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エネルギー自立地域経済好循環 × イノベーション 
                 持続可能なまちづくり

1月26日「第17回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

前回は、第6回目の持続会正会員自治体相互視察を兼ねて、岩手県の二戸市で持続会を開催させていただきました。国の動きより先駆け平成27年より始まった、二戸市における省エネ高性能住宅「二戸型住宅」の取り組みや、官民連携による温泉・宿泊施設再興の「カダルテラス金田一」の事例についてお話を伺いました。また代表の村上より、2022年2月に始まったばかりの環境省による「脱炭素先行地域」の内容や選定のポイントや、環境省から温暖化対策区域施策編などの策定にとても役立つ、最近できたツールの概要紹介と使い方などのレクがありました。国もどんどん進化しているので、本当に便利なこれらのツールを活用して、ぜひ自らの自治体の脱炭素の実行計画に役立ててほしい、とのことでした。

 

今回は、代表の村上より、CVの基本的な考え方である「kWh=¥」のおさらいと、昨今の各エネルギー価格の高騰の背景や今後の見通し、自治体において率先して行うべき省エネ対策、脱炭素先行地域の選考状況についてなど話題提供がありました。将来的にまちのコンパクト化や住んでいる人のある程度の利便性・快適性考える場合に、高性能・脱炭素型の集合住宅(できれば賃貸住宅)が今後必須となります。これまで公共からの住居に対する補助は、個人の持ち家か、持ち家が持てない人には公営住宅、という2本立ての支援でしたが、今後は民間賃貸住宅などへの公共の支援も必要になってくるとして、いくつかの事例が共有されました。

 

まず、代表の村上より、開催にあたっての挨拶。今回の持続会はオンラインになったが、先日の現地開催したPJ100セミナーでは、やはり実際にお会いして名刺交換したり懇親会で話をしたりすると、かなり有意義な機会になりました。今春からコロナに対する政府の規制も緩和されるので、今後の持続会は、できる限りリアルでお会いしてやっていきたい、とのことでした。また今回は、来年度に持続会に入会するかもしれないということで、栃木県益子町の方が参加されました。

 

続いて代表の村上より「2022/23年エネルギー価格と今後の推移 それに対抗するための省エネとコンパクト化」について。まずはCVの考え方の基本となる「kWh=¥」について。エネルギー価格の高騰と寒波により、最近テレビや新聞などでも、この日本の寒い住宅をどうするか、ということが取り上げられ始めています。クラブヴォーバン設立以降説明している基本的な考え方:例えば人口1万人、世帯数4千の自治体A町を見たときに、1世帯あたりの年間エネルギー支出(電気・ガス・灯油・ガソリンなど)を40万円と仮定した場合のエネルギー支出を計算します(2022年、物価もエネルギー支出も急激に増加。2021年までは全国平均エネ支出30万円と説明していた)

 

40万円 × 4千世帯 ≒ 16億円!(A町 民生家庭部門) が毎年のA町のエネルギー売上。これは民生家庭部門だけ。皆さんの役場や公共施設、企業など、民生業務部門・産業部門のエネルギー支出は全国で約1.5倍~2.5倍なので、2倍と仮定して

16億円 × 2倍 ≒ 32億円!(A町 民生業務部門・産業部門) 

16億円 + 32億円 ≒ 48億円!(A町全体) たった人口1万人のA町でも、年間約50億円近くのエネルギー支出があると考えられる

日本のほとんどの自治体では、エネルギー支出のうち地域に循環するのは3割以下なので

48億円 × 0.7(70%)  ≒ 34億円!  たった人口1万人のA町でも、年間約34億円近くのエネルギー支出が地域外(大きな発電所や海外)に流出している

この、毎年売上が立つことが決まっているお金を、地域の外に流すのではなく、「省エネ・設備の高効率化・再エネ」によって域内に循環させることが、クラブヴォーバンおよび持続会の目的です。

 

続いて、「天然ガス」「原油」「石炭」の短期的・長期的な価格推移グラフ紹介とその背景について。電力価格が1kWh=50円を超える時代になりました。実はこの1年間にどんどん値上がりしている電気料金の主たる原因は、国内の火力発電に占める燃料割合の高い石炭が、この2年弱で6~7倍にも値上がりしているからです。このことはメディアでもあまり報道されません。また、エネルギー値上げに対し、本来であれば世帯や一人あたりということで補助金が出れば、家計の中で高いエネルギーをできるだけ使わないように自助努力が働くのですが、元売りのところに補助金を拠出しガソリン小売価格が170円/L以下を死守、といった形で巨額の税金が投入されているので、私たちは行動様式を何も変えずエネルギーを使い続けています。2022年度のエネルギーのための補助金は、補正予算も併せて9.3兆円にも上ります。これは言わば、返すアテもないのに子どもたちから借金をしているお金です。

 

続いて、脱炭素社会に向けて、自治体ですぐ取り組むべき対策が紹介されました。LED照明への切り替えや古い冷蔵庫、エアコンやOA機器、家電などの省エネ型への更新、化石燃料ボイラー、ヒーター機器、蓄熱暖房機、電気温水器から、潜熱回収型機器への更新、高効率の電力ヒートポンプ機器への更新、内窓の設置など窓のトリプルガラスへの交換、屋根裏や小屋裏への断熱材の投入、PVやEVの導入、こういったことを公共施設で導入し、地域で促進すること。つまり、以下の省エネの「3つの神器」に投資してゆくしかありません。電力は、「太陽光」と「風力」(一部バイオマス).へ。熱は、「省エネ建築」(断熱・気密)と「ヒートポンプ」(エアコン・エコキュート)へ。運輸は「EV」へ。

 

また、人口減少と高齢化が進み、人がある程度便利に快適に暮らすには、10年以内に集住化を真剣にはかっていく必要があります。自治体としてもう一つやるべきこととしては、「人口減少に伴う集住化」「まちのコンパクト化」、そしてそれを推し進めるための「高性能・脱炭素型(例えば太陽光自家発電)・集合住宅(できれば賃貸)」。建築費は2割くらい上がっているにも関わらず、若い世代の可処分所得は減り続け、ローンも35年では常識的な家を買えなくなってきているので、公共による若い世代向けの支援ということで、何らかの賃貸住宅が必要になってくるでしょう。これまでの住宅支援は、持ち家を持つ人を対象とした補助、持てない人には公営住宅、という2本立て支援でしたが、今後は3本目の支援の軸、賃貸住宅を提供しようとしている地域の地主や民間業者に、いかに「住宅性能」と「建築立地」を担保した形で補助金を作り、まちのコンパクト化、良質な集合住宅をはかっていくことが重要、という意見から、補助金のあり方や自治体の事例について議論・情報共有されました。