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エネルギー自立地域経済好循環 × イノベーション 
                 持続可能なまちづくり

持続可能な発展を目指す自治体会議

クラブヴォーバンは、環境・エネルギー・地域経済などの分野で先進的な取り組みを行っている北海道下川町・ニセコ町・岩手県二戸市・葛巻町・鳥取県北栄町の5自治体とともに、 2015年「持続可能な発展をめざす自治体会議(通称:持続会)」を設立しました。首長や役場担当者が国内外の先進的な具体的事例について学ぶだけではなく、それを実際に自らの自治体の政策に活かして事例を共有する「アウトプット重視型」の定例会議を、年に数回開催しています。

 

その後、熊本県小国町、埼玉県横瀬町、栃木県益子町などが加入し、現在は8自治体が正会員として活動しています。2018年には、下川町・ニセコ町・小国町が「SDGs未来都市」として国から選定されています。

 

日本では今後急速に人口減少と高齢化が進み、地域経済が崩壊し、過半数以上の自治体が消滅の危機を迎えます(参考:国土交通省「国土の長期展望」)。 そのような社会背景において、自治体の脱炭素社会に対応した持続可能な発展を実現するために、過去の経済成長を前提とした施策を引きずるのではなく、全く新しい考え方によるまちづくりが求められています。

 

エネルギー・建築・交通・都市計画などの様々な分野で

◆ 域外にお金を極力流出させない

◆ 域内で循環する価値を生み出す・域内に流入するおカネを最大化する

◆ 地域内で質の高い雇用を創出する

 

といった「地域内経済好循環型」の仕組みを構築し、住民が抱える課題を解決しながら、「豊かな暮らし」を実現してゆくまちづくり。

 

持続会は、自治体職員が脱炭素社会に対応した「持続可能なまちづくり」を学び、地域を超えて情報や経験を共有するための《場》です。

2024年

2月

28日

1月18日「第19回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

前回は、第7回目の持続会正会員自治体相互視察を兼ねて、北海道下川町で「人口減少と移住・農村の暮らしのインフラ」をテーマに持続会を東京とオンラインで開催しました。下川町は、町の面積の約9割を占める地域資源の森林を最大限・最大効率に活用することを掲げています。循環型森林経営を基軸として、森林総合産業の構築、超高齢化社会にも対応した新たな社会システムの構築、森林バイオマスなどの再生可能エネルギーを活用した地域エネルギーの完全自給と脱炭素社会構築をも目指し、「持続可能な地域社会(森林未来都市)の実現」に向けた取り組みを進めています。また、全産業の共通課題となっている人材不足に対応するため、下川町産業活性化支援機構を立ち上げ、毎年約30人(総人口の1%)が移住し、2016年以降は、20代から40代までの年齢階層では転入超過傾向にあります。

今回は前回に続き「移住と住宅インフラ」がテーマ。自治体の皆さんには課題として「将来の世帯数」「住宅ストック数」を調査していただき、将来の世帯数に対し住宅ストック数が足りるかの予測について発表がありました。少子高齢化と核家族化が進み一世帯あたりの人数は減少しているので、世帯数は人口減少の速度に比例せず将来大きくは減りません。一方、全国で移住先として人気のある自治体では、年々一定数の移住者が流入し状態のよい空き家は既に不足しつつあります。せっかく町で移住促進をしたり仕事を創出したりしても、域内に住める手ごろな住宅がなければ若い人たちも住めず移住者も入ってきようがありません。代表の村上と、田中信一郎氏からは、自治体において脱炭素化を加速させながら、域内の全ての人が安心して暮らせ移住者も増やしていけるまちを実現するために、全国での事例共有や、自治体・自治体職員として何ができるかについてのレクがありました。

 

各自治体において、人口ビジョンで2050年までの「将来の人口」については予測していても、「将来の世帯数」が、「将来必要な住宅戸数」に対応するにも関わらず、将来世帯数の予測をしている自治体がまだまだ少ないのが現実です。なので今回持続会の皆さんに出していた宿題は「将来の世帯数」と、「将来の住宅ストック数」の予測をし、世帯数に対し住宅ストック数が足りていくのかの予測をし、将来の町内の住宅インフラの計画に役立ててください、という内容でした。

 

次に、代表の村上から「自治体における住宅インフラの行く末と脱炭素社会」ということで、レクがありました。クラブヴォーバンでは、昨年度は北栄町、今年度はニセコ町から、地球温暖化対策実行計画の区域施策編を受託。両町の区域施策編の策定においては、可能な限り、既存の上位計画、個別計画を最大限尊重しながら、地域課題をあぶりだし、地域課題の解決と温暖化対策の両立を目指しました。その経験から、自治体内において、脱炭素を進めながらどのように住宅インフラを進めていけばいいのか、既存の総合計画・自治総合戦略や個別計画と、どのように整合性をとっていけばよいかの提案がありました。また、全国で民間が主体となって進められている、先行しているまちづくりプロジェクトの事例共有がありました。

 

続いて、千葉商科大学の田中信一郎氏から「公共施設から始める人口減少時代の脱炭素まちづくり」について、田中氏が関わっている長野県の動き。「確かな暮らしを守る」「ゆたかな社会を実現する」と総合計画に書かれている県知事のことばは、単なるキャッチコピーではなく、きちんと将来の人口減少や脱炭素の社会課題を踏まえ、それに対する地域に根差した対策を考えた上でのことばです。また、市民からのボトムアップの動きとして、NPO法人上田市民エネルギーと地域の多様な人たちで立ち上げた「上田リバース会議」の事例共有もありました。脱炭素だけではなく、地域の課題は他にもたくさんあります。まずは地域の計画や統計データ(人口減少や高齢化、地域のスプロール化・スポンジ化、上下水道や道路などのインフラ整備更新、移動手段、店舗数や不動産価格など)を皆で徹底的に読み込み、の問題を可視化して共有し、未来の地域について話し合いの場が持たれています。

 

この動きが行政も取り込み、上田市は第4次脱炭素先行地域に認定されました。自治体が果たすべき役割は、地域に暮らす人たちが、子ども孫世代の50年後も100年後も安心して暮らせる地域をつくること、これに尽きます。首長からのトップダウンの動きと、職員や市民からのボトムアップの動き、両者がかみ合うと一気に持続可能なまちづくりに向けて動きが加速するので、ぜひここの皆さんも参考にしてほしい、とのことでした。

 

最後に、来年度の環境省の非住宅建築の脱炭素改修加速化事業と、今年4月1日から始まる建物の表示制度についての説明がありました。これまでクラブヴォーバンでは、民間レベルで建物の性能表示をしていきましょう、ということで日本エネルギーパス協会を設立し、建物のエネルギー性能表示をやってきましたが、今年4月より新築の「全ての」建物に、エネルギー表示が義務付け(努力義務)されます。ここで学んでいる皆さんの自治体でも、地域の脱炭素が進むようにいち早くこの動きをサポートしてください、とのことでした。

 

2024年

2月

28日

10月20日「第18回・持続可能な発展を目指す自治体会議 in 北海道下川町」を開催しました

前回は代表の村上より、CVの基本的な考え方である「kWh=¥」のおさらいと、昨今の各エネルギー価格の高騰の背景や今後の見通し、自治体において率先して行うべき省エネ対策、脱炭素先行地域の選考状況についてなど話題提供がありました。将来的にまちのコンパクト化や住んでいる人のある程度の利便性・快適性考える場合に、高性能・脱炭素型の集合住宅(できれば賃貸住宅)が今後必須となります。これまで公共からの住居に対する補助は、個人の持ち家か、持ち家が持てない人には公営住宅、という2本立ての支援でしたが、今後は民間賃貸住宅などへの公共の支援も必要になってくるとして、いくつかの事例が共有されました。

 

今回は、第7回目の持続会正会員自治体相互視察を兼ねて、北海道下川町で「人口減少と移住・農村の暮らしのインフラ」をテーマに持続会を開催させていただきました。今回は2015年の第1回自治体相互視察に続き、2巡目の訪問。下川町は2008年に環境モデル都市に、2018年には国からSDGs未来都市に選定されています。町の面積の約9割が森林で覆われ、豊かな自然資源を背景に農林業を基幹産業とした農山村地域です。

下川町は、地域資源の森林を最大限・最大効率に活用することを掲げています。循環型森林経営を基軸として、森林総合産業の構築、超高齢化社会にも対応した新たな社会システムの構築、森林バイオマスなどの再生可能エネルギーを活用した地域エネルギーの完全自給と脱炭素社会構築を目指し、「持続可能な地域社会(森林未来都市)の実現」に向けた取り組みを進めています。(2023年現在、町内の再エネによる熱供給の自給率は56%、再エネによる電力の自給率は104%)

また、全産業の共通課題となっている人材不足などに対応するため、下川町産業活性化支援機構を立ち上げ、毎年約30人(総人口の1%)が移住し、特に同機構が設立した2016年以降は、20代から40代までの年齢階層では転入超過傾向にあります。

今回は、参加自治体の今後の政策立案につなげていくことを目的として、下川町が約20年に渡って進めてきた「持続可能な地域社会の実現」の取組や関連施設などを視察し、その後、持続会を開催しました。

 

最初に、代表の村上より、下川町職員の研修も兼ねている場であったため、持続会の発足理由とその目的をお話しし、今回の定例会の意図やその目的について整理し、開催にあたっての挨拶としました。

 

まず、下川町政策推進課SDGs推進戦略室長の亀田氏より、「下川町の人口減少対策について」。北海道北部に位置する下川町は、最盛期の1960年に人口約1万5千人だったのが林業の衰退などにより急激に人口が減少し、その後20年で人口が半減、現在は人口2,970人で高齢化率は40%を超えています。この急激な人口減少と高齢化に歯止めをかけようと様々な取組を始め、人口減少率は鈍化しています。2016年以前は20~49歳までの年齢階層がずっと転出超過でしたが、2015年にタウンプロモーション推進部が発足して以来の取組みが功を奏し移住者が増え、以降はその世代は転入超過となっています。移住者は毎年約30人(人口の約1%)にも上ります。一方、70歳以降の世代は、高齢になり医療への不安や都市部に住む子ども世代に呼ばれて移住するなどが主な理由では転出する人が増えています。

 

人口減少による影響と懸念は多岐に及びます。後継者不足や担い手不足による廃業、地域経済の縮小、サービス業(商店・飲食店)の減少に伴う住民生活基盤の縮小、高齢者世帯・生活弱者割合の増加、買物・交通・除雪困難者の増加、医療・介護費用の増加、医療・介護人材の不足、子どもの教育環境(学習塾・習い事・スポーツ)の縮小、教育環境の縮小に伴う親の負担増、自治機能の低下、地域コミュニティの低下、災害危険性の増大、空き家・空き地の増加、町税などの減少に伴う行政サービスの縮小など。これら食い止めるために、循環型森林経営を基軸とし、域内で経済が循環するための包括的な取組みをおこなっています。

 

一例では、町の公共施設全体の熱供給の68%が、木質バイオマスによる再エネへ既に転換(10基30施設)しています。これにより地域でたくさんの雇用がうまれ、また化石燃料購入に比べ毎年毎年エネルギー支出費が削減できます(現在は年3800万円)。そのうち一部で基金を積立し、基金はボイラーの更新費用と子育て支援に活用され、子どもの医療費無償化、子育て支援金、給食費補助、保育料軽減、絵本プレゼントなどに充当しています。

 

下川町では、「現在の下川町は住み良いか」「住み続けたいか」といった全町民を対象としたアンケートを節目節目に行い、町の政策に活かしています。また、SDGs未来都市として、下川町がどのような政策に重点的に取り組むべきかを13の選択肢で質問したところ、上位4位は以下の結果でした。①子どもを産み、育てやすくなるための仕組みづくり ②高齢者が活躍でき、暮らしやすくなるための仕組みづくり ③子どもの育成環境(学力・経験(文化・スポーツ)など)の仕組みづくり) ④再生可能エネルギー(バイオマス・太陽光・雪氷など)の推進

 

回答者の半数が高齢者なのに対し、町優先事項が子育て支援が上位になっているのが特徴です。今年度は総合計画の見直しもあるので、この結果を踏まえ、より具体的な数値目標を掲げた計画を策定していきたいとのことでした。

 

続いて下川町産業活性化支援機構タウンプロモーション推進部統括の樋口氏より「下川町の移住定住施策について」。民間の日本創成会議により2014年、下川町が「消滅可能都市」とされ、これを受けて2015年「下川町産業連携会議」を創設、地域産業の課題と今後について議論、人口減少と高齢化による地域課題が明確化され ①高齢化・担い手不足 ②人材不足・住宅不足 ③通年雇用・雇用拡大 ④人材育成 ⑤ブランド化人口減少対策に取り組むようになりました。地域経済はいったん落ち込んでしまうと、景気が回復してもなかなか人は戻ってこないという体験を、下川町は過去に何度もしているので、こういった時代の変化に迅速かつ適切に対応していかなければならないと認識。「全産業連携により地域産業の活性化と雇用の維持・創出」を町の総合戦略に位置づけ、移住者の誘致を通して地域課題を解決していこう、ということになりました。

 

この推進のために2016年「タウンプロモーション推進部」を創設、稼動し、現在は、町の職員2名と、移住・空き家の専門コーディネーター3名を配置した任意団体で、町の観光協会や農協、森林組合、商工会、建築業協会、福祉医療窓口、金融機関、外部アドバイザーなどと連携して運営しています。平成28年7月発売の「田舎暮らしの本(宝島社)」の50歳から住みたい田舎ランキングでは、下川町が全国で15位、2万人以下の町では1位にランキングされ、地方の田舎に移住したい人にとっては人気の高い町となっています。昨年度では ①総合移住促進機能 ②地域人材バンク ③起業塾 ④空き家対策 の4本柱で取り組みを行っています。そして、まず①PR、下川を知っていただき ②受け皿整備、下川町を体験していただき ③仕事の紹介、確保 ④住宅の紹介/確保、移住のフォローアップ まで、ワンストップで移住者誘致をし、移住希望者や移住してきた人に丁寧で細やかなサポートをしているのが特徴です。町の取り組みや町内の企業が求める人物像をイメージしながら、下川町に関心を持ってくれる方々と多く接点を生み出し、地域につないでいけるよう活動しています。この具体的な活動内容や町で起業し活躍している移住者の事例が共有されました。

 

下川町の空き家バンクは、移住者の購入希望登録が多く、成約件数の約7割、その他は町民の住み替えニーズですが、成約率は31%と低いです。住宅の需要に対し、適切な供給が不足し移住希望者に住宅の供給が間に合っていません。移住希望者がいるのに住宅が供給できないという現状を踏まえ、住宅政策は緊急の課題と捉え、取り組みを強化したい、また、移住者の定着率100%を目指し、これまで以上に継続して効果的な移住・定住政策を進めていきたい、とのことでした。

 

最後にクラブヴォーバン代表より、これまでの持続会設立の背景や意義、考え方や取り組みの紹介の後、下川町の職員研修も兼ねて、「これからの日本の農村人口と暮らしのインフラについて」お話しました。最近ようやくSDGsという言葉をよく聞くようになりましたが、それはSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略で、元々この「持続可能な開発」という言葉は、1987年に国連の「環境と開発に関する世界委員会」で、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」と定義されました。「今日のニーズを満たすような開発をしながら、余裕があれば将来のニーズを考えましょう」ということではなくて、順番が大事です!2015年の国連総会では『持続可能な開発のための2030アジェンダ(Transforming our world: the 2030 Agenda) 』が起草され、SDGsはその具体的指針として記述されました。その後、世界に遅れた日本ではようやくプロモーションに成功し、SDGsという概念が普及してきました。Transforming our world、つまり「変身」がキーワードで、SDGsを掲げて仕事をするならば、昨日と同じ仕事を今日していたのでは、「変身」はできず、SDGsの目標に達成することは到底できません。

 

今後10年間で最も影響が大きいグローバルリスク(ダボス会議参加者のCEOへのアンケート)では、2022年トップ10ランキングを気候変動問題が独占しています。気候変動のリスクを最小限に留めるために、世界では「ゲームチェンジ」が起こっています。まず取り組むべき3本柱は、「太陽光発電」「省エネ建築(高断熱・高気密)」「電気自動車EV」の普及促進です。どの自治体においても、域外に毎年流出している光熱費(電気・ガス・石油・ガソリン等)は相当な金額に上ります。このおカネの一部でも、地域で省エネ建築・設備高効率化・地域の再エネを使ったりして、地域の企業や雇用におカネが還流するしくみを作っていけば、地域が豊かに持続可能になる、というのがクラブヴォーバンの基本的考え方です。

 

これからの温暖化対策は、あまり効果が期待できない啓蒙・普及などの「教育的手法」ではなく、例えば「誘導的手法」で補助金などを町で考えるとか、事業的手法で何かインフラを町で作ってしまうとか、条例等の規制的手法と誘導的手法を組み合わせるなど、地域課題の解決と温暖化対策を同時に、強い強度で進めてほしい、との話でした。

 

また、移住者希望者の多い下川町やニセコ町でも、住み替えをしたい町民や移住希望者が「町内に住宅がない」という住宅難が起きつつあります。既存の住宅ストックは、1970~80年代の高度成長期に建てられ、そろそろ寿命を迎えるストックが増えていく一方、人口は減っているものの核家族化が進み世帯数はそれほど減らない、または増えてゆき、住宅が足りていません。皆さんの自治体では、「公共施設や住宅などのインフラは大丈夫で、将来、町の子どもたちがそこに住みたい」というニーズを満たす自治体であってほしいです。町内に住宅が足りなければ、近隣の都市部などに町民が移り、人口ビジョンよりさらに人口減が加速することが想定されます。この「住宅難」という地域課題解決に向けて、まず「町内の全住宅ストック」を把握し「世帯数」を推計して備え、「住生活基本計画」を見直していきましょう、ということで次回定例会までの課題としてそれらの統計の出し方を解説しました。

 

2023年

11月

17日

10月19-20日「持続可能な発展を目指す自治体会議 第7回自治体相互視察 in 下川町」を開催しました

2023年10月、第7回目となる自治体相互視察は、クラブヴォーバン自治体正会員の北海道下川町で開催されました。2015年、第一回目のクラブヴォーバン自治体相互視察で下川町を訪問し、今回2巡目の訪問となりました。今回は正会員自治体のニセコ町、二戸市、北栄町とクラブヴォーバンスタッフで訪問し、下川町職員の方あわせて約25名の参加でした。

 

