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1月17日PJ100セミナー「2024年4月1日、建築物の省エネ表示制度はじまるって何だろう?」を東京とZoomにて開催しました

クラブヴォーバンが2008年から必要性を訴え続けてきた「建築物の省エネ表示制度」が、この日本でも実現することになりました。2024年4月1日より、これまで適合義務のなかった新築の小さな住宅まで、賃貸や分譲で市場に出される際は、建物の省エネ性能表示が「努力義務化」されます。それに先駆け、今回のPJ100セミナーでは代表の村上とこの制度と業界に詳しい晝場氏から、制度と省エネ表示の内容・建築や不動産など業界への影響・CO2排出量削減への影響などについて解説する会となりました。

 

まずは代表理事の早田より挨拶。代表の村上とともに、建物の省エネ性能の評価・表示をしようと2008年より動き始め、日本エネルギーパス協会を設立したのが震災後の2011年。そして今は既に2024年。建物の省エネ性能や性能表示について、日本は諸外国に比べ非常に遅れています。我々は16年、ずっとこの建物の性能評価・表示制度が必要と言い続けてきたが、まだまだ国の動きが遅いのでこれからも言い続けやっていくしかないと思っている、とのことでした。

 

次に代表の村上より、この制度の全体の流れ、評価方法、評価書の発行方法や内容、不動産や建築など業界への影響などの概要説明がありました。また、日本で先駆けて建物の性能評価・表示の普及活動を行ってきた村上がこの制度を見て、評価できる点、まだこれから改善が望まれる点などについても言及がありました。

 

住宅性能を評価・表示するためのプログラム(今はまだドラフトバージョン)が、一般社団法人 住宅性能評価・表示協会のWebサイトで公開されています。クラブヴォーバンが関わっている、北海道ニセコ町のSDGs未来都市モデル街区で今年3月に分譲される集合住宅の数値を実際にサイトで入力し、評価ラベルを仮発行してみました。すると、UA値が0.17、再エネを含むBEIが0.47、エネルギー消費性能で6つ星の最高レベルで、性能評価・表示されました!

 

冬場―10℃を下回るニセコの豪雪地帯の物件ですが、目安の年間光熱費は年間17.8万円。最高基準の省エネ住宅と評価されました。それらの入力や出力の方法を実際に皆さんにお見せしながら、評価ラベルの見方やそれぞれの項目の意味について、解説を行いました。

 

この建物性能評価・表示制度が広まるようにと、これまで16年間、一般社団法人日本エネルギーパス協会を設立し、独自に性能評価・表示を行い活動してきましたが、ようやく国の制度ができました。この評価プログラムの内容についてはまだ改善が望まれるところがありますが、表示制度ができたこと自体は評価しており、この制度が早く世に広がり、性能の高い住宅、とりわけ賃貸住宅が増えていくことを心から願っています!とのことでした。

 

次に、この制度に詳しい晝場貴之氏より解説がありました。晝場氏は日本エネルギーパス協会の理事でもあり、以前は日本ERIで、現在はイズミコンサルティングで、建物の性能や環境にかかわる評価に携わっています。彼も村上と同じく、国として表示制度が始まることが決まり本当に嬉しい、とのことでした。

 

建設業界などの事業者に簡単に今年4月に始まるこの制度について昨年ヒアリングを行ったところ、さすがにほとんどの方は制度開始については知っていましたが、細かい部分を社内でどう対応するかはこれから決めるというところが多いようでした。省エネ性能表示を行うことは、手間が増えますが、国の制度なので仕方がない、と感じている事業者が多いそうです。その理由としては、市場においては、まだまだ建物の価値が、「省エネ性能」などのモノサシではなく、「駅近」など一般的な条件で評価されてしまうことが、影響が大きいのではとのことでした。ですから、お客さんにUA値などの建物性能を説明しても理解してもらえるのか、不安に思っている事業者も多いのです。

 

また、大手事業者はIRで脱炭素への取り組みをうたっている会社が多いので、「努力義務」ではあるものの、やはり性能評価・表示には取り組んでいくという回答が多いとのことでした。そしてこれまで建物の性能評価・表示を先駆けてやってきた事業者の方は、この制度ができることでようやくこれまでやってきた強みを発揮でき、性能のいい住宅で実績を積んできたので、他社との差別化もできると喜んでいる、とのことでした。

 

また、住宅ローン減税優遇制度は今年から大きく変わり、省エネ基準に適合することが、税制優遇を受けるための必須条件となりました。省エネ基準適合住宅<ZEH水準省エネ住宅(BELS)<長期優良住宅、低炭素認定住宅の順で、低炭素住宅に認定されると最も優遇されます。

 

今回、自治体の参加者の方もおられますが、行政でも動きが出てきています。自分の自治体のサイトに、住民や業者が簡単に入力し簡易的に住宅の燃費や快適性が出せるようなサイトを作りたい、というニーズもあるそうです。それによって住民の省エネ住宅への意識を高めたり、一定の基準を満たす省エネ住宅改修に市や町が補助金を出す、というしくみが広がる可能性があります。

 

最後に、参加されていた環境省の地球環境局・地球温暖化対策事業室の方が、2024年度度新しく予定されている「業務用建築物脱炭素改修加速化事業(脱炭素ビルリノベ事業)」の制度について、制度の主旨や内容についてご説明されました。建物から排出されるCO2を削減し地球温暖化をとめる、というミッションのため、省エネ建築物の普及に力を入れており、2023年からは既存の住宅の建物について「先進的窓リノベ事業」を始め、初年度にも関わらずかなり浸透して制度が使われました。来年度新しく始まる脱炭素ビルリノベ制度も、申請をできるだけ簡素化するなどの工夫を取り入れており、ぜひ皆さんにもこの制度を使ってほしい、環境省としても頑張っていきたい、とのことでした。

 

参考:

国土交通省【2024年4月スタート! 新しい「建築物の省エネ性能表示制度」が始まります】 

一般社団法人住宅性能評価・表示協会

環境省【業務用建築物の脱炭素改修加速化事業】     【先進的窓リノベ事業】