りたい」と強く思うようになりました。

独立を考えていた頃、早田宏徳さんや村上敦さんと出会い、ドイツのまちづくりを視察するツアーに参加させてもらいました。そこで、起業した先にめざすべき方向性が見えてきました。

 

Q:ドイツで印象に残ったことは何でしょうか?

太陽光発電ひとつとっても、ドイツでは特徴をうまく活かしながら、地域でエネルギーを生み出し、循環させる仕組みを築いていました。私は仕事で太陽光発電を扱ってはいましたが、自分も含め日本では関わっている人間のほとんどが、儲かるかどうかだけで判断していました。ドイツと日本とでは、未来の社会へのビジョンの持ち方に大きな差を感じました。

 

エネルギー産業は、ある種のインフラです。国や大企業が利権を握り、最終的にそこに巨額のお金が流れる仕組みになっています。しかしドイツで出会った人々は、地域レベルでその流れを転換し、地域にお金を取り戻そうと努力していました。自然エネルギーを増やし、省エネを進めることで、本来は地域外へと流出していたお金を地域に残し、地場産業を成長させることができる。こうしたビジョンを元に、経済構造を転換させている姿は衝撃的でした。「なるほど、こういう社会をつくれたら、子どもたちにいとってもいいだろうな」と腑に落ちたのです。

 

2013年末に独立して起業した会社名の「Forchile(フォーチル)」は、「For Children Energy/Education」という意味で、「未来の子どもたちの幸せのために」というメッセージを込めています。

■まちづくりに欠かせないゼネコンに
Q:
持続可能なまちづくりをめざす際に、なぜビルなど大きな建築物やメガソーラーを建てるようになったのでしょうか?

クラブヴォーバンには、ドイツのヴォーバン住宅地のような持続可能な街を日本でも作りたいと考えたメンバーが集まっています。でもこのグループには、日本でいうところのゼネコンの機能を持っている会社はありませんでした。自分はそこを担えるようになれればと考えたのです。いざ街をつくろうとなったときのために、省エネ型のビルやマンションの建設をやれる免許や技術力を構築しておくことは、最低限必要です。

 

戸建住宅を並べるだけでは、街にはなりません。特に持続可能な街を作るには、ありとあらゆる分野のノウハウが求められます。再エネや省エネはもちろん、交通や熱、風やデザインのことも熟知していなければいけない。住民のコミュニケーションをどうつくるかという発想も重要です。それぞれの分野のプロがノウハウを持ち寄り、はじめて素敵な街ができていくのだと思います。

 

私は会社を起業したときに、まちづくりをするために必要なことを考え、そこから逆算してやるべきことから手がけていくようにしました。起業から5年経った現在、会社は小さなゼネコンと言えるくらい、ひと通り何でも作れるノウハウを積み重ねてきました。新築マンションを建てたり、大規模改修をしたり、メガソーラーを作ったり、そうやってひとつひとつきちんと仕事をすることで、共感してくれる人も増えています。もちろん大変なこともありますが、概ね起業の際に計画した通りに進めることができています。

 

今後は、ゼロエネルギービル(ZEB※)を作ることを事業の中心にしたいと考えています。日本のビルはまだまだエネルギー性能が悪く、改善の余地があります。そんな中、中小の建設会社でZEBを作れる会社はかなり少ないという実状があります。一方で大手の建設会社は、小さなビル一棟といった規模では、手がかかるわりに儲からないのでやりたがりません。他の会社ではできないことができるのは、うちの会社の強みなので、それを活かしてできるだけ多くのZEBを建てていきたいと思います。

 

※ ゼロエネルギービル(ZEB): 運用段階のエネルギー消費量を、省エネや再生可能エネルギーの利用を通して削減し、プラスマイナスでゼロになる建物