下川町は、644㎢(東京23区の広さに相当)の約9割が森林で覆われ、豊かな自然資源を背景に農林業を基幹産業とした、北海道北部の人口約3千人の農山村地域です。まず下川町役場にて、下川町長の田村泰司氏より歓迎のご挨拶をいただきました。クラブヴォーバン代表村上の挨拶とこれまでの持続会の取り組みの簡単な説明の後、総務企画課課長の山本敏夫氏より、持続可能な地域社会の実現に向けたこれまでの下川町の取組について説明を受けました。環境モデル都市やSDGs未来都市の国内第一号として選定され、先進的な取組を積み重ねてきた下川町。下川町の森林資源を活かしたこれまでの「森林・林業・エネルギー政策」の取組ついて、お話を伺いました。「FSC森林認証に基づいた循環型森林経営」「森林資源活用(森林の恵みを余すことなく)」「北海道4町連携によるカーボンオフセット事業」「幼児~高校まで15年一貫の森林環境教育」「森林バイオマスエネルギー利用による地域づくり」「木質バイオマスボイラーと熱供給システム」「一の橋地区バイオビレッジ構想と熱供給システム」「木質原料製造施設」など、下川町では地域住民や地元企業や行政が協働し、多岐にわたって地域内で経済が循環する事業を展開しています。

 

今では、町内の再エネによる熱供給の自給率が56%、再エネによる電力の自給率が104%にものぼります!電力については既にゼロカーボンを達成していますが、2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティしもかわ」宣言を2022年3月に町長が宣言、「持続可能で幸せな地域の創造」を掲げ積極的に取り組んでいます。地域において、地域のエネルギーを活用した新しい事業や雇用がうまれることによって、町外や道外からの若い世代の移住者も増えています。

 

これらの背景を念頭に置きつつ、まず「下川フォレストファミリー株式会社」を訪問。役員の二瓶敏幸氏にご案内いただき、様々な大型機械を使った木材加工の現場を視察させていただきました。下川町で伐採された木は、なるべく丸太のままではなく、集成材や羽目板、フローリング材など様々な形にここで加工し、付加価値を高めてから地域外に流通させるしくみを構築しています。また端材も捨てず、丸太一本をなるべく使い尽くすようにしています。加工過程でうまれた端材は、ここでの木材乾燥用や暖房の燃料として、再活用されています。今では道北で木材加工場は2か所しか残っておらず、木材加工場が地域内にあるというのは町にとって大きなインパクトがある、との話でした。

 

次に訪れた「株式会社フプの森」では、役員・研究開発マネージャーの亀山範子氏にお話を伺いました。「フプ」とは、アイヌ語で「トドマツ」。トドマツは油分が多く、トドマツを中心とした地域内で出る間伐材枝葉を手作業で収集し、ここの大窯で蒸して蒸留し、採取された精油や蒸留水を使ったアロマミストやハンドクリームなどを商品開発・製品化し、全国に販売しています。あくまでも「枝葉など端材を活用する」ということで行っている事業であるため、域内で行われる伐採のタイミングや量は天候に左右され、また新鮮なうちに加工する必要があるため、なかなか生産計画を立てにくいのが悩みとのことでした。トドマツの精油は、リラックスできる素晴らしい香りでした。ふるさと納税の返礼品としても人気が高いそう。FSC認証を取った木で精油を製造しているのは、全国でもあまり例がないのではとのことでした。

 

続いて「下川町木質原料製造施設」では、総務企画課課長の山本氏にご案内いただきました。ここでは、地域内での倒木や支障木、ゴミになる木などを受け入れ、一年ほど自然乾燥(水分100%→40%に)した後に破砕機で細かく切削し、木質バイオマスボイラー用の燃料用チップを製造しています。私たちが訪問した時、「クローラー自走式切削チップ製造機械」を稼働させ、実際に大きな木からチップが製造される現場を見せていただきました。ここでは、ガソリンスタンドなど地元の燃料関連企業で構成する下川エネルギー供給協同組合が指定管理を行い、人件費など経費を除いた利益分は指定管理者と町で折半しているとのこと。石油燃料から木質バイオマスへのエネルギーシフトによる地元エネルギー企業の減収を、最小限に留めるよう配慮しました。現在、木質バイオマスボイラーは合計10基30施設(公共温泉・認定こども園、高齢者複合施設・町営住宅・エコハウス・小中学校や一の橋地区や病院の熱供給施設など、公共施設全体の約7割)に熱を供給しており、ここで年間約3,500tのチップを製造しています

 

次に、町の中心市街地から約10km離れた「一の橋地区バイオビレッジ」の、高気密高断熱の集住化住宅と木質バイオマスボイラー施設、しいたけハウスを視察しました。この地区は林業の衰退やJR線廃止などにより顕著に過疎化が進んでいましたが、地域住民と行政などが議論を重ね2010年に「一の橋活性化プラン」を策定。一の橋バイオビレッジ構想がスタートし「新産業の創造(経済)」「超高齢化対策(社会)」「エネルギーの自給(環境)」をコンセプトに集落再生に取り組んでいます。この地区の熱需要の9割は、エリア内にある2基の木質バイオマスボイラーによって賄われています。1LDK~2LDK 22戸の高性能な低層集合住宅内の共有廊下は、寒さの厳しい道北の10月下旬にも関わらず暖かでした。このエリアの熱供給を担う地域熱供給システムは、ボイラー棟にある太陽光パネル(主に夏場)と木質ボイラー2基。このエリアの集住化住宅のほか、障がい者支援施設や、郵便局や警察官立寄所も兼ねた住民センター、カフェ、椎茸栽培や薬用植物などの育苗などに温熱を供給しています。このボイラー棟や集住化施設の管理は、地域おこし協力隊が退任後も地域内でNPO法人を立ち上げ、集落再生に取り組んでいます。地域熱を活用したしいたけハウスも、ただ栽培してまとめて出荷するのではなく、ここで各等級に選別しパッキングまでしてから、近隣や道内のスーパーなどへ出荷しているとのこと。付加価値を高めて出荷することで、ここに雇用もうまれ地域が潤うとのことでした。これらの取組が功を奏し、このエリアの人口構造は、子どもや現役で働く世代が増え、バランスがよくなっています。

 

最後に宿泊・懇親会場となる五味温泉へ。泉質は「美人の湯」とも言われる、国内では珍しい良質な「含二酸化炭酸水素塩泉」とのこと。露天風呂では、赤く色づいた木々が見え、森林浴が楽しめました。ここのロビーや廊下も、熱供給による床暖房で素足でも暖か。温泉の加熱も、地元産の木質バイオマスが燃料として活用されています。夜の懇親会では田村町長と市田尚之副町長にもご参加いただき、五味温泉ワインや近隣の旭川の地酒も差し入れいただき、大いに盛り上がりました。翌日は下川町職員の方々の職員研修も兼ね、「人口減少と移住定住と農村の暮らしのインフラ」をテーマに役場でクラブヴォーバン持続会を開催させていただきました。

 

町内のあちらこちらの施設で、町の森林を活用した地域経済循環型のまちの経営や木質バイオマスエネルギーの取組がとてもわかりやすい形で紹介されているパネルを見かけました。下川町では移住者への支援もきめ細やかに行っており、寒冷地域の小さな農山村地域であるにもかかわらず、職もあり起業する人たちも多く、全国からの若い世代の移住者にとても人気の高い町であるのが頷けました。

 

2023年

2月

09日

1月26日「第17回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

前回は、第6回目の持続会正会員自治体相互視察を兼ねて、岩手県の二戸市で持続会を開催させていただきました。国の動きより先駆け平成27年より始まった、二戸市における省エネ高性能住宅「二戸型住宅」の取り組みや、官民連携による温泉・宿泊施設再興の「カダルテラス金田一」の事例についてお話を伺いました。また代表の村上より、2022年2月に始まったばかりの環境省による「脱炭素先行地域」の内容や選定のポイントや、環境省から温暖化対策区域施策編などの策定にとても役立つ、最近できたツールの概要紹介と使い方などのレクがありました。国もどんどん進化しているので、本当に便利なこれらのツールを活用して、ぜひ自らの自治体の脱炭素の実行計画に役立ててほしい、とのことでした。

 

今回は、代表の村上より、CVの基本的な考え方である「kWh=¥」のおさらいと、昨今の各エネルギー価格の高騰の背景や今後の見通し、自治体において率先して行うべき省エネ対策、脱炭素先行地域の選考状況についてなど話題提供がありました。将来的にまちのコンパクト化や住んでいる人のある程度の利便性・快適性考える場合に、高性能・脱炭素型の集合住宅(できれば賃貸住宅)が今後必須となります。これまで公共からの住居に対する補助は、個人の持ち家か、持ち家が持てない人には公営住宅、という2本立ての支援でしたが、今後は民間賃貸住宅などへの公共の支援も必要になってくるとして、いくつかの事例が共有されました。

 

まず、代表の村上より、開催にあたっての挨拶。今回の持続会はオンラインになったが、先日の現地開催したPJ100セミナーでは、やはり実際にお会いして名刺交換したり懇親会で話をしたりすると、かなり有意義な機会になりました。今春からコロナに対する政府の規制も緩和されるので、今後の持続会は、できる限りリアルでお会いしてやっていきたい、とのことでした。また今回は、来年度に持続会に入会するかもしれないということで、栃木県益子町の方が参加されました。

 

続いて代表の村上より「2022/23年エネルギー価格と今後の推移 それに対抗するための省エネとコンパクト化」について。まずはCVの考え方の基本となる「kWh=¥」について。エネルギー価格の高騰と寒波により、最近テレビや新聞などでも、この日本の寒い住宅をどうするか、ということが取り上げられ始めています。クラブヴォーバン設立以降説明している基本的な考え方:例えば人口1万人、世帯数4千の自治体A町を見たときに、1世帯あたりの年間エネルギー支出(電気・ガス・灯油・ガソリンなど)を40万円と仮定した場合のエネルギー支出を計算します(2022年、物価もエネルギー支出も急激に増加。2021年までは全国平均エネ支出30万円と説明していた)

 

40万円 × 4千世帯 ≒ 16億円!(A町 民生家庭部門) が毎年のA町のエネルギー売上。これは民生家庭部門だけ。皆さんの役場や公共施設、企業など、民生業務部門・産業部門のエネルギー支出は全国で約1.5倍~2.5倍なので、2倍と仮定して

16億円 × 2倍 ≒ 32億円!(A町 民生業務部門・産業部門) 

16億円 + 32億円 ≒ 48億円!(A町全体) たった人口1万人のA町でも、年間約50億円近くのエネルギー支出があると考えられる

日本のほとんどの自治体では、エネルギー支出のうち地域に循環するのは3割以下なので

48億円 × 0.7(70%)  ≒ 34億円!  たった人口1万人のA町でも、年間約34億円近くのエネルギー支出が地域外(大きな発電所や海外)に流出している

この、毎年売上が立つことが決まっているお金を、地域の外に流すのではなく、「省エネ・設備の高効率化・再エネ」によって域内に循環させることが、クラブヴォーバンおよび持続会の目的です。

 

続いて、「天然ガス」「原油」「石炭」の短期的・長期的な価格推移グラフ紹介とその背景について。電力価格が1kWh=50円を超える時代になりました。実はこの1年間にどんどん値上がりしている電気料金の主たる原因は、国内の火力発電に占める燃料割合の高い石炭が、この2年弱で6~7倍にも値上がりしているからです。このことはメディアでもあまり報道されません。また、エネルギー値上げに対し、本来であれば世帯や一人あたりということで補助金が出れば、家計の中で高いエネルギーをできるだけ使わないように自助努力が働くのですが、元売りのところに補助金を拠出しガソリン小売価格が170円/L以下を死守、といった形で巨額の税金が投入されているので、私たちは行動様式を何も変えずエネルギーを使い続けています。2022年度のエネルギーのための補助金は、補正予算も併せて9.3兆円にも上ります。これは言わば、返すアテもないのに子どもたちから借金をしているお金です。

 

続いて、脱炭素社会に向けて、自治体ですぐ取り組むべき対策が紹介されました。LED照明への切り替えや古い冷蔵庫、エアコンやOA機器、家電などの省エネ型への更新、化石燃料ボイラー、ヒーター機器、蓄熱暖房機、電気温水器から、潜熱回収型機器への更新、高効率の電力ヒートポンプ機器への更新、内窓の設置など窓のトリプルガラスへの交換、屋根裏や小屋裏への断熱材の投入、PVやEVの導入、こういったことを公共施設で導入し、地域で促進すること。つまり、以下の省エネの「3つの神器」に投資してゆくしかありません。電力は、「太陽光」と「風力」(一部バイオマス).へ。熱は、「省エネ建築」(断熱・気密)と「ヒートポンプ」(エアコン・エコキュート)へ。運輸は「EV」へ。

 

また、人口減少と高齢化が進み、人がある程度便利に快適に暮らすには、10年以内に集住化を真剣にはかっていく必要があります。自治体としてもう一つやるべきこととしては、「人口減少に伴う集住化」「まちのコンパクト化」、そしてそれを推し進めるための「高性能・脱炭素型(例えば太陽光自家発電)・集合住宅(できれば賃貸)」。建築費は2割くらい上がっているにも関わらず、若い世代の可処分所得は減り続け、ローンも35年では常識的な家を買えなくなってきているので、公共による若い世代向けの支援ということで、何らかの賃貸住宅が必要になってくるでしょう。これまでの住宅支援は、持ち家を持つ人を対象とした補助、持てない人には公営住宅、という2本立て支援でしたが、今後は3本目の支援の軸、賃貸住宅を提供しようとしている地域の地主や民間業者に、いかに「住宅性能」と「建築立地」を担保した形で補助金を作り、まちのコンパクト化、良質な集合住宅をはかっていくことが重要、という意見から、補助金のあり方や自治体の事例について議論・情報共有されました。

 

2022年

11月

17日

10月21日「持続可能な発展を目指す自治体会議 第6回自治体相互視察 in 二戸市」を開催しました

2022年10月、第6回目となる自治体相互視察は、クラブヴォーバンの自治体正会員の岩手県二戸市が受け入れをしました。今回は正会員自治体の下川町、ニセコ町、葛巻町、横瀬町、北栄町とクラブヴォーバンスタッフで、25名ほどの参加でした。

 

20日の持続会開催の後、参加者が宿泊したのは、今春オープンしたばかりの温浴・宿泊施設「カダルテラス金田一」。江戸時代初期より地域で親しまれてきた歴史ある金田一温泉のシンボルである、金田一近隣公園内にある市営の温浴施設の老朽化を受け、市は緑地等公園施設・プールの整備と合わせて温泉施設のリニューアルを行いました。衰退しつつあった温泉地の活性化を図ることを目的に、地域内外の人が温泉・宿泊・食事などを楽しめる拠点整備の一大事業です。特徴は、市が策定した公民連携基本計画・公民連携事業構想に基づき、Park-PFI制度と民間主導のまちづくり会社を設立し、最適な民間投資を呼び込むPPPエージェント方式を採用し、従来の指定管理に頼る運営からの脱却と、地域の魅力をビジネスとして再構築し、エリアの持続的な発展を目指すプロジェクトとして約10年の構想と準備を経て完成しました。工事費は市中や政府などの金融機関から融資を受けながら、二戸市も出資して資金調達。運営会社として、地元企業と二戸市の出資で、まちづくり会社(株)カダルミライを設立し、できるだけコストを抑えながらの民間主導の自立運営をはかっています。この取り組みについては、構想段階から持続会で話を伺っていたため、ぜひ相互視察で訪ねたいとの希望がありました。外観も内装もシンプルかつ美しいデザインで、温泉の施設も含めとてもくつろげる素敵な施設でした。

夜の懇親会では、近隣の老舗旅館、おぼない旅館にて、二戸市長より差し入れをいただいた南部美人の純米酒をいただきながら、旅館の心尽くしの地場料理をいただきました。このエリアの魅力が描かれた「金田一温泉郷てくてくマップ」は、ここのおかみが作成されたそうです。

 

21日朝、JRE折爪岳南第一風力発電所へ。ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社の神山氏と東北電力株式会社の佐藤氏にご案内いただきました。ここは3市町にまたがる西からの風況の良い場所で、一基3.6MWの風車13基の設置が進んでいます。年間発電量は一般家庭の約24,000世帯分。現地調査や環境アセスメントに約3年かかり、開発から2年半たちようやく最近1基目が回り始め、発電を始めたとのこと。ヒメボタルの生息地があったことから当初予定から開発範囲を変えたり、また地権者の地元のステークホルダーの方々との話し合いを重ねながら事業を進めているとのことでした。開発のために作った林道はいずれ一般に開放し、また保安林の安全面もしっかり行い、公共の利益となるようにしたいとのことでした。バスで林道を登りながら風車に近づくと、車窓からはその林道の整備規格や施工が良質なことが伺え、災害の起点になりやすいケースもあるこうした開発も、丁寧な設計と施工をするなら、より良い空間を提供することも可能だと感じられました。発電事業者と施工を担当した清水建設株式会社の良い環境をつくるという決意がうかがえた開発でした。

 

二戸市は、風況に恵まれた地域でもあり、早くから県営による風力発電の開発が行われ、現在も民間による大規模な陸上風力発電の開発がここ以外でも複数個所で同時進行で進んでいます。こうした積極的な風力の取組み、太陽光発電やそのほかの再生可能エネルギーを活用するべく、大都市圏と二戸市周辺の再エネに富むエリアとの連携を強化するため、2019年には横浜市と「再生可能エネルギー活用を通じた連携協定」を締結しています。

 

次に訪れたのは、二戸市生活改善センター。二戸市総務部防災安全課長の荒谷氏より、ここに開設される予定の防災施設についてのお話を伺いました。市内中央に位置する御返地地区では、安比川沿いに居住区が形成されており、度々水害の危険にさらされてきました。そのため、災害時の避難所や消防屯所機能のほか、備蓄や停電対策を備えた防災施設の整備を計画しており、現在基本設計を進めていて、令和6年にオープン予定です。防災施設は、普段は研修施設・地域コミュニティーセンターとして使用します。防災施設なので、札幌の省エネ基準程度の高断熱仕様で建設し、屋根には太陽光パネルを載せ、蓄電池やEVなども設置予定です。ただ、ハザードマップの浸水エリアの見直しにより、この施設自体も1mほどの浸水リスクがあるため、予算との兼ね合いや住民との話合いを重ねた結果、この施設は一次避難所として基礎をその分高くすることとなりました。もし1mを超す浸水が見込まれる場合には、ここではなく高台に避難するなど、防災手順などについての課題があるとのことでした。

 

