持続自治体会議(2015年2月26日 特別講座)

<プログラム>

1 公団型住宅の省エネ改修事例とその効果
  (講師:CV理事 中谷哲郎)

2 分散型エネルギー コジェネ&地域暖房、ドイツの事例から
  (講師:CV代表 村上敦)

3 再エネの世界で今起きていること 風力発電の現状と展望
  (講師:CVコアメンバー/ウィンドコネクト代表 斉藤純夫)

1 公団型住宅の省エネ改修事例とその効果(講師:CV理事 中谷 哲郎)

URの調査によれば、ストック760万戸に対して昭和40年代に建てられたものが約半数。入居者の属性は65歳以上が約35%。
建物も入居者も高齢化している。

・入居者の世帯収入は減少傾向で、300万円以下が32%

・公営住宅はセーフティネット機能をもつので入居者の高齢化・低所得化の問題は避けられない。

・老朽化した建物を改修することで健康・医療費高騰と光熱費高騰という2つの問題解決に近づく。

URもストック57万戸を改修予定ではあるが、段差のバリアフリーが中心で、省エネ改修という概念は無いのでは。

・高齢化、光熱費(低所得者の収入)の問題を解決した1つの事例として、横浜市の竹山28団地の事例を紹介。

・天井、床、壁をすべて断熱防水改修し、老朽化した部分も改修した。

  経費は1世帯あたり100万円程度で、当時あった補助金により省エネ工事の経費の3分の1を賄い、実際の負担は50万円程度。今はその補助金は長期優良住宅の補助金に一本化されている。

・省エネ改修の効果を示すためのものがエネルギーパス。

 改修前と改修後のエネルギー消費量、室温、光熱費をチェックし、比較した。

・回収の効果は必要エネルギーが47%削減、室温は無暖房・間欠暖房の状態で1度上昇、年間光熱費は45,963円削減。

・エネルギーパスを利用すれば改修の効果をエビデンスとして示すことが出来る。

・省エネ改修は今後推進すべきものであるが、木造の戸建住宅の省エネ改修はまだまだ技術的・コスト的にもハードルが高い。その上、日本ではもともと寒くても我慢して生活しているので、「改修で光熱費が下がったことで改修コストが回収できる」というストーリーにはなりづらい。

・公営住宅から手をつけないと、省エネ改修の成功事例が積み上がりにくい。
 通常の四角いRCの公営住宅であれば技術的にも省エネ改修しやすい。
 まちのパイオニア事業的に、こういう事業の可能性がある!ということを示す効果もあるので、戸建の新築や既

 築の改修の補助と並行して公営住宅の省エネ改修にも取り組んでいただければ。

2 分散型エネルギー コジェネ&地域暖房、ドイツの事例から(講師:CV代表 村上 敦)

・ドイツは1990年を基準として2050年までにCO2排出
 量
95%減。

 中心は省エネ・再エネの推進(2014年は電力に占め
 る再エ
ネの割合27.3%)。

・日本はおそらく2030年までに水力10%、他の再エネ20%程度で計画していると考えられ、その後はどうなるかわからないが、いつかの段階で電力を化石燃料で賄うというのはほぼ不可能になるだろう。その代替は原子力かもしれないが、そうでなければ電力は再エネに置き換えられると予想される。

・再エネで電力需要を賄おうとした時に問題になるのは、それぞれの再エネの賦存量。どれか1種類で賄うことはできないので、2030年以降、日本は太陽光・風力をベースにバイオマス、水力、地熱を組み合わせるという形になるのでは。

・ただし、再エネは季節や天候によって発電量が大きく変動する。

・ある程度までは再エネで多めに発電してしまったら間引きする(止める)という対策が一番安いが、再エネの割合・量が増えていくと大量に余った電気を何らかの形でためておき、季節間で電気の需給調整をする仕組みが必要となる。

・その時にドイツなどで検討されているのがPower to Gas。余った電気を水素に変えて貯蔵する取組み。

・ただし、ポイントは電気を(水素)ガスに変える時には20%程度、ガスから再び電気をつくる時にはエネルギーの70%程度が熱になってしまうこと。地域で熱供給のやりくりをできるインフラをある程度作っておかないと、電気→ガスの時の排熱とガス→電気の時の排熱を捨てることになる。電気とガスの変換時に得られる電力が減るので、排熱を捨てていたらまたさらに多くの創エネ設備がないと再エネでのエネルギーの自給率が上がらないことになる。だからドイツでは地域暖房が進められている。