次に、昭和55年設立の二戸市立浄法寺歴史民俗資料館を訪問。二戸市教育委員会の鈴木氏、野辺地氏、資料館長の中村氏にお話を伺いました。平成18年に、浄法寺漆として知られる浄法寺町は二戸市に合併されました。国産の漆はとても希少ですが、令和元年には、国内で流通する国産生漆の約75%を二戸市が生産しています。漆の木は数年しか持たないので、市有地を活用し、漆の林づくりサポート事業を、漆苗の生産から育成管理、漆搔職人の育成や漆器の生産販売まで一貫で二戸市が行っています。この資料館の収蔵庫には、主に浄法寺町内で用いられてきた漆掻関係・木地師関係・塗師関係の用具など約3,800点が収蔵されています。この収集は、浄法寺の漆掻きと浄法寺塗の全貌を網羅しており、浄法寺通りで生業として繁栄した漆掻き及び浄法寺塗の実態と変遷を理解する上で重要なものだとされており、重要有形民俗文化財に指定され、また令和2年にこれらの取り組みが「日本遺産認定」「ユネスコ無形文化財遺産登録」につながりました。これらの収蔵品を保護しながら、どのように活用していくかが課題です。

 

最後に、滴生舎を訪ね、二戸市浄法寺総合支所次長兼漆産業課の田口氏、小田島氏から漆の生産工程や二戸市の漆産業関連の取り組みについてお話を伺いました。国宝・重要文化財で使用する漆について、平成27年に文科省から国産漆の使用の通知を受けたことにより、国産漆の需要が増加。漆の器ができるまで、漆の林づくりのほか、うるし掻き職人、塗師、木地師など、たくさんの工程があり職人が必要であるため、漆の原木の管理や後継者の人材育成などが急務です。最近は全国の若い世代より、漆掻きに携わりたいと訪ねてくる人も増えているそうです。漆は新しい芽が出てから漆掻きができるようになるまで、15~20年もの時間をかけて木を育て、たった1シーズンで漆を掻ききったら切り倒すそうです。切り倒したところから萌芽が出てまたその芽が育ち、漆が取れるようになるまでまた10年ほどかかるため、漆の原木不足が懸念されています。そのため、持続可能な漆林の育成に取り組んでおられます。ここでは漆器の販売も行われているため、参加者は漆器の手触りを確認しながら、各々気に入った漆器をお土産に買い求めていました。

 

2022年

11月

17日

10月20日「第16回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

前回は、クラブヴォーバン正会員の自治体の担当者の方々より、各自の自治体で新たに取り組んだ事例や課題、対処法の共有がありました。公共施設の再エネ化や省エネ化の取り組み、再エネによる乱開発の抑制、省エネ建築を促進するための条例づくり、超省エネ新庁舎の実際のエネルギー消費量計測報告、民間による風力発電開発やバイオガスプラントと公共との連携、空き家を活用した省エネ住宅促進のための補助金事業、公共施設個別施設計画策定や地球温暖化対策実行計画(事務事業編)の改訂、中学校の断熱改修、断熱ワークショップの動画作成と発信による省エネ改修の申請件数の増加、地球温暖化対策実行計画の推進新体制、来年度に向けた脱炭素ロードマップ策定(いわゆる区域施策編)の準備、次年度の「地球温暖化対策」を入れた予算編成、地熱発電における民間の地熱資源活用に関してなどでした。

 

今回は、第6回目の持続会正会員自治体相互視察を兼ねて、岩手県の二戸市で持続会を開催させていただきました。国の動きより先駆け平成27年より始まった、二戸市における省エネ高性能住宅「二戸型住宅」の取り組みや、官民連携による温泉・宿泊施設再興の「カダルテラス金田一」の事例についてお話を伺いました。また代表の村上より、今年2月に始まったばかりの環境省による「脱炭素先行地域」の内容や選定のポイントや、環境省から温暖化対策区域施策編などの策定にとても役立つ、最近できたツールの概要紹介と使い方などのレクがありました。国もどんどん進化しているので、本当に便利なこれらのツールを活用して、ぜひ自らの自治体の脱炭素の実行計画に役立ててほしい、とのことでした。

 

 

まず、代表の村上より、開催にあたっての挨拶。1ドル約150円という、円安が進む中、円安になると、国際社会の中で円の購買力が落ちるということなので、海外から購入する燃料も当然高くなります。海外では急激にインフレが進み給与水準も上がっているのに対し、日本ではずっとインフレがないまま物価が横ばいだったので、同じ1万円で海外から購入できるものが非常に少なくなってしまい、資源を海外に依存し、その資源で毎日の生活や経済が成り立っている日本にとって、現在は由々しき事態です。

クラブヴォーバンでは長年、「脱炭素社会、CO2排出を減らしていきましょう」「省エネ&再エネを両輪で回していきましょう」という活動を続けているが、その本筋は「外に出ていくおカネを減らして、地域の中でおカネを回し、地域の雇用などにカタチを変えていきましょう」ということを言い続けてきました。今日紹介のある「二戸型住宅」も、そのような想いが元で作られ、地域の工務店や設計士さんが、地域の中でより付加価値の高い建物を作ることで、後々に外に払うことになるエネルギーコストの分を、前借りして地域の雇用・給料として落とし、地域内の経済循環を高めていこう、という考え方です。持続会に参加する自治体の担当者の方も2,3年で担当が変わることが多いので、メンバーも変わっていく中で、今後もここで横のつながりをつくり、各自自治体での脱炭素の取り組みを進めていってほしい、とのことでした。

 

次に、二戸市総合政策部長の泉山氏より、「人が輝き 未来をひらくまち にのへ」と題して、二戸市の概要について。タイトルは、30年後の二戸がどんなまちであったらいいかと地域の皆さんと話し合い、決めた二戸市の未来像。二戸は山林が多く、川沿いの平地に少ない宅地があるという地形で、夏場は暑く冬は寒く、降水量は少なめ、比較的雪も少ないという気候。農業や食産業の割合が高く、東北最古と言われる城壁が残る九戸城跡、瀬戸内寂聴さんが住職を務めた天台寺など、歴史的な遺産も多く、国内外で活躍する人材も輩出しています。東京から新幹線で2時間40分、高速道路のICもあり、交通アクセス良好だが、人口は現在約25000人、いろいろな対策をしているが、人口減少が進んでいます。

行政だけでなく民間も一緒に、地域全体でまちづくりをしていこう、まちをよくしていこう、という考えのもと、公民連携事業で、金田一温泉、九戸城跡、天台寺を拠点都市、地域資源と民間力を活用しながらエリア価値の向上をはかっています。令和元年には、国内で流通する国産生漆の75%を二戸市が生産し(浄法寺漆)、これらの取り組みが「日本遺産認定」「ユネスコ無形文化財遺産登録」につながりました。漆の木は数年しか持たないので、市有地を活用し、漆の林づくりサポート事業を、漆苗の生産から育成管理、漆搔職人の育成や漆器の生産販売まで一貫で二戸市が行っています。

 

また町営の温泉センターが老朽化し、温泉をどのように再生していくかが課題でしたが、地域の若い人も入ってこのエリアの活性化ということで10年の計画を一緒に立て、その話の中でできた官民連携の温浴宿泊施設「カダルテラス金田一」は、晴れて今年3月26日にオープンしたばかり。温泉郷の方が、「金田一温泉郷てくてくマップ」を制作。地域全体の活性化をはかっています。

二戸市のエネルギー政策としては、岩手県の風力発電導入構想(平成27年)の中で、県内で大規模陸上風力発電の導入可能性が高い4つの地域のうちの二つに二戸の稲庭高原や折爪岳のエリアが選定され開発が進んでいます。

 

次に、一般社団法人 岩手県建築士会二戸支部の支部長高橋氏と、事務局の馬淵氏より「二戸型住宅」についての紹介がありました。最初は、平成27年、二戸市の総合計画の中のエネルギーに関する意見交換をしたいということで、二戸市より建築士会にお声がけがあり始まりました。当時、建築士会としても従来型の家づくりから、「次世代型」「高性能で健康的」な家づくりにしていかなければならないのではないか、という問題意識があり、また大手ハウスメーカーに押されていたため、地場の工務店が生き残るためには、ビルダー側やお施主さんの、今までの価値観や意識の変革が必要という意識がありました。そんな中で、二戸市からのエネルギーシフトというキーワードをきっかけに、「住宅にかかるエネルギーの削減」をキーワードに新たな家づくりを考えようということで、方向性が同じだったので一緒に取り組んでいくこととなり、「二戸型住宅」 で地場の工務店が「地元での仕事を請け負うことで経済循環を回していこう」「健康的な住宅を作ろう」ということになりました。

平成27年に意見交換が始まり、我々自身も勉強していかなくてはならない、ということで、クラブヴォーバン村上氏や早田氏、日本エネルギーパス協会の今泉氏や加藤氏らを講師とし、省エネ建築やエネルギーパスについてのセミナーを開催したり、ウェルネストホームの超高気密高断熱のモデルハウスを視察したりなど勉強を重ね、平成29年には二戸市市長へ「二戸型住宅ガイドラインの策定」の要望書を提出しました。建築士会としては、ガイドラインを策定したのち、それを理解し施工できるビルダーを育てる、ということと、一般向けには、住まいが健康に与える影響や住まいにかかるエネルギーや経済循環について、知ってもらう機会をその後も毎年作っています。今年度にはフリー情報誌「ィエサ」発行、今後新築あるいはリフォームを考えている一般向けに、市と共催で、現場の見学会も入れた「これからの住まいづくり講座」も開催しています。

二戸型住宅概要ガイドラインは、二戸型ガイドラインは「次世代省エネ基準よりワンランク上の断熱性・高気密性能」とし、「地域木材の活用」「地域企業の活用」「人材・定住・雇用」「木質バイオマスエネルギーの活用」など二戸らしさのある住宅、としました。コンセプトは以下の5つです。

① 雇用・・・地域の工務店や業者を活用することと地域材の活用で雇用が生まれ経済が循環する

② エネルギー・・・省エネ住宅を建てることでエネルギーの減少また、バイオマス利用で化石燃料を削減する

③ 健康・・・室内温度を18℃以上に保てる住宅を作ることによりヒートショックや疾患による病気を少なくできる

④ 長期優良・・・断熱性、耐震性、維持管理など根拠のある設計で価値のある建物ができる

⑤ 環境・・・地域材を活用することで、輸送で使われるCO2削減及び山林整備により土砂災害の減少

 

この地域は夏暑く冬寒いので、様々な疾患が起きやすいにも関わらず、ヒートショックも起きやすくバリアフリーもない家で、在宅介護ができるか、という問題が背景にあるため、二戸方住宅の断熱基準として、BELSを基準とし、新築とリフォームでそれぞれ3基準を設け、参考のUa値はハイレベル0.28、スタンダードは0.38、ベーシックは0.46、C値は新築が0.5、リフォームが2.0と定めました。建築士会としては、二戸市への提言や、「二戸型住宅登録工務店」認定制度、登録工務店への指定講習会、登録工務店マーク、一般向けの二戸型推奨セミナー、快適住まい講座などを実施しており、登録工務店が現在8社あるが、建て方や建てるための素材も変わってきているので、大手ハウスメーカーに負けないような力を我々もつけ、建築士としての資質の向上をはかり、そのような工務店を増やしていくという活動を今後も続けていきたい、という内容でした。

 

次に代表の村上より、「推計と計画からの地方自治体の脱炭素戦略」について。昨年12月に第一回説明会があり、2月締め切りで応募が始まった環境省の「脱炭素先行地域」という制度に手を挙げたり、今後何らかの地球温暖化対策措置やエネルギー対策を行っていきたい自治体さんにおいては、今後は国の補助メニューをと考えると、事務事業編だけでなく区域施策編、つまり実際に自治体で排出するCO2に対してどういう対策を取るのか策定していかないとなかなか難しいというのが現状です。

この2,3年で国の環境行政が様変わりし、環境省が驚くほど便利なツールを一般向けに出しているので、これまでのように高いおカネを払ってコンサルに依頼しなくても、自治体職員自身で戦略や対策を立てられるようになっています。そのため、「脱炭素先行地域」の制度の概要や応募条件について、その立案に役立つ環境省のサイト「地方公共団体実行計画策定・実施支援サイト」「自治体排出量管理カルテ」「REPOS」「地域経済循環分析」などの概要やツールの使い方などについて、レクがありました。その他に、民間で出されているシミュレーターツールなども紹介し、こういったツールも活用し、必ず今出ているツールの最新のデータのバージョンのものを見た上で、具体的な作業にかかると、かなり予想するより手間も減り精度も上がるので、今後ぜひ活用していってください、という内容でした。

 

最後に理事の中谷から、閉会の挨拶。東京都の「東京ゼロエミ住宅」の制度を参考にしたり、国の「こどもみらい住宅支援事業」の補助金などを活用して、ぜひ二戸型住宅や、その他の省エネ住宅政策を進めてほしい。これから30年後のカダルテラス金田一、温泉郷の発展をとても楽しみにしています、と締めくくりました。

 

そのあと宿泊のために移動したカダルテラス金田一にて、二戸市健康福祉部課長五日市氏より「二戸市の公民連携まち再生事業」 についての発表がありました。古くから栄えた金田一温泉地区の課題として、かつての賑わいを失っている温泉郷であるが、旅館数は減少しながらも奮闘する旅館や、活性化に向けた賑わい創出を地域の若者中心で開催し、機運が高まっていました。この地区にかつて二十数軒あった旅館は6軒ほどとなり、温泉郷として、大口の団体客のニーズに応えるのも難しくなりつつあったことや、町営の日帰り入浴施設、隣接する市民プールなどの老朽化による施設の更新と、指定管理に頼る運営からの脱却が急務でした。また、市全体の課題として、急速に進む人口減少などに伴う財源不足、公共施設の維持管理など多くの課題を抱え、縮退社会のなか、地域価値の向上に繋がる持続可能なまちづくりを進める必要がありました。

そのため、市と民間事業者が、それぞれの役割を分担して事業を行うこととし、ここの有効な空間資源活用と併せ、地域が潤い活気のある地域となるよう再生するために、平成28年度より地域再生計画による公民連携まち再生事業がスタートしました。平成28年度から、「地域の宝」である金田一温泉地区、九戸城跡地区、天台寺周辺地区を対象地域として、アドバイザー招聘によるまち再生ビジョンの策定や主体的役割を担う事業体の設立、事業構想の策定、事業実施を行いました。平成29年度には、再生ビジョンとしての「公民連携基本計画」「公民連携事業構想」を策定するにあたって、地域のポテンシャルをリサーチして再生の可能性を探るワークショップを市が開催。ここに、温泉地域の振興を担っていた金田一温泉地域活性化プラン実行委員会青年部メンバーが参加。このワークショップを契機として、本事業を通じてエリアの価値向上を図ることが、金田一温泉の未来を創ることになると決意し、この参加者が後に事業者としてまちづくり会社の経営に参画することにつながります。地域で暮らしてきた由縁のある方々が、自分たちの未来のために考え、地域の衰退への危惧と地域経営課題解決への強い動機が、事業を動かす強いエンジンとなりました。そして平成30年度「二戸市公民連携基本計画」の策定となりました。

この事業のコンセプトは、地域にあるものを活用して楽しんでもらおう、ということで“まいにち贅沢。まいにち楽しい。“ この地に描く、近未来の日常。デザインとして、「公園の延⾧にある室内空間」を目指し、できるだけシームレスな設計を採用し、しっかり安定したシンプルな切妻屋根の存在感と、水平に広がり、公園となじむバランスに配慮。外壁は、デッキとプールとのバランス、そして冬の雪景色を意識して、落ち着いた黒(自然素材の焼杉)で統一。カダルテラスで過ごすゆっくりと流れる時間にふさわしく、自然素材である焼杉を採用。工事費は市中や政府などの金融機関から融資を受けながら、二戸市も出資して資金調達。運営会社として、地元企業と二戸市の出資で、まちづくり会社(株)カダルミライを設立し、できるだけコストを抑えながらの民間主導の自立運営をはかっています。この後、エネルギー面や構法、事業スキームや資金調達などの説明があり、この事業を通してよかったこと、また課題についても情報共有されました。

 

2022年

2月

28日

10月22日「持続可能な発展を目指す自治体会議 第5回自治体相互視察 in ニセコ町」を開催しました

2021年10月22日(金)、第5回目となる自治体相互視察では、クラブヴォーバンの自治体正会員の北海道のニセコ町を訪問しました。コロナ禍の影響もあり昨年は開催できず今回も開催は難しいと考えていましたが、片山町長からのお声がけもあり、ギリギリのタイミングでニセコ町にて現地開催することができました。今回は正会員自治体の下川町、二戸市、葛巻町、横瀬町の他、羊蹄山麓の蘭越町、真狩町、京極町、倶知安町、留寿都村からのご参加も合わせ、30人超の参加となりました。

ニセコ町では、2018年に「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に選定され、町がモデル事業として提案した「NISEKO生活・モデル地区構築事業」を推進しています。この事業は2050年までにゼロカーボンを目指す町の中核的・先導的事業として、日本の新しいまちづくりの先進的なモデルとなるべく、ニセコ町一丸となって取り組んでいます。この事業にクラブヴォーバンも2018年より参画しており、2020年7月には、ニセコ町・地域事業者・クラブヴォーバンの共同出資による、「株式会社ニセコまち」を設立して事業を進めています。

今回は、ここ数年ニセコ町が取り組んできた、新庁舎建設や集合住宅の建設、断熱改修やコジェネ導入によるCO2削減を実現した公共温熱施設、SDGsモデル地区予定地などを視察し、参加自治体の今後の政策立案につなげることを目的として開催されました。

まずは、2021年1月から入居がスタートしている高性能アパート(高橋牧場ミルク工房の従業員用の寮)を視察。これは、SDGsモデル地区における高気密高断熱の集合住宅のモデルとなるアパートです。設計、施工の監修はCV代表の早田の創業したウェルネストホーム社、施工は地元の工務店によって実施されました。外観デザインを極力シンプルにした分、家の性能に注力し、ロックウールを使用し60分の耐火試験もクリアした断熱の壁や、アルゴンガスを入れたトリプル樹脂窓は、ウェルネストホーム社オリジナルの建材を使っています。

真冬には-15℃の日が続くニセコ町ですが、Ua値(断熱性能値)で0.25W/m2Kの高気密、高断熱での施工によって、主たる暖房は共用部におけるエアコン暖房のみです。それでもアパートの共用廊下に入った瞬間、暖かい空気に包まれます。この暖房だけでは物足りないという場合に、各戸に念のため小さなパネルヒーターは設置されています。この説明を聞き、厳しい冬の寒さを知っている羊蹄山麓の自治体からの参加者の方々は驚愕されていました。

次に、公民連携の株式会社キラットニセコが運営する駅前温泉施設「綺羅の湯(きらのゆ)」を視察。2018年9月に北海道で大規模停電が生じたことを契機に、ニセコ町でも新たな防災拠点が必要となり、防災機能を兼ね備えた施設となっています。北海道で真冬に停電すると、住民の命に関わる問題です。LPガスバルクを導入し、自家発電をしながら洗い場用の湯沸かしのベース熱供給を行うCHP(コジェネレーション)を導入し、排熱回収設備も設置しましたました。冬場、7℃の水を、温泉の排熱で温めて15℃にすることで、省エネになっています。さらに省エネ性能を高めるために、屋内の照明はLEDに交換され、元々ダブルガラスだった窓のさらに内側に更にダブルの内窓サッシを導入。これらにより、月々の大幅な光熱費の削減になっています。

次に、2021年の4月完成した、冬の寒さが非常に厳しいニセコにおいて、可能な限りCO2を排出しない、高性能な躯体に注力した高気密高断熱のニセコ町新庁舎を視察。「最高級の躯体性能があれば、重厚な設備は必要とされない」という取り組みで、Ua値0.18W/m2Kという超強力な断熱性能、躯体を誇る新庁舎(兼 防災センター)となっています。近年では本州並みに蒸し暑くなる北海道で、オフィス建築の弱点である冷房エネルギーの増大にも対応し、夏も冬も快適に、最小限の設備とエネルギー消費量で、快適な労働環境を保障しています。また、LPガスCHPと非常時の発電設備による自家発電で、ブラックアウト状態でも3日間は対応できる、防災機能を兼ね備えています。

床などの内装には道内産の白樺などの木材がふんだんに使用され、町内の家具作家の方々が制作したテーブルや椅子などが配置されています。普段は町民ホールとして利用開放されている円形議場、働き方改革を取り入れた会議スペース、間接照明やプライベートに配慮したワークスペース、羊蹄山を目前にして住民がくつろげるオープンスペース、ガラス張りの町長室、小さい子どもも楽しめるようなちょっとした仕掛けなど、いたるところに配慮が見られる庁舎となっています。

寒い冬・かさむ光熱費・高齢化や核家族化・ライフスタイルの変化によって豪雪地帯における雪かきや庭の管理が困難・・・従来の農村地域のスタイルのままでは、多くの町民にとって暮らしづらくなっています。同時に、人口の微増と核家族化による世帯数の急増によって、ニセコ町において住宅不足が地域課題となっており、数百人規模の町内で働く方が、町内に住めない事態が続いています。それらの地域課題を解決するために、SDGsモデル地区開発のプロジェクトが2020年から本格的にスタートしています。羊蹄山を望む開発地区を見渡せる来年の造成工事開始前の用地を視察しました。隣接する築約30年の建物は、まちづくり会社の事務所として使用させてもらうため、地域住民と共に断熱改修ワークショップを実施し、冬でも暖かい建物となりました。

最後に、毎年トリップアドバイザーの道駅ランキング上位に入る人気施設「ニセコビュープラザ」を訪ねました。特産品販売と観光案内の情報プラザ棟、農産物直売所やテイクアウトショップなどが立ち並んでいます。ニセコ産生乳のスイーツやチーズなどの乳製品から、焼き立てベーグルや石窯パン、日本酒やワインなどの地酒まで販売され、農産物直売所では「安心・安全・安価」をモットーに、その日の朝とれた新鮮な無農薬野菜をお手頃価格で提供しています。

諸外国に比べ脱炭素の取り組みが遅れてきた日本において、即効性のある地球温暖化対策が急務です。国内の自治体において、優先的に取り組むべき地球温暖化対策は何か。それをいち早く計画・実施している先進自治体の取り組みを視察し、自治体の担当者同士で直に相談ができる関係性を築く場を提供すること。クラブヴォーバンでは、引き続き温暖化対策に本気で取り組む自治体のサポートを続けていきたいと思います。

2022年

2月

28日

1月20日「第15回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

前回は、片山町長の呼びかけでニセコ町現地とオンラインにて持続会が開催され、クラブヴォーバン正会員自治体だけでなく、羊蹄山麓の5町村からも参加があり、現地にて視察も行われました。環境モデル都市・SDGs未来都市に選ばれたニセコ町の、CO2排出量を抑えた持続可能なまちづくりに向けての、新庁舎更新・公共施設の省エネ化・SDGs未来都市などの取り組みを中心に紹介がありました。

今回は、正会員の自治体がそれぞれ、自身の自治体におけるこれまでの気候温暖化対策、環境政策、公共施設の合理化などの現状について振り返りながら、自身の自治体における環境・温暖化・公共施設に関する動向で、この1年間で「新たに」生じた、取り組んだ、進んだ事柄・動き・施策・プロジェクトについて、発表を行いました。また各自治体の抱える課題や悩みに対し、専門家や参加自治体などから、アドバイスやヒントが共有されました。

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まず代表理事の早田より、おそらく内閣府だと思うが、脱炭素の先行地域の募集が始まっているので、全国の自治体の中で先行しているはずの皆さんもぜひ申し込みの準備をしてください、との開催の挨拶でした。代表の村上より、地域で何ができるか、その優先順位についてはこれまでここで十分行ってきたと思っているので、今後は皆さん自身の自治体で、環境や脱炭素、公共施設などインフラで、どういうことに取り組んでいるかについて、お互いに報告し合っていただきたい。それが他自治体さんへの刺激にもなり、こういうことを更に聞きたいというのであれば担当者の方と話ができる。担当者同士で悩みを共有し、その議論の中で、皆さんにとって、この部分はもっとインプットした方がいいと思うことがあれば、環境省や経産省や内閣府の担当の方や、その部分における専門家を招き、皆さんに情報をインプットしていこうと思っている、との話でした。

 

その後、正会員の自治体の担当者より、公共施設の再エネ化や省エネ化の取り組み、再エネによる乱開発の抑制をしたり省エネ建築を促進するための条例づくり、超省エネ新庁舎の実際のエネルギー消費量計測報告、民間による風力発電開発やバイオガスプラントと公共との連携、空き家を活用した省エネ住宅促進のための補助金事業、公共施設個別施設計画策定や地球温暖化対策実行計画(事務事業編)の改訂、中学校の断熱改修、断熱ワークショップの動画作成と発信による省エネ改修の申請件数の増加、地球温暖化対策実行計画の推進新体制、来年度に向けた脱炭素ロードマップ策定(いわゆる区域施策編)の準備、来年度の「地球温暖化対策」を入れた予算編成、地熱発電における民間の地熱資源活用に関しての課題と対処など各地のさまざまな事例とともに、課題や対処法などが共有されました。

 

また千葉商科大学基盤教育機構准教授の田中信一郎氏から、環境省の地域脱炭素に向けた動きについての情報共有がありました。国会で、地球温暖化対策推進法が改正され、これまで策定義務がなかった小規模市町村においても、地球温暖化対策の地方公共団体実行計画の区域施策編、いわゆる地域全体の脱炭素の計画を策定することが、努力義務になりました。それをどういう風に作ればいいのかという助言を、国から各自治体に対して行うということになり、小規模自治体においても使えるマニュアルにしようということで田中氏も委員として取り組みました。

脱炭素のために何でもやってください、というよりも、むしろ脱炭素を手法として、地域の活性化や地域の課題解決をメインでやってください、という考え方が強く打ち出されています。でも小さな自治体では温暖化対策の区域施策編を単独で作るのが難しいでしょうから、総合計画やほかの計画と合体させて温暖化対策の性格を持たせてもいいということにしました。CO2の排出量の調査をやるというよりは、小さくてもいいので具体的な施策を1つでも2つでもいいのでやって、まずは正しい方向でしっかり成功事例を作り積み重ねていきましょう、ということになっています。そして、これらの事例の一部に、クラブヴォーバン持続会正会員のニセコ町や北栄町の取り組み事例が紹介される予定、とのことです。クラブヴォーバンがこれまで持続会でやってきた考え方がほぼそのまま、国から自治体にやってください、という方針になるようです。

2022年

2月

28日

10月21日「第14回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

前回は、住宅の省エネについての現状と今後の展開について、埼玉県横瀬町から取り組みの発表と悩みの共有があり、クラブヴォーバン(CV)のメンバーやオブザーバーの省庁関係、地域電力、大学や研究所などの専門家の方々から、補助金など制度設計についてのアドバイスや意見の交換がありました。今回は、北海道ニセコ町の高気密高断熱の新庁舎が5月に完成したこともあり、急遽片山町長の呼びかけでニセコ町現地とオンラインにて持続会が開催され、クラブヴォーバン正会員自治体だけでなく、羊蹄山麓の5町村からも参加がありました。

また翌日には、現地にて視察も行われました。環境モデル都市・SDGs未来都市に選ばれ、2020年には気候事態宣言も出したニセコ町にとって、町の脱炭素は急務の課題です。今回は、ニセコの超省エネの新庁舎建設やSDGsモデル街区開発の取り組みを通して、CO2排出量を抑えた持続可能なまちづくりのために、地域で取り組みやすく効果が高い政策、また公共施設更新で高性能な建築を考える場合に、将来的な設備更新についても考慮し、基本的に押さえるべきポイントなどをインプットしました。

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今回ニセコ町の片山町長より「持続可能な発展を目指す自治体会議 ようこそSDGs未来都市ニセコ町へ」について。ニセコ町のこれまでの民主主義や住民参加と情報共有によるまちづくりの取り組みの事例として、まちづくり町民講座や、人気施設となった道の駅や町の図書館、日本初の自治基本条例となる「ニセコ町まちづくり基本条例」があり、これらの20年に及ぶ政策が2013年には環境モデル都市に、2018年にはSDGs未来都市に、国より選定されたことにつながったとのこと。2020年には気候非常事態宣言・ゼロカーボン宣言を行い、環境基本条例の改正や、再エネ条例、自転車条例制定などを実施、温室効果ガスの排出量を2015年比で2050年までに86%削減、2050年温室効果ガス排出量実質ゼロを掲げ、取り組み中。CVとの付き合いは、代表の村上の著作を読み、いいことがたくさん書かれているなと感心して始まった。その中に、「日本からドイツのヴォーバンの取り組みを視察に来た人は、素晴らしい取り組みだが日本は法律など状況が違うからできない、と言い訳して皆何もしない」のような下りがあったので、皆がやらないならば、ニセコ町がやってやろう、と思った(笑)とのこと。CVと2015年「持続可能な発展を目指す自治体会議」を一緒に設立し取り組みを進めているとして、町長が付箋をたくさん貼られた村上の「キロワットアワー・イズ・マネー」の本を、会場で回覧していただきました。

 

次にCV代表の村上から、「新しい段階に突入した気候非常事態と小規模自治体で実施すべきこと」について。脱炭素社会に向けて、世界の経済界ではどんどんゲームチェンジが進んでいます。ドイツでは日本の311後を受けて再エネ投資が急速に進み、2020年の電力消費量に対して、再エネ発電の割合は45%に!ちなみにドイツの再エネ電力は、大手エネルギー会社によるものは3割程度で、32%が市民、11%が農家、24%が地域の中小企業の出資によって運営されています。つまり、再エネによる利益の約7割は、地域に配分されています。高断熱・高気密の省エネ建築も進み、現在はUa値0.3W/㎡K以下、C値0.2cm2/m2以下の高断熱・高気密の建物でないと、ドイツでは新築することができません。日射遮蔽対策や、樹脂か木製サッシのトリプルガラスは必須・標準となっています。

ドイツでは建物エネルギー法が施行、すべての暖冷房する建物を対象として、2021年以降に建築確認を申請するすべての建物はnZEH、nZEBとなり、既存建物に対しても、高断熱・高気密への改修が進んでいます。自家用車の販売はEV車に完全にシフト。電力の需要/供給のバランスの柔軟性の追求により、皆が一斉に暖冷房せず、一斉にEVに充電しないインフラができた上で、再エネで余った電力を交通でEV車や鉄道に使ったり、熱にしてヒートポンプや電熱線に使うなど、セクターカップリングを行っていく必要があります。例えば、人口5千人、世帯数2200のA町において、1世帯あたりの年間エネルギー支出を30万円とすると、ざっと毎年15億円ものお金が域外に流出していることになりますので、このうちの一部でも域内に循環させるために、各地域で、省エネ・高効率化・再エネを絶対的に推進する必要があります。皆さんの自治体でもぜひ取り組んでください、とのことでした。

 

次に、ニセコ町都市建設課課長の黒瀧氏より、「公共施設で飛びぬけた断熱性能を創る~ニセコ町庁舎のご紹介」について。2011年の震災時以来始まった、防災を含めた、新庁舎をどうするかという議論について、町長・議員・町民・町民などあらゆるステークホルダーとの間で丁寧な話し合いを重ねてきた経緯が語られました。5月にスタートした新庁舎の円形の議会室は、年に4回の議会以外は町民のイベントで使えるようにし、2回の羊蹄山やアンヌプリなど山々の見える眺望のよい空間は、フリースペースということで町民に開放されています。地元の木材や、地元の方が作った机や椅子などを極力使い、窓はアルゴンガス入りトリプルガラスの白樺の集成材を使った木枠、外断熱は北海道の通常の2倍以上の23.5㎝の断熱材を使い、躯体外皮性能0.18W/㎡Kを実現し、全国の庁舎でもトップレベルのかなり高性能の躯体となり、夏も冬も最小限の光熱費で職員・町民が快適に過ごせる庁舎となりました。

 

次に、株式会社ニセコまち 事業推進室長の宮坂氏より「SDGs未来都市の取り組み~NISEKO生活モデル地区構築事業の進捗」について。ニセコ町が2018年に「SDGs未来都市」に選定され、その中核事業になるのが、NISEKO生活モデル地区構築事業で、その事業に携わっています。経済の面では地域内経済循環を促進、社会の面ではコミュニティの活性化、環境の面では省エネ・再エネに取り組むこと。ニセコ町では2000年頃から移住者が増え、核家族化も進み世帯数が急増しており、住宅不足がひっ迫した地域課題です。また、20~30年前に町内に大きい家を建てたが、子どもが独立して夫婦二人だけとなりメンテナンスが大変など、住宅の需要のミスマッチも課題であり、住み替えができる形での分譲・賃貸の集合住宅の供給が必要になっています。9haの用地に、将来的に400~500人が居住できる街区を10年かけて段階的に開発していきます。建設時において、通常の街区開発よりCO2排出量を半減、2040~2050年には街区からのCO2排出量がゼロになっていくような街区開発を行っていきたい。具体策としては、世界的にも通用するような高気密・高断熱の集合住宅を建設していきます。それに加え、電気自動車のシェアカーや、太陽光パネルの導入なども考えており、エネルギー部門に強い民間企業などと、包括連携協定を結び、CO2削減について深堀り検討しています。

 

次に、CV代表理事の早田より、「これからの小規模自治体における住宅インフラ~高性能集合住宅」について。早田は2007年から一般社団法人クラブヴォーバンを始めました。2012年、ウェルネストホームという住宅メーカーを創業、ドイツの村上から教えてもらったノウハウを、日本の気象条件に実際に合わせてカスタマイズし、主に戸建て住宅を販売、設計、施工しています。今関東では大体Ua値0.8W/㎡K、北海道は0.46W/㎡Kが省エネ建築の基準なので、関東よりは約2倍の厳しい性能が求められる。だが、私のつくっている住宅は、全国で0.2~0.23W/㎡K。この数値は、ヨーロッパのスタンダードです。ニセコ町の新庁舎0.18W/㎡・Kというのは、日本最高の省エネ庁舎だと思う。今(10月下旬)外がかなり寒くなってきたが、まだ暖房は入っていないそうです。再エネと省エネは、両輪、セットです。

SDGs街区で、なぜ高性能集合住宅か? 戸建住宅を複数建てて外皮面積が多いと、外気に接する面積が大きくなるため、熱効率が悪くなります。集合住宅を活用した街区では平均的な戸建て住宅に比べて約2.5分の1の面積で済みます。北海道では、一般住宅の暖房の熱源はほぼ灯油。1L灯油を燃やすと、CO2が2.3kgも発生します。上下水道の距離も短くなるし、コンパクトなまちづくりをする利点は他にもたくさんあります。その集合住宅のモデルとなる1、2階各4戸、8世帯の高気密高断熱の集合アパートが、2020年12月に完成。このアパートに翌3月から計測システムを入れ常時管理していますが、関東の冬と同じくらいの寒さのニセコ町の3月で、上下階計4台の共用エアコンのみで各戸の室内は常時22℃±1℃で推移(角部屋を除く)。この期間、1戸あたり暖房費が50円/日でした。外皮性能のしっかりした家だと、真夏にエアコンの設定温度を24℃にしても、わずかな電気代で快適に過ごせ、仕事の生産性も上がります。集合住宅での騒音の問題も、横だけでなく上下の騒音にも配慮して建築し、木造住宅で日本最高レベルの防音性能を出しました。

市街地に高性能の集合住宅を少しずつでも建てて、そこに大きい一軒家で住んでる高齢者が、快適に住めるからと賃貸で引っ越し、空いた家を断熱改修して若い大家族に貸し出す。これを、ヨーロッパでは国の取り組みとしてやっています。それで海外から買う化石燃料を減らし、その分でまた高性能住宅を建てています。日本では国全体でやるのは難しいかもしれないが、ここにいる皆さんの自治体では、少しずつでもこういう方向性でチャレンジしてください、とのことでした。

 

最後に、対談形式「ここ10年間が正念場。公共や建物のインフラでできること」(司会:村上 登壇者:ニセコ町/山本副町長・黒瀧課長・CV/早田・(株)ニセコまち/宮坂)と質疑応答がありました。ニセコ町では、高気密高断熱の庁舎ができ街区で高性能の集合住宅を作ろうとしているが、さらに今新しい条例を作ろうとしています。新築で家を建てる人には、家を建てる前に燃費性能を確認し、役場に届け出をしなくてはいけない、ということを今後実施していくそうです。断熱材や気密性能、躯体の強度や窓ガラスは、いったん作ってしまうとその後使う60年間はランニングコストがかからないので、そこにまず手を付け、設備が少なければ少ないほど、その後のメンテナンスコストも少なくて済みます。ZEBに飛びつけば補助金を頂けるのかもしれないが、それが本当に自分たちの身の丈に合っているのか?が重要ということをクラブヴォーバンから学び、二セコ町は、最初はZEBと言っていたが、最後はZEBにこだわらなかった、とのことでした。過大な設備を最初から付けなければ、設備更新時に、補助金のない中での更新の心配をしなくて済みます。