・地域暖房については日本でも先進的な自治体では導入されているが、補助金でイニシャルコストをかけて過大な設備を入れてしまい、ランニングコストが膨らんでいるケースも散見。

・そろそろ電力や熱や動力についてどのように組織・運営するというマスタープランを検討し、エネルギーだけではなくお金の効率化も検討する時期に来ていると思う。

・地域暖房、発電排熱利用による利点は3つ。
 ①地域暖房による熱源装置の取りまとめ
 ②コジェネによる設備の高効率化
 ③熱需給システム改善における高効率化(蓄熱タンク併用によるシステム小型化等)

・ただし、配管などのコストがかかるので、上記の3つの利点とコストを比較して導入を検討すべき。また、まずは熱の消費密度が高いところから先に取り組むこと。

・ドイツでは多くの自治体が熱需要マップを作成。3年ぐらい各世帯・建物に熱消費アンケートを実施して熱需要を計算する。熱需要マップから地域暖房のコストとの比較を行い、検討する。

・熱需要曲線を作成し、コジェネで賄うのはベースの部分のみとし(稼働期間を長くしたいため)、ミドルピーク及び最大のピークは別途ボイラーなどで賄うなど、様々な手段を組み合わせる。

・ドイツではシュタットベルケと呼ばれる都市公社がエネルギー供給をしている場合が多いが、最近は市民エネルギー組合が地域暖房の熱供給をしている場合もある。

・地域経済にとっては建設の部分も重要。エネルギーコストとして将来地域から逃げていく分のお金を建設工事に回すと経済効果も大きい。

3 再エネの世界で今起きていること 風力発電の現状と展望
                  (講師:CVコアメンバー/ウィンドコネクト代表 斉藤 純夫)

・日本の再エネはいわゆる「九電ショック」に代表される接続保留の問題などで不安感を持たれているが、まだダメになったわけではない。
運用方法に問題があったところを見直し、これから正していけばいい。

・再エネで起きている問題の本質は、
  ①価格が高すぎる
 ②設備認定時の買取価格が適用される
 ③設備認定に期限がない
 ④屋根ソーラーを推進するつもりがメガソーラーに入
  れ替
わってしまった

 ⑤メガソーラーと他の再エネの送電線接続ルールが同じ 
 など。

・本来進めたかった屋根ソーラーでは、2030年に6000kWで発電コスト7/kWを目標としていた。

 北海道では家庭用電力の単価が33円程度で、屋根ソーラーが37円なので価格だけ見ればグリッドパリティに近づいている。おそらく原油価格が戻ったら電気代は上がるので、太陽光のコストが下がればFITを使わなくても自家消費の方が得になるという、今ドイツで起きていることと同じことが北海道で起こりつつある。

・省エネ、熱エネルギーについては接続保留はないのでもっと推進していくべき。

・風力については、日本の設備利用率の平均は20%程度、ドイツは18%程度なので日本の方がドイツよりも風況が良く、有利な要素もある。

・建設コストが高い(風車1本6億円~)、環境アセスメントに3年かかる、反対運動もあるなど、風力発電のハードルは高いが、自治体が絡むことでクリアできる部分もある。

・資金調達と風況の確保をうまくやらないと難しく、自治体の風車でも初期のものは失敗が多いが、北栄町のように成功しているケースも。北栄町は情報公開しており、そういう自治体は成功している。

・秋田県では「風の王国プロジェクト」を実施。風車を1000本立て、1000億円の「あきたこまち」に匹敵させるというもの。やる気になればできるので、こういう事例が全国で出てくればいい。

・市民出資の風車は停滞しているが、2014年に北海道石狩市で風車2基建設開始。

・現在の風力の発電コストは22円、卸電力取引所価格は1517円。原油価格が上がればグリッドパリティ。

・日本では高さ6080m程度の風車が中心だが、今後、高さを上げる・大型化する(ドイツでは130mのタワー等もある)ことで、発電コストを下げ、普及させることができるだろう。