2021年

9月

01日

クラブヴォーバンの持続会の取り組みが東京新聞の連載「月刊SDGs」に紹介されました

2021年8月号の東京新聞「月刊SDGs」の連載にて、「11. 住み続けられるまちづくりを」の事例として、クラブヴォーバンの「持続可能な発展を目指す自治体会議(通称:持続会)の取組みが紹介されました。

 

《東京新聞サイトへのリンク》

https://www.tokyo-np.co.jp/article/127358

 

2021年

6月

21日

5月20日「持続可能な発展を目指す自治体会議・臨時会」を開催しました

前回は、一社地域政策デザインオフィスの田中信一郎氏の「行政のタテ割りとヨコ割りを内部から突破する」のインプットで、「急速に人口が減少する時代における自治体の役割は、減少していく行政資源で、増加していく前例のない課題を解決する、というこれまでに前例のない難しいことをやっていかなくてはならない」という認識共有や、行政など日本の組織によくありがちな、タテ割りの例や弊害の具体例、発生原因の具体例を挙げつつ、それを打破するための具体的な方法論や参考図書が紹介されました。また、地球温暖化対策に向けた取り組みについて、すでに自治体を上げて具体的な取り組みを始めている北海道下川町・ニセコ町、鳥取県北栄町から、事例の詳細発表と、悩みの共有や課題、質疑応答などの場を設けました。

 

それを受け、今回は、住宅の省エネについての現状と今後の展開について、埼玉県横瀬町から取り組みの発表と悩みの共有があり、クラブヴォーバンメンバーやオブザーバーの省庁関係、地域電力、大学や研究所などの専門家の方々から、制度設計についてのアドバイスや意見の交換がありました。代表の村上からは、2050年CO2排出量ゼロの社会では「気候中立を前提とした新しいエネシステム」になるため、今後どのような「ゲームチェンジ」が日本でも起こっていくか、ドイツで実際に起きている事例などを紹介し、「今後社会動向を見据え、今すぐに、本当に実効性があるCO2削減のための対策や施策を打たなければならない、去年までの延長で、今年や来年、これまでと同じ施策をやっていてはいけない」とのインプットがありました。

 

 

まず代表理事の早田より、開催の挨拶。日本も、重い腰をようやく上げてゼロエネルギーを言い始め、河野太郎さんがタスクフォースで言い始め、建物の断熱の分野でようやく少しずつ温暖化対策が日本でも進んでいくようですが、その動きなどに期待したい。ヨーロッパはCO2削減の取組みが増々加速している中、日本は取り残されていると感じています。今携わっているニセコ町のSDGsモデル街区の事業の周辺で、法さえ守っていればいい、ということで乱開発が進んでいるのを間近で見るにつけ、日々悩んでいます。ぜひ、この「持続可能な発展を目指す自治体」のみなさんは、できることとできないことはあるとは重々承知しているが、できることを始めていきましょう、とのことでした。

 

今回は埼玉県横瀬町から「住宅エコリフォームについての現状と今後の展開」について発表がありました。町の人口は8千人、日中と夜間の温度差が大きく、夏熱く冬寒い地域です。町の目指す将来像は、「日本一住みやすい町」「日本一誇れる町」「カラフルタウン」。数年前からこのクラブヴォーバンの持続会に参加し、他の参加自治体の取組みを参考に、環境関係の補助金制度の見直しを行ってきましたが、さらにこれから見直しをかけたいとのこと。「町民の住環境の向上」「クリーンエネルギーの普及」「空き家の活用促進」を目的とした「住宅環境改善及び空き家活用促進補助金」制度などについての説明があり、現状の悩みや課題などが共有されました。また、他の参加自治体からも、温暖化対策に向けての補助金制度の紹介がありました。これら制度が、地域経済を活性化しながらCO2排出を大幅に削減していくために、もっと住民に活用され意味のある取り組みになるように、地域の事業者が高性能の建築や改修のスキルアップができるように、限られた予算とマンパワーの中でどんな手法やアイデアがあるのか、CVのメンバーやオブザーバーの方々から、意見やアイデアが活発に出されました。

 

次に代表の村上から、「ドイツの暖房・給湯などの設備機器における 気候中立への道」について。日本でもようやく、2050年にCO2削減の目標値を排出量ゼロと言い始めました。今日の省エネ改修や設備の話ともつながりますが、2050年に気候中立を考えるのであれば、現段階ですでに皆さん本気でやらないといけない、今から建つ新築は、そろそろ2050年ゼロカーボンのモデルになっていないといけない、とのインプットでした。1990年代、ある雑誌で、「ワープロが今後も存続するか?」についての業界公開質問状に対し、「ワープロがすぐなくなる」と回答した業者やキーマンはゼロ。その数年後、世の中からワープロは消えました。その業界のその先端にいる人たちが、気づかないうちに社会が変わってしまった典型で、社会が4、5年で全く変わってしまった、この「ゲームチェンジ」の事例や、約20年ドイツで起こった、エネルギー産業や自動車産業における「ゲームチェンジ」の事例が紹介されました。

 

今後、日本の家電や灯油や自動車など、「気候中立を前提とした新しいエネシステム」に代わってゆき、劇的なゲームチェンジが起こり、それを加速させるために、ドイツで今年から始まった「炭素税」が、恐らく日本でも数年後に導入されていくでしょう。そして、この「持続可能な発展を目指す自治体会議」に参加されている先進自治体の皆さんは、早めに社会動向を見て「ゲームチェンジ」に備え準備をし、国が言った2050年カーボンゼロ目標より、前倒しで取り組まなければなりません。例えば、新築の家を建てる時に、断熱気密をしっかりやった上で、冷暖房システムがネットワーク型になっていないといけません。寒い時は灯油を使えばいいというのでは、2050年カーボンゼロの家になりません。そのためには、早め早めに対策し、昨年までの取組みの延長ではなく、今年・来年で新たな取り組みや助成金の見直しなどを行ってください、とのインプットでした。

 

クラブヴォーバンでは、2050年カーボンゼロ社会を見据えた地球温暖化対策について、自治体の方が今考えている制度をよりよいものにしたり、次年度の取組みのヒントになるようなプログラムを考え、この持続会を開催しています。

 

2021年

2月

24日

1月21日「第13回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

会員各自治体の公共施設別の、電気・ガス・灯油・ガソリン等エネルギー使用量の「kWh=¥」への単位統一、㎡あたり、月あたり、利用者一人あたりのエネルギー使用量の見える化調査と発表に引き続き、前回は、会員各自治体からの地球温暖化対策に向けた取り組みの報告の場を設けました。その時に出てきた共通の悩みを受けて、今回は田中信一郎氏から「行政のタテ割りとヨコ割りを内部から突破する」のレクチャーを行い、その後に、会員自治体の中で地球温暖化対策を力強く実質的に進めている3自治体、北海道下川町とニセコ町、鳥取県北栄町3町から事例の紹介と質疑応答がありました。

 

まずは、代表理事の早田より、開催にあたっての挨拶。ニセコSDGs街区着工に先駆けて、早田の創業した(株)WELLNEST HOMEが設計監理を行い、ニセコ町の工務店さんが施工した高性能賃貸アパートのモデルが2020年12月に完成。4戸ある2階の共用の廊下に、6畳用のエアコン2台を設置、そこで暖めた空気を各戸に送って暖房する仕組み。各戸のエアコンを使わず、共用エアコンのみであっても、外気温−15℃時に室温20℃以上を保てることが確認でき、町民の方もここにきて「めちゃくちゃ暖かいね」と言ってくれ、手ごたえを感じています。来年末頃にはいよいよ街区の集合住宅が現れてくる予定なので、コロナ禍が落ち着いたらぜひ皆さんとここで集まれる日が来るといいなと思います。ここに集う持続会の自治体での新築や改修工事については、精一杯やれることはやっていってほしい、との話でした。

 

次に代表の村上より、「前回の各自治体からの温対計画についての振り返り」について。前回10月の持続会で、自らの自治体が掲げる地球温暖化対策やエネ政策の目標値の発表の際、「気候温暖化やエネルギー対策が複数課にまたがっている、ガバナンスが難しい」「エネルギー使用量管理・統計の難しさ」「気候中立を目指すと掲げながら、そのために有効な具体的方針や合理的な説明のつく数値目標がない」「エネルギーの専門家が役場にいない」「地域再エネを増やしているのに、経済活動の外的影響の割合が大きく、CO2排出量が減らない」といった共通の声・課題がありました。これを受け、気候温暖化対策を進めるために、行政の縦割りをなんとかすることはできないかということで、専門的な知見から今回田中信一郎さんにレクチャーをお願いしています。

 

一社地域政策デザインオフィス代表理事の田中信一郎氏の「行政のタテ割りとヨコ割りを内部から突破する」では、行政など日本の組織によくありがちな、タテ割りの例や弊害の具体例、発生原因の具体例を挙げつつ、目の前には「人口減少」「低成長」「環境危機」といった、逃れられない厳しい現実が目の前に迫っているため、タテ割りの弊害を放置する「余裕」はない!ことの認識の共有が行われました。これからの人口減少の時代は、人口増加期に成長で解決できていた課題が、顕在化すると同時に、人口増加を前提とした社会システムと現実のかい離=人口減少に伴う課題が噴出してきます。

 

人口減少時代の自治体の役割は、減少していく行政資源で、増加していく前例のない課題を解決する、というこれまでに前例のない難しいことをやっていかなくてはなりません。とはいえ、「行政のタテ割りを打破するぞ」と、組織を統合したり新設したり、首長の直轄にしたり調整役を任命したり、会議をしたり、業務仕分けをしても、実は根本解決にはならず、新たな問題を生むケースがほとんどです。ですので、「タテ割り打破」のためには、タテ割りはあるものとしてあきらめて、タテ割りを正確に理解・活用して、幹部に「ヨコ業務」をやってもらいましょう。このレクチャーでは、そのために必要な具体的な方法論や参考図書が紹介されました。

 

 

次に、持続会会員自治体の北海道下川町、ニセコ町、鳥取県北栄町からの地球温暖化対策、エネルギー対策の事例が共有されました。これまで、環境モデル都市、環境未来都市、SDGs未来都市および自治体SDGsモデル事業に選定されてきた下川町からは、これまでの「一の橋集住化プロジェクト、省エネ効率化事業」「森林バイオマス事業」「SDGsの取り組み」について紹介がありました。

 

同じく環境モデル都市、SDGs未来都市および自治体SDGsモデル事業に選定されているニセコ町からは、2018年の選定時に核事業に据えたNISEKO生活・モデル地区事業、「SDGsモデル街区の開発」の進捗について、また「第2次ニセコ町環境モデル都市アクションプラン」に基づく3つの条例についての説明でした。世界水準の高断熱・高気密の住宅地群街区を作るこの開発事業については、クラブヴォーバンも深く関わっています。

 

また、老朽化した公共施設を2町の対等合併により多く抱える鳥取県北栄町からは、「公共施設の将来のあり方検討」「断熱DIYワークショップ」などの事業について、共有されました。こちらについても、クラブヴォーバン関連団体の一社エネルギーパス協会が支援をしています。

その後、会員の自治体、オブザーバーの環境省や経産省、大学教授や研究者の方などからも、活発な意見や質疑がありました。この持続会が、ぜひ会員自治体さん同士で、わからないことは相談したり、真似できるところは取り入れたりし合って、次なる具体的な取り組みにつなげていくヒントや機会になればと思っています。次回の持続会では、今回発表していない自治体さんからも、積極的な取り組みの発表を期待しています。

 

2020年

11月

25日

10月21日「第12回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

前回は、各自治体内における、公共施設別の、電気・ガス・灯油・ガソリン等エネルギー使用量の「kWh=¥」への単位統一、㎡あたり、月あたり、利用者一人あたりのエネルギー使用量の見える化調査について、発表を行いました。それを受け今回は、村上によるEUおよびの気候対策の最新状況の共有を行い、会員各自治体における気候温暖化対策目標とその進捗/達成状況について発表をしていただき、悩みの共有と議論を行う場としました。また、温暖化対策計画の見直しなどの際に、政策手法の6類型を意識し、何かから何まで欲張るのではなく、想定できる権限の範囲内で、期間中に、有効に実行できる仕様に修正してゆくようインプットがありました。環境省・経産省やその他エネルギーの専門家の方々からも、貴重なご意見やアドバイスをいただきました。

 

まずは代表理事の早田よりご挨拶。代表の村上とクラブヴォーバンを始めて12年、ニセコ町さんからの委託事業を受けて3年目、クラブヴォーバンはコンサル会社からついに事業者になり、またニセコ町と地元企業さんとクラブヴォーバンの三者で「株式会社ニセコまち」まちづくり会社を7月に設立することになったご報告でした。気候非常事態宣言を表明する自治体さんも増えてきています。そして早田がドイツに学び、「日本で高性能の家を普及したい」との思いで創業した(株)WELLNEST HOMEが、11月末に開催される「日経SDGsフォーラム冬の陣」に、SDGs企業の4社のベンチャー企業の、パネルディスカッションのトップバッターとして登壇することになったとの報告がありました。

 

次に代表村上より、「気候非常事態宣言、気候中立と 自治体に期待されている取り組み」について。最近は数多くの自治体が「気候非常事態宣言」を出した、あるいは出す準備を始めています。2050年気候中立、つまりCO2排出量をゼロにするという目標を、国に先駆けて掲げる自治体さんも出てきています。今日はみなさんに各自治体の温暖化対策の目標を発表し議論を進めていただきます。みなさんの自治体のHPの温暖化対策を見ましたが、残念ながら計画の半分くらいはダメな施策(笑)。ぜひ意味のある計画にしてほしいと思います。

 

環境省のCOOL CHOICE事業は、やって意味がないということはないですが、申し訳ないがこのまま進めても残念ながらCO2ゼロにはなりません。というのは、2020年の世界各国におけるコロナ禍で、強制や自粛的なロックダウンにより、各国の経済は推計GDP▲5~25%。多くの人が失業したり、大きな工場などが止まったりしたにも関らず、ドイツの電力消費量は上半期で前年比▲5.7%。化石燃料由来のCO2排出量も▲5%。日本の今年の上半期の電力消費量はわずか▲3.6%でした。COOL CHOICE事業や皆さん市民や公共・企業などの「行動変容」の呼びかけで期待できる最大限のCO2排出量は、どんなに頑張っても最大▲5%程度と予測されます。

 

2050年にゼロカーボン・気候中立を目指すならば、従来の「経済 VS. 環境」ではもう限界です。「経済 = 環境」つまり、経済活動が豊かになり、同時にエネ消費量を低減させていくためには、「システムや制度の大転換」が必要です。それは市民による 政治/投票行動と消費(投票/投資)行動 によってのみ達成されます。コロナ影響下においても、今年9月25日、世界170か国3000都市、140万人以上の若者が、気候中立のFriday for Futureデモに参加しました。ドイツでも450か所、20万人が参加(オンライン参加者はもっと)。日本は4千人、ほぼ報道もされていません。

 

ちなみにドイツでは国として2050年に気候中立をすでに謳っていますが、気温を2℃/1.5℃下げる目標値には足りないため、 2035~40年に気候中立を目指すことを、気候危機宣言、FFF(Friday for Future)の活動としています。ドイツで2019年12月、連邦衆議院で決議された《気候保護法》では、1990年を基準年として、2022年に40%弱削減、2030年に55%以上削減が明記されており、ドイツの連邦機関は2030年までに気候中立が義務です。そのために、ドイツは2020年7月、連邦衆議院で《脱石炭法》を可決し、何年までに、何GWの石炭を削減と数値目標を具体的に掲げ、そのために補助金なども投入を予定しています。同じく7月に《建物エネルギー法》も可決、これまでの「省エネ政令」「再エネ熱法」を統合し、2021年以降のCO2税やニアリーゼロエネ新築義務化に対応し、国を挙げてCO2削減に臨む姿勢です。

 

また、コロナ禍において、失業者が増え、経済政策としてEUやドイツで、セクターカップリングなどエネルギー分野に数兆~数十兆円のお金をつぎ込む予定です。これは、今抱える借金は将来の人たちが返すものだから、将来の人たちにメリットがある経済政策を取ろう、ということ。EUの委員長やドイツの首相など、女性ならではの発想です。

 

1997年の京都議定書以降も、CO2排出量を削減するために「行動変容を促す」ことは皆さんの自治体でもこれまでさんざんやって来られたはずです。オブザーバーの田中信一郎さんが常々話されていますが、公共政策とは、 社会(地域)の「問題」を「改善」する取組/人々(企業)の「意識」を変化(維持)させる取組 ではなく、社会(地域)の「課題」を「解決」する取組 / 人々(企業)の「行動(選択)」を変化(維持)させる取組 であるべきです。現在の日本の国の目標や対策は物足りないので、この持続会に参加されている自治体のみなさんは、より高い目標を立て、実行力のある対策を立て、気候対策の計画を策定していってください。というインプットでした。

 

また、持続会の自治体会員の下川町・ニセコ町・二戸市・葛巻町・雫石町・横瀬町・小鹿野町・北栄町から、自らの自治体が掲げる地球温暖化対策やエネルギー政策と目標値の発表と、悩みの共有があり、オブザーバーやCV理事からのアドバイスの時間がありました。聞こえてきたのは、

・気候温暖化やエネルギー対策が複数課にまたがっている、ガバナンスが難しい

・エネルギー使用量管理・統計の難しさ

・気候中立を目指すと掲げながら、そのために有効な具体的方針や合理的な説明のつく数値目標がない

・エネルギーの専門家が役場にいない

・地域再エネを増やしているのに、経済活動の外的影響の割合が大きく、町全体のCO2排出量が減らない

といった声で、自治体間で、各種の専門家も交えてディスカッションしました。

 

クラブヴォーバンでは引き続き、2050年気候中立・ゼロカーボンを目指していく自治体のため、アドバイスやサポートを続けていきます。

 

2020年

3月

09日

1月23日「第11回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

持続会を設立して5年。会員自治体の多くが今、老朽化した、あるいは廃止になった庁舎や学校、福祉センター等の公共建築の更新や再活用、今後の在り方等について悩まれています。人口減少問題が顕在化していく過程において、自治体の将来の「負の遺産」ではなく、将来の「資産」となるべき「公共建築の更新の考え方」について、これまで持続会では議論をしてきました。

 

今回の会議では、施設の立地や建物の性能、メンテナンス等の維持管理等について、公共から離れて、民間が(マンションなどの)不動産をどのように運用しているのかについて、学ぶ機会としました。また、前回の宿題であった、各自治体内における、公共施設別の、電気・ガス・灯油・ガソリン等エネルギー使用量の「kWh=¥」への単位統一、㎡あたり、月あたり、利用者一人あたりのエネルギー使用量の見える化調査について、発表を行いました。またそれを行うにあたっての困難等を共有し、そのデータを活かした各自治体での今後の展開について、議論を行いました。

 

① 民間不動産(マンション)の長期修繕計画と建物の寿命、更新について(大西 倫加:(株)さくら事務所 代表取締役社長)

② 民間不動産の経年変化による価値の決め方と建物の寿命について(今泉 太爾:(株)明和地所 代表取締役)

③ システムズ・エンジニアリングによる課題整理とアプローチ(陶山 祐司:(株)至真庵 代表取締役)

④ 気候危機の時代の地域からの挑戦―「世界首長誓約/日本」(杉山 範子:名古屋大学 大学院環境学研究科 附属持続的共発展教育研究センター 特任准教授)

⑤ 公共インフラにおけるエネルギー消費量の集計と見える化の取組について(自治体会員、村上 敦:(一社)クラブヴォーバン代表) 

まず、代表理事早田より挨拶。庁舎など公共建築を建築すると、少なくともこの後50年や70年は使っていくもの。小規模自治体さんにおいては、おそらく「最後の新築」になると思われるので、更新を計画されている自治体さんでは、永続的に利用できる建物を建ててください。また、一昨年からニセコ町に年に6~8回くらい訪れ、ニセコ町の新庁舎やまちづくりに、楽しく関わらせてもらっている。ぜひまた皆さんに発表できるタイミングが来たらお伝えします、とのことでした。

最初に(株)さくら事務所代表取締役社長の大西氏より、「民間不動産(マンション)の長期修繕計画と建物の寿命、更新について」 。さくら事務所は、不動産コンサルタントの長嶋修が1999年に設立した、おそらく業界で初めてと言われている、不動産の売買に関わらず中立的な立場でアドバイスをする会社です。この10年でめざましく相談が伸びているのが、建物とその資産の維持管理を行う分譲マンションの管理組合の人たち向けのコンサルティングです。中古マンションを買うとき、買主は「駅からの距離」「部屋の状態」「相場より割安か」ということで買うことが多いが、「管理組合がどういう状況か」ということが非常に大事。「管理会社に全てお任せ」状態の管理組合は、要注意。さくら事務所では、管理の状態がいい中古マンションだけを選別して、顧客に紹介しています。人口減少で空き家率も高くなる中で、マンションを建て替えられるのは、立地など好条件の揃ったごくごく一部の物件。ほとんどの物件は、買主がそこで、できるだけすみやかに、寿命まで長持ちさせて住まうことになります。これから数十年、そのマンションに住み続けるための、長期修繕計画や修繕積立金の注意すべき考え方やポイントについて、レクチャーをいただきました。

 

次に、(株)明和地所代表取締役でクラブヴォーバン理事の今泉氏より、「民間不動産の経年変化による価値の決め方と建物の寿命について」 。日本の住宅の問題は、住宅ストックの半数以上が戸建て、次に民間賃貸が40%です。日本は、賃貸に占める公的割合がたった16%と諸外国に比べ圧倒的に低く(EUだと公的割合が約半分)、近年世帯主の年収が500万円以下、ここ10年では300万円以下、という世帯が圧倒的に増えたのに、公的な賃貸住宅がないので、「戸建てのローコスト住宅を地価の安い郊外に建てる」「買えない人は民間の賃貸を借りる」という流れができ、都市のスプロール化(道路・上下水道などのインフラ維持費の増加)と空き家問題の悪循環が起こっています。本来は、安い土地に安い住宅が建つのを、行政がきちんと阻止していかなくてはなりません。また、駅近など立地がいい物件は建て直しをしても収益が見込まれるので、融資も受けられ建て直しできるが、ほとんどのストックは建て直しができません。建て替えや修繕資金が捻出できない物件は「廃墟」となり、その後始末が行政に降りかかってくる可能性が大きいので、自治体におかれては、空き家問題への早めの対処と、また公共で所有している建物全てにおいて、それぞれ現況であと何年使うかを決め、なるべく早く修繕の長期計画を立てて予算を確保すること。何年使うかを決め、最後にはその後は建て替えするのか、売却するのか、の出口戦略も決めて、建物利用計画と資金計画の策定をすみやかに行ってください、とのインプットでした。

 

次に、前回の経産省のエネルギー政策担当を経て、今はソーシャルビジネス立ち上げ支援を行いつつ、大学院博士課程でシステムデザイン・マネジメントを研究している(株)至真庵代表取締役の陶山氏より、「複雑巨大で多様な人が関わる“仕組み”をどう作るか~システムズ・エンジニアリング入門」 について。システムズ・エンジニアリング(SE)とは、「多数のステークホルダー(利害関係者)との連携でどのようなエコシステム(生態系)を形成していくかを考えるための、設計図の作り方」。あらゆる“つながり”の中で、各社の責任分解や全体の安全性・信頼性の担保をどのように考えるべきか、のツールです。SEの具体的な考え方は、「目的指向」。つまり、何を作るか?ではなく、なぜそれが求められているか?に注目します。そのために、求められる成果物に関する文脈・背景の理解が必要となります。SEの背景、考え方、手順などの概要の説明後、SEを実際に使って、「市町村の中で“廃校の再利用”について検討する」という例題についても紹介があり、皆さんの課題解決に活用してください、とのことでした。

 

次に、名古屋大学 大学院環境学研究科 附属持続的共発展教育研究センター 特任准教授の杉山氏より、「気候危機の時代の地域からの挑戦―『世界首長誓約/日本』」について。名古屋大学が今、欧州委員会から委託を受け、世界首長誓約の日本事務局を行っています。地球温暖化に起因するとみられるものも含め、各種の自然災害が頻発しており、レジリエント(強靭)な地域づくりが大きな課題です。そしていま日本のあらゆる「地域」では、世界のどの国も経験したことのないような高齢化、人口減少が進行しており、「地域創生」「持続可能な地域づくり」「地域循環共生圏づくり」が急務となっています。地球温暖化・気候変動に対処する国際的枠組みの「パリ協定」達成に向け、国だけでなく「地域から」の挑戦が求められています。その意味では、国の取組を待つのではなく、地域から、という熱気が加速しているようにCOP25に参加して感じましたが、日本に帰ってくるととても温度差があります。

世界首長誓約においては、専門知識が足りない、という自治体さんには、欧州委員会の事業からの予算を使って専門家を派遣することもできますし、人口規模の小さな自治体さんで、インベントリーを新たに作るのが大変、と思われている場合は、名古屋大学の事務局でサポートもしているので、新たな事務負担も少ないのを特徴としています。お問い合わせください、という紹介もありました。

 

最後に、クラブヴォーバン会員自治体より、「公共インフラにおけるエネルギー消費量の集計と見える化の取組について」ということで、自治体の公共建築物等の電気・ガス・灯油・ガソリン等エネルギー集計データと、担当者が集計にあたり「気づいたこと」「難しかったこと」「今後の活用予定」等の発表がありました。

 

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統括として代表の村上より、今は2020年、これから新築あるいは、大規模改修をしていく公共建築において、2040年や2050年にはゼロエネルギー建築というのは当たり前の世の中になっているでしょう。それを踏まえて、今から動いていかなければなりません。そのために、今回の課題の「公共建築等のエネルギー消費量集計」は役に立つはずです。単なる施設ごとのエネルギー消費量集計というだけではなく、kWhや金額への単位統一、「利用者数」「延べ床面積」という指標も用いて、施設の利用者1人当たりや1㎡あたりでの検討もしていただきました。例えば寒い時期に1人当たりのエネルギー消費量の多い施設を、その期間は締めるとか他の施設で総合的に運用するなどの代案も検討できるはずです。こうしたデータがあるという前提の上で、自治体内の公共建築を今後の2~3年でどうするかという方針を決めてしまわないといけません。あと5年もしたら民間から大量の空き家、空き施設、廃墟が出てきて、その対応に皆さんが追われるようになります。その前に公共建築には道筋をつけておくべきです。再来年度の予算組みの時期にあたる次回10月の持続会においては、会員自治体の皆さんからなんらかの取組みの発表があることを楽しみにしています。

 

2019年

11月

28日

10月16日「第10回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

人口減少や高齢化における持続可能な自治体のあり方として、これまで持続会で会員自治体に対して情報のインプット、及び議論してきた「域内経済付加価値の向上の見える化とその理解」の促進。来年度以降には更に会員自治体でこの取組みを加速させるため、以下プログラムとしました。

① 全国の地域新電力の最新状況や地域電力による域内経済付加価値向上(稲垣 憲治:京都大学大学院 地球環境学 プロジェクト研究員)

② 『熱海の奇跡』著者から熱海が活気をとりもどすまでのまちづくりの取組み(市来 広一郎:(株)machimori 代表取締役)

③ 地域課題解決のためにPFS(成果連動型支払い)/SIBを取り入れたスキームや事例紹介(陶山祐司:(株)至真庵 代表取締役)

④ 欧州で加速する「気候危機」の動き(村上敦:一社クラブヴォーバン代表)

⑤ ニセコ町から委託された公共施設のエネルギー消費量の見える化と対策案の紹介(村上、加藤逍太郎:SHTRKT一級建築士事務所)

 

最初に代表理事早田より挨拶。先の台風19号は甚大な浸水被害をもたらしたが、100年に一度と言われる規模の台風がここのところ毎年、関西や関東など本州に甚大な被害をもたらしている。原因は太平洋の海水の温度上昇。温暖化対策に早急に取り組む必要がある。「持続可能な家づくり」は、そもそもハザードマップの危険箇所には建てないことや、建物の表面積をできるだけ小さくすること。「建物のエネルギー性能を高める優先原則」は、『断熱>気密>日射コントロール>換気>通風>設備>再エネ熱>再エネ電気』の順である。今後80年くらい使う前提の公共建築更新において、再エネ設備は優先順位の最後とし、躯体性能の強化をまずは前提とすることで「穴あきバケツに水を注いではいけない」の原則を貫くことが肝要、などがインプットされました。

 

次に、文科省を経て現在は東京都庁環境局職員として再エネ普及策の企画や新電力の設立・運営などに従事、並行して取り組まれている京都大学大学院研究員の稲垣氏より、「地域新電力の最新状況とまちづくり事業における域内経済付加価値の向上」という研究成果について。平成30年4月閣議決定された環境基本計画において、自治体の環境政策は地域経済政策でもあることが重要で、その手段として地域新電力の推進が明記された。地域電力で「エネルギー地産地消」「地域活性化」「地域雇用増やす」「公共料金低減」「災害リスク対応強化」「温室効果ガス削減」などを目指すのであれば、外部にお任せだと地域にノウハウが残らず地域でお金も回らないので、やり方を間違えないことが大事。自治体新電力の真の意義は、誰もが使う電気によって ①地域内で資金が循環すること ②エネルギー関係のノウハウ蓄積により、省エネや地域に共生した再エネ再投資と繋がって、地域の低炭素化のプレイヤーとなれる可能性があること ③地域がノウハウを蓄積し、事業展開することで「地域の稼ぎ」が向上すること です。また、地域電力以外にも、‘70年代にイタリアで考案され、’90年代からイタリア各地に広がった「アルベルゴディフーゾ(分散型ホテル)」の事業モデルや公園などの公共資本を有効活用した地域マーケット等の地域の稼ぎを増やすための国内事例も共有されました。

 

『熱海の奇跡』著者で、12年前から「衰退した観光地」とも言われた熱海の街の活性化に取り組んできた、(株)machimori 代表取締役の市来氏より「熱海はどのようにして活気を取り戻したのか」について。熱海市(人口3万6千人)の宿泊客数は‘60年代年に530万人だったのが、2011年に246万人。’90年代後半には中心街の熱海銀座の3分の1が空き店舗となり、廃墟のような街並みとなってしまった。このとき感じたのは、外からのお金に依存していると一瞬で街は崩れてしまうということ。「だからこそ、地域に根付いた人・事業・お店をつくってゆく、地域に根付いた事業をやっていこう」と方向性が決まりました。2006年には、熱海市が「財政危機宣言」を出し、地元からの反発もあったが、これにより市民の意識が「行政に依存できない、自分たちで何とかしないと」と変化したきっかけとなりました。その後、地域資源を活かした多彩な体験交流型プログラムを一定期間に集中的に開催し、地域の人材・組織育成、新しいサービスの育成、地域のブランディングを行い、地域における新しい芽を育ててこられました。観光客はV字回復で2015年には307万人に増加するまでの、新しい熱海におけるmachimoriの取組についてお話をいただきました。

 

次に、経産省のエネルギー政策担当を経てベンチャー企業の立ち上げなどを支援してきた(株)至真庵代表取締役の陶山氏から、「政策効果を最大化させる先進的潮流:成果連動型支払い」 について。PFS= Pay for Success(成果連動型支払い)は、SIB=Social Impact Bondよりもう少し広い概念。経産省時代、社会の改革が難しいのは“構造的な”問題と感じていた。通常の行政サービスの民間委託・補助事業は、成果の有無にかかわらず活動にかかった経費を支払うのが普通。事業目的の達成や予算の適正な使用について、チェックはされるが、目的の達成については0か1かで判断されるため、事業の成果がきちんと問われることはない。しかしPFSでは、0/1指標ではなく、あらかじめ定めたアウトプット/アウトカムの達成度合いを第三者の事業者が評価し、その度合いに応じて報酬を支払う方式。少子化、高齢化、都市への人口流入、自然災害の多発化、コミュニティの希薄化、格差拡大など、行政だけでは対応できない複雑な課題が差し迫っている中、民間事業者の力をうまく活用する際のひとつの切り口となる。これを活用し一定の成果を上げたイギリスでの再犯防止や神戸市での健康増進・医療費削減の事例が共有されました。適切な評価指標や成果目標の設定など、まだまだ課題は多いが、政府中心に積極的な検討が進められており、医療・健康、介護、再犯防止と言う分野を中心に今後も世界・国内において進展が見込まれるとのことです。

 

代表の村上からは、「地球温暖化の進展、気候危機とFridays For Future」 について。欧州では、「気候温暖化」ではなく「気候危機=Climate Crisis」という言葉が日常的に使われるようになった。IPCC第5次評価報告書は、第4次報告書よりさらに踏み込んだ内容。日本の年平均気温は1898年~2014年で、100年あたり約1.15℃の割合で上昇している。熱エネルギーは、海に蓄積される。日本近海の海面水温上昇率は、世界全体の上昇率よりかなり大きく、毎年のように、これまで想定できなかった規模で日本に豪雨があるというのは当然のこと。現状での気候難民は世界で約2~3千万人だが、現状の温暖化の進展が2050年まで続いてしてしまうと、その数は2~7億人になることが予測されている。欧州ではマスコミでも、教育現場でも、こうした話がごく普通に俎上に上り、10代の若者にも意識共有されている。その象徴が2018年に国会前でデモを始めたスウェーデンのグレタさんから始まった“Fridays For Future”。毎週金曜日に学校をスト&デモを行う動きがSNSを媒体として西ヨーロッパから世界に拡散。2019年3月には世界120万超の若者が、さらに2019年5月欧州議会選挙前に行われた世界規模の呼びかけには、世界1700都市180万以上の若者が参加。この動きに刺激され、欧州議会選挙では『緑の党』が大躍進、右派ポピュリズム政党の進展を抑制し、ドイツでは第二党の座に。ドイツではこの動きに刺激を受け「気候保護法」が閣議決定され、年内に成立予定、来年春に施行予定。エネルギー戦略で明記されていたドイツの2050年までの段階的な削減目標をさらにアグレッシブな目標に更新し、2050年に‘90年比CO2削減量を100%にするために、2030年までにはマイナス55%の目標を死守すると決め、それに向け各界が動いている、との話でした。

 

最後に、「ニセコ町から委託された公共施設のエネルギー消費量の見える化と対策案」の紹介。環境モデル都市ニセコ町が毎年集計していたエネルギー消費量データを使い、(一社)日本エネルギーパス協会が昨年度委託を受け、調査分析し、対策の提案をした事例がSHTRKT一級建築士事務所の加藤氏より紹介されました。また、参加各自治体への次回持続会までの宿題、縦割りに管理されている公共施設における電力、化石エネ、再エネ、自動車ガソリンのエネルギー消費量の集計方法について説明。老朽化した公共施設において、改築した方がいいのか建て替えをした方がいいのかを検討するためにも、誰かがどこかのタイミングで、きちんと施設ごとのエネルギー消費量を管理・把握しておく必要があり、今後その集計を、統計を使い問題・課題を発見し、そこに対しどんな手を付けるかということを提案していく予定です。

 

 

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エネルギー消費量の「見える化」を自治体の職員が毎年やり始めると、毎年チェックをしてアクションを決めてと、PDCAサイクル的なことができるようになってきます。引き続きクラブヴォーバンとして、「見える化」や、持続可能でCO2排出量が少ない公共施設の更新のあり方について、サポートを行っていきます。

2019年

11月

19日

10月17,18日「持続可能な発展を目指す自治体会議 第4回自治体相互視察 in 横瀬町・小鹿野町」を開催しました

第4回目となる自治体相互視察は、クラブヴォーバンの自治体正会員の埼玉県の横瀬町・小鹿野町を訪問しました。直前の台風19号の影響で、浸水や土砂災害などの被害もあり両町での開催が危ぶまれましたが、両町のご協力の下、下川町・ニセコ町・葛巻町・雫石町・北栄町の担当の方々やクラブヴォーバンの理事、コアメンバーなど、30人を超える参加となりました。

両町は、埼玉県という人口規模が大きく首都圏と直結する県域の中で、さいたまー熊谷―高崎ラインとは山で隔てられ、ポツンと隔離された地理的状況に置かれている秩父地域に位置します。その中でも中核の秩父市(人口6万人)との合併協議では、中心地への吸収をよしとせず、2004年に町民が自らの判断で独自の小規模でも輝ける地方自治体となることを選択したのが、横瀬町(8,500人)、小鹿野町(11,500人)です。他の日本の小規模自治体と同様に高齢化、人口減少の波は押し寄せていますが、新しい試みを興そうという機運は逆に高まっている地域でもあります。

 

1日目、“緑と風が奏でる こころ和むまち”を観光フレーズとする横瀬町の「道の駅果樹園あしがくぼ」で集合し、地元産のお蕎麦や紅茶ソフトクリームなどをいただき、横瀬町の富田町長より歓迎の挨拶を受けました。その後、今年度基本設計を実施し、改築する予定の横瀬小学校へ。今でも現役で1学年が使用しているという、昔のままの木枠の窓や扉が残り趣のある昭和8年築の木造校舎や、今後改築予定の昭和30・40年代に建てられた鉄筋コンクリート造の校舎などを視察し、改築のコンセプトについて伺いました。改築では、高断熱屋根や外断熱、Low-Eペアガラス等を施し、高効率機器や再エネの導入、内装に地元産木材を使い、環境に配慮した建築にしたいとのことでした。

 

次に、秩父圏域(秩父市・横瀬町・皆野町・長瀞町・小鹿野町)の一般廃棄物の可燃ごみを処理する施設「秩父クリーンセンター」を訪問。H9年に竣工され、H27年には熱エネルギーを有効利用するため、新たに出力1400kWの蒸気タービン発電設備を設置。この発電により、施設におけるすべての電力を供給し、余剰電力は秩父市が出資する地域新電力会社「秩父新電力株式会社」と東京電力に売電されています。施設の概要や、上記1市4町による「秩父広域市町村圏組合」の概要について説明を受けました。

 

秩父新電力株式会社と秩父広域市町村圏組合(埼玉県)は2018年11月、秩父地域内の再生可能エネルギーを活用した「エネルギーの地産地消」、資金循環等による「地域経済の活性化」の実現に向け、その取組内容を規定した「地域新電力事業に関する協定」を締結。組合を形成する1市4町の枠組みでは総務省が推進する「定住自立圏構想」にも取り組み、秩父広域市町村圏組合においては、ごみ処理や火葬場、福祉、水道などについて広域で事業を行っています。こうした枠組みの中で、電源調達から電力供給まで目指すのは全国初のケースとのことです。

 

また、2018年4月設立された「秩父新電力株式会社」の滝澤隆志氏より、“ちちぶ地域における持続可能なまちづくりに向けた挑戦~地域低炭素化と地方創生を実現する「新しい3セク」とは?~”と題し、①エネルギーの地産地消 ②地域経済の活性化 ③ちちぶ地域の課題解決、を理念とする同社の取組を伺いました。同社では、秩父クリーンセンターよりごみ焼却時に発電される電力を購入し、他に卒FITの太陽光発電なども合わせ、地域内に売電しています。「秩父新電力株式会社」の電気の供給先は、秩父市の公共施設や広域組合の公共施設が主であり、これらの施設ではCO2排出量を約22%削減見込みとのこと。これに先立ち、2017年に公共施設毎の電気使用量を見える化し、採算ラインで電力供給先を決めていったそうです。今後は、ちちぶ地域と関わりのある県外の自治体などとも連携して、事業を拡大する予定にしています。

 

その後は、小鹿野町の両神地区にある温泉宿泊施設「国民宿舎 両神荘」に移動。懇親会では、横瀬町の井上副町長より、2年ほど前より同町で取り組まれている、民間から事業を募集し自治体が支援する、横瀬町の官民連携プラットフォーム「よこらぼ」の取組についての報告や、数年前に始まり去年は1~2月の期間中で10万人を超える来場者でにぎわうようになった「あしがくぼの氷柱」イベントなどについての紹介がありました。この氷柱イベントのアイデアやノウハウは、元は小鹿野町のもので、横瀬町は小鹿野町からノウハウを教わったとのこと。近い地域で観光客を奪い合ったり競い合ったりするのではなく、古くからのお祭りなどもあり、昔から秩父地域では近隣の町同士で助け合い、盛り上げてきた長い歴史があるとの話がとても印象的でした。

 

2日目は、“花と歌舞伎と名水のまち”小鹿野町内の廃校休眠施設、旧三田川中学校(耐震工事済)を視察。現在はTVやCMなどの撮影で貸与する収入が少しあるものの、今後の活用方法をどうするか検討中で、スポーツ合宿施設として再生する案もあるとのことでした。町の中心地に近い場所で築約50年になる町営団地も隣接しており、町営住宅として、あるいは都内からの老人施設等の転用などのアイデアも参加者から出ましたが、「施設の再活用を検討する際の考え方として、まずはニーズを拾い上げ、“顧客”を確保してから、取り掛かることが、まず何より重要だ」との話が参加者から出ました。

 

次に、建て替え予定の小鹿野町庁舎を視察。今の庁舎の改修も考えたが、コンクリートの中性化などの問題もあり断念。ただし立地が良いため、現敷地内に新庁舎を新たに建築する予定で、環境に配慮した建築にしたいとのこと。夏暑く冬寒い地域のため、断熱や気密の考えも取り入れていきたいとのことで、今後、有識者による審査、プロポーザルという流れとなります。

 

庁舎内の会議室にて、小鹿野町の森町長のご挨拶をいただき、小鹿野町職員から小鹿野町の魅力が紹介されました。町民歌舞伎の伝統や、平成の名水百選にも選ばれた地域の名水“毘沙門水”、氷柱やロッククライミングやボルダリングの聖地としての新しい観光資源についての話がありました。

 

その後、(一社)地域政策デザインオフィス田中信一郎氏による職員研修「公共施設からはじめる“地域循環共生圏”づくり」について。冬に家の中がとても寒い日本において、「溺死」による死者が夏に少なく冬に多いこと、同じ傾向の心疾患や脳血管疾患も含め、冬季死亡増加率の地域間格差が、家の中が温かい北海道に置いて一番少なく、温暖であるはずの栃木や茨城ほか、みかんの産地の県で多いこと、などの説明がありました。その原因は、ヒートショックであり、家の「断熱・気密」の性能が低いこと。

 

まず公共施設から、高性能かつ安全で、床面積当たりの稼働率が高く、長寿命な建物にしていく必要があること、照明や空調や太陽光パネルなどの設備の耐用年数は数年から20年ほどものが多く、トータルコストとしては、「通常の断熱・気密+大規模の高効率設備」の建物ではなく、「高断熱・高気密+少規模の高効率設備」の方が安く快適であること、建物のエネルギー性能を高める優先原則は、『断熱>気密>日射コントロール>換気>通風>設備>再エネ熱>再エネ電気』の順であるべきことなどが説明されました。

 

参加したクラブヴォーバン会員自治体では、公共施設の統廃合や再活用について悩んでいる自治体の方が多く、引き続き公共施設の更新のあり方や考え方について、サポートを続けていきたいと思います。

 

2019年

3月

01日

1月24日「第9回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

これまでの持続会で、「持続可能なまちづくり」のために、様々な角度からのインプットを行ってきましたが、公共建築を含めた省エネ建築に関連する実装を予定している正会員自治体が多いため、この分野を再度ブラッシュアップすること、また今回はソーシャルファイナンス太陽光発電の日本・世界の最新動向自治体新電力などのインプットを行いました。

また、担当者が相互に自身の自治体における過去の公共施設の更新における現状、悩み等の状況を率直に報告し合い、他の正会員と議論しました。さらに、新規で埼玉県小鹿野町から正会員自治体として加入いただくこととなり、町長より町の概要やこの持続会の場を通して解決していきたい課題等について、発表いただきました。  

まずは、震災の時に経産省でエネルギー政策立案に従事し、のちに退職され、ベンチャーキャピタルの立ち上げ運用にコンサルタントとして関わり、現在は地方創生や社会的インパクト投資推進などに携わっている(株)ウィルフォワードの陶山裕司氏から、「持続可能な暮らしに向けて~新たな金融の潮流:ソーシャル・ファイナンス」について。この数年で急激に増えているESG投資や社会的インパクト投資、SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)などのソーシャルファイナンスについて、従来の金融との違いや今注目されている背景、具体的な事例についての解説がありました。

 

次に、独立行政法人産業技術総合研究所櫻井啓一郎氏より「今後の太陽光発電の世界、日本での動向」について。太陽光発電など再エネを進めるポイントは以下の3つと指摘がありました。①将来コストが読めない化石燃料(石油・石炭・ガス)の価格高騰リスク、②地球温暖化(科学的・国際政治的に対策は不可避)、③経済・産業の環境変化(再エネ、特に太陽光の劇的コスト低下など。新しい市場創出)。化石燃料は高騰しており、日本は近年、年に23~28兆円も燃料の輸入をしています。世界の新設発電所の主流はすでに再エネにシフトしています。国際エネルギー機関IEAでも、太陽光や風力のような変動性電源を大量(25~40%)に使うことは、長期的コストを大きく増やさず可能である、と実績に基づいたレポートを出しています。ただし、日本の太陽光発電は高い(事業者毎におけるコストのばらつきが大きい)ため、太陽光発電システムを安く供給できるトップクラスの技術を普及させることが急務という指摘がありました。

 

次に、元下川町職員で今は全国のいくつかの自治体の新電力立ち上げに携わっている、一社集落自立化支援センター仲埜公平氏より「地域循環共生圏と地域電力」について。地域電力においては、各地域がその特性や資源を活かし、自立・分散型の社会を形成し、地域資源の価値を循環させる「地域環境共生圏」の考え方が大切です。地域が投資する地域新電力で売電し、利益を生み出し、その利益で地域の事業や公益的サービスに再投資する流れができると素晴らしい。市民の電気代支払額を(世帯数 × 電気代 1 万円/月 × 12 ヶ月)で計算すると、2000世帯の自治体で年に2億4千万円。さらに、公共施設の電気代は、自治体によっていろいろですが、いくつかの自治体を調べると住民一人あたり6~8千円もの負担があります。この分を地域新電力で賄うことが当面の目標とされるのでは、との話でした。

 

そして今回は自治体会員間で悩みや現状を共有し、今後の各自の自治体における参考にすることを目的に、「自治体における公共インフラとその更新について、悩み共有と議論」のテーマで時間を設けました。会員各自治体から、「老朽化した庁舎や小学校など公共施設の建て替えや改修」「将来の人口減少を見据えた施設の統合や複合・集約化」「それらを具体的に実行に移していくためのロードマップやスケジュールの作成や住民への説明」「公共施設管理に関わる部署間での情報共有の難しさ」「公共建築改修時に工事予算を抑えたために却って追加の工事費用が掛かってしまった事例」など、悩みや事例が共有され、それに対して活発な意見が交わされました。

その後、㈱日本エネルギー機関代表中谷哲郎氏より、「長野県 建築物の省エネ性能簡易診断ツール」について。長野県ではH26年度から「建築物環境エネルギー性能検討制度/自然エネルギー導入検討制度」が導入され、長野県で新築住宅を建てるときは、建物エネルギー性能を診断の上、検討することが義務化され、省エネ建築が推進されています。中谷が理事を務める一社日本エネルギーパス協会では今年度長野県から「簡易版エネルギーパス」のツール作成の委託事業を受けました。従来の建物エネルギー性能を診断する「エネルギーパス」ツールでは結果の精度は高いものの、入力に数時間かかるため、簡易版では10分ほどで入力できるように簡素化し、簡単な診断レポートにおいて性能ランク(6段階)、Ua値、年間の光熱費などが、概算値として表示することを可能としています。これによって、地域の工務店は新築だけではなく、既存住宅の改修案を提案・施工できるようになるため、今後長野県の中古住宅の性能の底上げにもつながる可能性もある、との話でした。

 

最後に、クラブヴォーバン代表理事の早田宏徳より、「公共建築の省エネ化提案 ニセコ町での取組事例紹介」の発表がありました。ニセコ町で今年度に取り組んだ様々なプロジェクトを紹介した後、とりわけ移設・新築を計画している新庁舎については、改善提案を行い、役場、設計事務所と議論を続けたことで、最終的な建築仕様として、UA値で0.18 W/㎡・Kという高性能な建物躯体が実現されることになった経緯と結果、影響についての紹介がありました。新築でも、既存の改修でも、公共建築物(とりわけ庁舎や学校など)の省エネ化によって、地域全体の省エネへの気運を高めることができ、また対策の分野も「運用方法」「外皮性能の強化」「設備の改善」など多数の選択肢が可能なので、町のシンボルとなるような省エネ建築物を作り、各自治体の省エネ化が進むことを願っている、と総括されました。

 

また、今回は埼玉県小鹿野町から森町長が町の概要や今抱えている課題についての説明、そして持続会に入ってぜひ町の課題をみなさんの話も参考にしながら解決していきたい、との決意を話され、他の会員の了解とともに、来年度より自治体正会員として活動されることになりました。これで持続会の自治体正会員は、下川町、ニセコ町、二戸市、葛巻町、雫石町、横瀬町、北栄町、小国町(北から順)に続き、小鹿野町で9自治体となります。持続会では設立当初から、人口小規模で、かつ持続可能な発展を目指すために熱心な取り組みを行うことを決めている、約10自治体で、密な交流活動を行うことが決められています。

2018年

12月

17日

10月25,26日「持続可能な発展を目指す自治体会議 第3回自治体相互視察 in 北栄町」を開催しました

2018年10月25日(木)~26日(金)、第3回目となる自治体相互視察は、クラブヴォーバンの自治体正会員の鳥取県・北栄町に今回はホストとなっていただき、下川町・ニセコ町・二戸市・葛巻町・雫石町・横瀬町、そして北栄町の担当の方やクラブヴォーバンの理事やコアメンバーなど、約25人の参加となりました。

 

北栄町は「風車・名探偵コナン・農業」の人口約1万5千人の鳥取県の真ん中に位置する町。25日正午過ぎに、コナン館すぐ隣の道の駅大栄に集合しランチバイキングの後、北栄町役場で町の概要や課題についての説明を受け、コナンのマイクロバスで視察場所へ。前日までお天気が悪かったそうですが、この日は快晴! 

 

最初の視察場所は、(株)エナテクスソーラーの太陽光発電所。町は、廃校跡地等の町有地を有効活用しつつ自然エネルギーを活かした産業復興を進めるために、FITを利用した太陽光発電事業を推進してきました。この発電所は町が公募をかけH24年に完成(出力750kW)。20年間町が町営地を貸与し、地元の若者も含め、雇用を生み出しています。また、地元の鳥取大学の自然エネルギーの実験や研究をする場としても、協力もしています。

 

次に同じくエナテクスグループの、全国で最大規模のソーラーシェアリング型(農業と太陽光発電を並立)太陽光発電所を視察(出力1,000kW)。太陽光パネルの下では「常緑キリンソウ」の苗や原木椎茸が栽培されていました。北栄町でも、農家の高齢化と後継者問題が深刻。農地の活用と収益化の課題解決のため、農地を農地として活用しながらも、太陽光発電の売電で収入を増やす事業として、H25年にスタートしました。特許を取っている常緑キリンソウは、乾燥にも雨にも強く、緑化のための植物として全国から注目されています。

 次に訪れたのは、(株)北栄ドリーム農場。北栄町では、新たな産物の開発、新規就農者の拡大を目指し、イチゴの産地化を進める農業法人として、H28年、町とJA鳥取中央が出資して設立。現在、約70aの圃場で「べにほっぺ」などのイチゴの栽培・育苗を行い、市場や直売所のほか、全国展開している大手洋菓子メーカーにも出荷。元々民間の遊休農地だった場所を活用、高設ベンチ式にしているため、腰をかがめる作業をなくすことで、作業者の労働環境と作業効率の向上につなげています。

次は、(合)チップリサイクル森の四季へ。この木材チップ工場は、元々学校教員をやっていた先生がリタイアしてH28年に設立。町の庭木や果樹園の剪定枝、街路樹、公園などから排出される伐採樹木を受け入れ、粉砕しチップ化しています(1日受け入れ2~10t)。石や釘などが混ざっていると粉砕機の故障の原因となるため、建築廃材などは受け入れません。製造されたチップは現在、必要とする町民の方へ無料で配布バイオマス燃料のほか、土壌改良剤などに利用されています。将来的には、町のバイオマスのチップの拠点となっていきたいとのことです。

最後の視察先は、H17年に完成した町の「顔」でもある町営の北条砂丘風力発電所(1,500kWの風車9基)。市町村直営の風力発電施設では日本最大規模です。日本海沿岸に並び経つ風車たちは、夕日を浴びてとても雄大でした。H29年度の売電電力量は2万MWh。中国電力への売電収益4.6億円のうち、メンテナンスや修理費、借金の返済などを拠出、残った収益の一部を町全体へ還元するため、H25年度から毎年度5千万円ずつ一般会計へ繰り出し、「風のまちづくり事業」を展開しています。

そして夜には町内のお店「610キッチン」を借り切って懇親会。正会員自治体でワイン製造を町として応援している葛巻町と北栄町からワインをご提供いただきました。もともと工場だったところを、とてもお洒落にリノベされている素敵なお店でした。

さて、2日目の研修は、クラブヴォーバンのPTメンバー(一社)地域政策デザインオフィス代表の田中信一郎氏による「これからの自治体職員に求められる能力」。

これまでの政策は、人口が増加し需要が供給より多い、ということを前提に作られてきた。しかし、人口減少、需要が減りモノが余る時代になった今、従来の政策の二大前提が逆転しているので、前例が通用しないどころか、前例を重んじると逆効果になりかねない時代となっている。眼前にある課題と考察から出発し、根拠と論理に基づいて解決策を組み立てる必要がある。その上での自治体職員のあるべき姿、一人ひとりの実力が求められる能力として、これからは、この持続会のようなネットワークを活かした、課題解決型の人材であることが大事であることが述べられ、自治体の課題解決の政策的な考え方として、6つの手法があることが、具体例とともに提示されました。

次に、代表の村上によるワークショップは、田中さんの講義の内容を踏まえた上で、今北栄町の課題となっている、町営の風力発電所の数年後に迫る更新について、いくつかのグループに分かれ、上記6つの手法を使ってアイデアを出しあい、発表をしました。

風力発電所に限らず、会員自治体それぞれに公共建築物なども含め、いろいろな公共施設の更新の時期を迎えています。限られた財政の中、どのような解決策が町民や市民にとってベストなのか。今後の持続会でも、引き続き議論・サポートしていきたいと思います。
 

 

2018年

12月

03日

10月18日「第8回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

クラブヴォーバン正会員8自治体のうち、北海道下川町・ニセコ町・熊本県小国町が今年度「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」(全国で10都市)に採択されたことを受け、そのモデル事業についての構想と進捗状況を、正会員と情報共有していただきました。

また、インプットについては、地域における高付加価値林業のあり方や、今後全国の自治体で大量に発生してくると思われる老朽化した公共建築において、改修や建て替え検討の際の高性能化のためのポイント住宅の温熱環境と人権についてなど、盛りだくさんの内容でした。

まずは地域政策デザインオフィス代表理事田中信一郎氏から、「公共建築、非住宅建築の高性能化のためのポイント」について。多くの自治体で「持続可能なまちづくり」に取り組もうと思うなら、まずは「公共施設の持続性の向上」に手を付けてほしい。これをやらないで、住民に対する意識向上の啓発をやっても本末転倒だ、との第一声。そして庁舎、教育(学校など)・福祉(保育園など)・衛生(ごみ処理施設など)施設、文化・スポーツ施設、公営住宅などの公共施設を持続可能にするには、立地・稼働・寿命・トータルコスト(イニシャル+ランニング)・パリ協定の視点が必要です。EUは2019年1月1日から、域内で建てる新築の公共施設はニアリ―ゼロエネビル、つまり、設備など使わなくても躯体だけでゼロエネルギーに近づける建物が義務化。建物のエネルギー性能を高める優先原則は、まずは断熱。次に、気密、日射コントロール、換気、通風、設備、再エネ熱、再エネ電気。この優先順位を、間違えないことが大事で、公共施設の新築・改修をオープンにして行い、地域の事業者などと研究会を構成し、公共施設を題材にして技術力を高めることが重要、との話でした。

 

次に、約40年林業に携わり、農水省や環境省などの委員などを歴任してきた速水林業代表・FSCジャパン副代表の速水亨氏から「速水林業の紹介と日本の林業における持続可能な将来像」について。速水林業は1790年からニ百数十年、紀伊半島の南部や尾鷲で林業をしており、自社保有森林1070haとトヨタ自動車所有の1700haの森林も管理。速水林業の森林経営理念について。一番大事なことは、まず地域住民に理解してもらえる経営をする、そして環境的に豊かで美しい森林を残すこと。また、森林経営は、人間がすべてで、いかに現場の職員をしっかり育てるかが、林業の一番の問題、とのことでした。そして長年にわたり適切な間伐を続けてきた結果、ヒノキの年輪が中から外までほぼ均一で価値の高いヒノキ材を生産できること、また大型の海外の機械や適切な森林作業場を導入した間伐の生産性の向上、FSC認証を取り入れることなど、速水林業のこれまでの特徴的な取り組みを紹介。また、来年4月から新しい法律ができ、これまでの森林所有権の上位に森林管理権を作り、これを市町村が持つことになるので、所有者がちゃんと管理しない場合に市町村が入り、業者に森林管理をさせることができるようになる。これは市町村にとってはチャンスなので、市町村の人たちが勉強して、自分たちの地域の森林をどう作っていくかということから、今ベストの管理を市民の人たちと一緒に考えてやっていくのがいいと思う、とのことでした。

次に、関東弁護士会連合会環境保全委員会委員も務める弁護士岩崎真弓氏より、「住宅の(温熱)環境と人権」について。これまで、里山やダム、311後の脱原発や再エネ普及など環境に関わる問題など勉強会を開き、法的に提言できることがあれば提言をしてきた。最近は省エネも重要と認識し、特に住宅の断熱をテーマに勉強会をしている。断熱を勉強する中で一番問題になるのは、健康問題。入浴中に突然死する人は圧倒的に冬に多いが、都道府県別で見ると、もっとも寒い地域であるはずの北海道が、46位!北海道は冬でも室温が高いから、沖縄の次にリスクが低い。熱中症の危険性は広く知られているが、じつは低体温症(凍死)の方が、死者数は熱中症の1.5倍。室内で凍死するのだから、室温というのはまさしく、憲法上の人権問題。既存の法律で室温に関しての法律があるにはあるが緩い。ドイツでは室温規則や労働者保護で、かなり細かく室温が定められており、例えば厳冬期に住宅の暖房施設が故障すると賃料が全額減額できるなど、住民の権利が守られている。一方日本においては、これまでの判例からしても、適切な室温を享受する権利というのはあまりにも軽視されているように思う。2020年の適合性義務化で、断熱に関しての権利性や裁判所の判断も変わるのではないかと期待している、との話でした。

そして今回、「SDGs未来都市における構想とプロジェクト」のテーマで、今年度国から「SDGs未来都市」に選定されたクラブヴォーバン自治体正会員の下川町・ニセコ町・小国町、ゲストで鎌倉市からの取り組み発表と、二戸市によるPPPによる取り組みの紹介。4つのSDGs未来都市の共通点は、選定されるために特に何かをした、ということではなく、環境モデル都市として、環境問題に長年取り組んできた積み重ねが評価された、とのことでした。そして、SDGsを地域内外とのコミュニケーションやブランド発信のツールとして、他地域や企業、市民など多様な連携を進めて行きたい、とのことでした。環境省からも省の白書や方向性、予算などの説明がありました。

北海道下川町政策推進課SDGs推進戦略室長 蓑島氏:下川町は「持続可能な森林管理・生産」がまず町の中心に来て、廃棄物をできるだけ出さないゼロエミッションの木材加工、最近は森林環境教育や森林セルフケア、林地残材を使った地域のエネルギー自給と低炭素化、エネルギー自給を核としたコンパクトタウンの実現、集落の再生、といったことに統合的に20年、森づくりでは半世紀以上取り組んできた。最近では人口減少率も緩和されてきており、ここ5年では人口転入超過の年も。小さな町なので、本当にパートナーシップが重要。さまざまな協議会や協定などを通じて、全国の地方自治体や企業・団体などと連携していく。

北海道ニセコ町企画環境課自治創生係長 川埜氏:ニセコ町は、世界的なスキーリゾート地として観光客は年々増加、人口は約4600人からここ10年ほどで人口約7%増加。1シーズンで64万泊もの観光客滞在があり、町外から町内に働きにきている人で町に住みたいが住めない人がいるので、将来的に5600人まで人口増加を想定。ニセコのまちづくりを語る上で重要な考え方、有島武郎の遺訓「相互扶助」をもとに、防災センターを兼ねた環境配慮型のニセコ町庁舎の新築やSDGsモデル都市事業に選ばれた「NISEKO生活・モデル地区構築事業」で環境配慮型の集合住宅の建築促進などについて、クラブヴォーバンと共に取り組み中。モデル地区構想は、市街地に隣接している土地を、単なる分譲地ではなく、住むことが誇りに思えるようなNISEKO生活を象徴する生活空間、生活形態まで設計された地域として開発し、高い基準での高気密・高断熱住宅を整備して義務化、外に流出しているエネルギーコストを、そこに住む人の資産形成として振り向けていく。

熊本県小国町環境モデル都市推進係長 長谷部氏:九州大陸のど真ん中、熊本県の最北端にある町。南国だが標高が高いので冬はとても寒く、面積の約8割が山林、農業・林業・観光業が中心。地熱と森林資源に恵まれた町なので、それを活かした地域振興を行っていくヴィジョン。太陽光発電や蓄電池、薪ボイラーを入れたエネルギー自立型避難所を作ったり、林地残材を地域通貨で買取する「木の駅プロジェクト」を始めたり、地域新電力会社(PPS)を設立したり、地熱をあちこちに引いたりといった取り組みをしてきた。小国町のSDGs未来都市計画は、簡単にまとめると「環境を守りつつ、地熱・森林資源で儲けすぎない程度に儲けながら、社会を潤わせていこう」ということ。今年度クラブヴォーバンと、環境省のクールチョイス事業で、省エネ住宅普及事業を年間通して実施中。

鎌倉市共創計画部企画計画課担当係長 青木氏:東京から1時間、横浜から30分の歴史的遺産や自然を身近に感じられる首都圏のオアシスとして、人口17万人、年2千万人以上の観光客が訪れる緑の多い町。高度経済期に住宅造成ラッシュでかなり緑が削られ、日本初のナショナルトラスト地ともなった50年前の御谷騒動と呼ばれる住民による開発阻止運動など、市民の環境意識が高く、今でも市民がボランティアで山林管理をしている所が多い。「働くまち鎌倉」「住みたい・住み続けたいまち鎌倉」を二本柱に、職住近接による豊かな暮らしを実現、若年層の流出を防ぎたい。今年7月に日本初となる「Fab City宣言」を行い、ものづくりによる地域活性化、世界に発信をしていきたい。

岩手県二戸市総務政策部政策推進課主任 工藤氏:2030年「人が輝き 未来をひらくまち にのへ」を目指す。人口減少、市税や交付税の減少、まちの魅力や真に魅力的な雇用や生活の場の不足があり、地域経営課題解決のため、関係団体や民間企業、金融機関と連携し、稼ぐ民間を行政が支援する公民連携事業に取り組むことに。「まちづくり会社」を7月に設立、老朽化した市営の温泉施設のリニューアルに合わせて複合開発、これまでなかった宿泊や飲食の施設を併設、隣接するプール・公園の新しい使い方など「訪れてみたくなる」新しいコンテンツを開発中。建物は、Ua値は0.3~0.4W/m2Kの高断熱・高気密で建物全体の光熱費を抑えるよう配慮。構造は木造2階建て、地域産材を使用、既存チップボイラーを活かし再エネ活用予定。従来の委託手法だと、市がほとんど費用負担して指定管理業者を探し、指定管理料を払い続けることになるが、官民一体運営方式だと市の負担を減らし大きな事業ができる。金融機関のしっかりした審査を受けることで、筋肉質な事業計画を立てられる。

環境省大臣官房環境計画課課長補佐 金井氏:環境省白書にSDGsが入り、環境分野も、経済と社会の地域の課題解決と、統合的に取り組んでいこうということが環境基本計画に盛り込まれ今年閣議決定された。資料にある「地域循環共生圏の創造」で足りないところを補完し合ったり、強みを生かし合ったり、これがSDGsのパートナーシップや持続可能な地域づくりにもつながり、環境負荷の低減にもつながっていく。このクラブヴォーバンの持続会の活動も、こういう考え方を入れていくとさらにブラッシュアップしていくのではと期待している。SDGsにある「誰一人取り残さない社会」というのは、行政依存をより高めるような誤解を生まないか心配。うまくいっている自治体は、住民が「自分ごと」として意思決定に関わっているから、持続可能な取り組みになっている。この持続会の自治体の人たちはこの理解が深まっていると思うので、ぜひ全国に横展開してほしい。

最後に、クラブヴォーバン代表村上敦より、「ニセコ町における環境アクションプランとその住民参加について」。これまで「環境」と言われていたのに「SDGs」へ。これまでこの持続会に参加された自治体の方は「環境モデル都市」が何をしなければいけないかわかっていると思うが、それがSDGsに変わることになり、これまでの「環境」だけから「持続可能性」の考慮まで必要になった。SDGsの持続可能性の三角形は、「環境」「経済」「社会」。「社会」が入ってくる意味とは?これまでの「住民参加のレベル」を突き抜けないと、社会の持続可能性をモデル地域として模索しているとは言えなさそう。ドイツ/ヴォーバン住宅地で実現されたときのように、「拡大住民参加」の実現が鍵。ニセコ町の環境モデル都市アクションプラン策定事業に、クラブヴォーバンが手を上げ厳正なプロポーザルの結果、委託を受け、実際に住民参加を行っているので、事例として紹介。これまでのニセコ町の環境モデル都市アクションプランのやり方では、CO2の排出は増え続けている。理由は、人口と観光客が増えているから。今のままでは、CO2排出を減らせる見込みがない。なのでニセコの新しいアクションプランを考えるために、我々がこの夏ニセコでワークショップ・住民アンケート・住民説明会を実施したが、従来の方法ではなく、①目的を定義 ②枠組みを確定 ③自分の立ち位置を確認することで方針を整理 ④方法(取組内容)を確立 ⑤あとは邁進するだけ という「方法」の部分は我々が決めて実施。結果、私たちの推測・仮説では分からなかった問題点や住民の不安を拾うことができた。現在ニセコ町と進めているので、来年度またみなさんに面白い話をシェアできると思います。

 

今後、持続会メンバーの自治体で、企業との連携や、再エネ条例策定などの取り組み、FIT切れの町営風力発電の更新問題などいろいろ話題がありますので、ぜひこの持続会で共有し議論していきましょう。

2018年

3月

01日

1月25日「第7回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

一昨年から取り組んできた「地域経済循環モデル」において、省エネ建築事業に本格的に取り組みたいという会員自治体が多かったため、今回は省エネ建築をテーマとし、省エネ建築について多角的な視点からインプットをする会となりました。

午前中には、クラブヴォーバンが企画・開発に関わったSDGs の体験シミュレーションゲームを開催し、大変好評をいただきました。

午前中の持続会特別イベント “SDGs を広く知ろう!コンセプト「kWh=¥」のシミュレーションゲーム自治体版体験会” についてのまとめは(こちら)をご覧ください。

午後の持続会の特別講座の最初には、理事の今泉太爾と代表の村上敦から、「日本における電力需給の現状と仮定での未来について」。再エネを基幹電源と据えて進化を続けるドイツのエネルギービジネス市場の最新の動きと、日本の電力需給の現状と未来の市場予測について、CVで開発し公開した「電力需給実績見える化グラフhttps://wellnesthome.jp/energy/)」を実際に動かしながら解説しました。

また、このグラフ日本の各電力事業者の管内で、太陽光発電と風力発電を主体とする再生可能エネルギーがさらに進展するとどうなるのか、あるいは停止中の原子力発電が再稼働するとどうなるのか、などの試算も行いました。電力市場が自由化された欧州で一般的になってきた「コネクト&マネージ」の考え方も紹介し、日本での有用性について議論しました。

次に、代表の村上から、「ドイツで進展するセクターカップリング対策」の詳細について。ドイツで進められているセクターカップリングとは、再エネ電力が順調に増加し、価格も安価になり続けているので、エネルギーを最終消費する3つの部門「電力セクター」「熱セクター」「交通セクター」のうち、熱と交通部門でも再エネ電力の利用を増やしていくという考え方です。ドイツでは2050年までに一次エネルギー供給量を半減した上で、電力の80%以上を再エネにシフトすることが国として決まっており、そのための3本柱の対策 ①再エネ電力の大々的な普及 ②自動車交通のEV化 ③建物の省エネ化→高断熱・高気密改修による暖房エネの大幅削減 が並行して進められています。

そのようにして一次エネルギー供給量を低下させながら、増加させ続ける再エネ電力で3つのエネルギー消費セクターをつないでゆく、同時に電力需給における柔軟性を向上させる、というのがセクターカップリング対策となります。また、ドイツのセクターカップリングと、日本の過去に進められてきた「オール電化」との違いについても説明があり、議論されました。 

次の本会議では、CV会員自治体(北海道下川町・ニセコ町、岩手県二戸市・葛巻町・雫石町、埼玉県横瀬町、鳥取県北栄町、熊本県小国町)から、「地域経済好循環モデル」の実装の進展について議論と報告がありました。昨年度から進めてきている「地域経済好循環モデル」において、何をこれから具体的に進めていくかということの進捗を共有しました。行政においてどういった補助金などを含めた政策が、その地域が豊かになることに本当につながるか、各自治体の気候や地域資源などの特性によって違うため、クラブヴォーバンでは各自治体の特性を鑑みて適宜アドバイスを行ってきましたが、今後もさらに会員自治体に住む人々が真の意味で豊かになるよう、サポートを続けてゆきます。

その後、CVメンバーで建築事務所プレゼントデザイン代表川端順也氏から「幼稚園における省エネ建築の推進」について。川端氏は、エネルギーパス協会で住宅の断熱性能表示などの普及を行っていますが、住宅だけではなかなか省エネ建築が広まらないので、公共建築などにも広げていきたいと考え、現在、広島の幼稚園の設計なども手掛けています。その関連で昨年視察した、ドイツ最新のパッシブエネルギー小学校の詳細の紹介がありました。日本は子どもよりもお年寄りを大切にする傾向があるが、子どもたちが良い環境の保育・幼稚園で過ごせたら、その子たちが大人になったときに、良い建築を選ぶようになるはず。少子化の今、子どもたちにこそお金をかけるべきだと締めくくられました。

次に、クラブヴォーバン広報室長の高橋彰氏から、「現在の日本のZEHの推進状況と制度について」。高橋氏はこれまでBELSという制度の立ち上げや省エネ基準適合の義務化に関わっていました。欧州やアメリカ、アジアの先進国の各国比較で、住宅・建築物の省エネ規制は、主要先進国で日本だけが義務基準がなく(努力義務にとどまり)、またそもそも日本の省エネ基準自体が、諸外国と比べて非常に低いレベルとなっています。

また、例えばドイツでは3~5年毎に建築の省エネ基準が強化されていますが、日本の省エネ基準値は長年厳格化がなされていません。以前より日本のZEHは進んできてはいるが、断熱の基準だけでなく、欧州で定められている気密の基準が日本のZEH基準には入っていないので、気密についても進めていくべき、との話がありました。一般社団法人 ZEH推進協議会( http://zeh.or.jp/)でもZEHを推進しており(現在の自治体の会員は、青森県、横浜市など)、建築の断熱を進めていきたい自治体は入会を検討しては、との紹介もありました。

次に、代表理事の早田宏徳から、「日本のZEHの功罪について」。あと2、3年で日本の「ZEH」が当たり前になってくると思うが、やり方に問題点があるので、よりよい制度になってほしいとの話でした。ドイツの場合、照明・空調・換気光熱費・家電すべて含め、全館の室温を、夏27℃以下、冬20℃以上に冷暖房含めコントロールした上で、エネルギーがプラスになる条件を満たした建築を“ZEH“と呼べるが、日本の“ZEH“は、家電が抜かれ、室温基準がなく、18年前と同じレベルの建物でもZEHと言えてしまうので同じ“ZEH“ではありません。

今の大手ハウスメーカーのUA値0.6のZEH住宅だと、室温基準がなく家電も前提から外されているので、太陽光パネルを相当搭載しなければなりません。消費者は“ZEH“と聞けば冷暖房費がかからないと思って買ってしまいますが、実際は冷暖房で電気がかなり必要になるので、要注意。とりわけ10~15年で買い替えが必要な太陽光や蓄電などの機械設備をたくさん搭載している家なので、問題です。さらに断熱のUA値は意識されても、気密性能がおざなりなのが問題なので、会員の自治体さんには、ぜひ高いレベルでのZEH住宅の推進を目指してほしいとの話でした。

次に、理事の中谷哲郎から、「建物の長寿命化対策の状況について」。これまで、公営住宅の省エネで 1)入居者の光熱費を削減させる 2)入居者の医療費を削減させる として改修を促進させる取り組みをしてきたが、なかなかハードルが高く、大きな推進にはつながっていません。しかし、実際公営住宅の断熱改修をした自治体さんに公営住宅の断熱改修に着手した理由を聞いたところ ①入居者からのクレーム(結露)②結露原因のカビで退去後の原状回復工事にコストがかかるため ③長寿命化対策(不良資産化した建物を資産価値向上)ということだったので、「省エネ推進」だけでなく、とりわけ「結露問題の解決」という切り口からも自治体の公営住宅の再生を推進していくとより推進されるのでは、との話でした。

最後に、佐久総合病院地域医療部の医師、色平哲郎氏から、「住宅の室温と健康・第一線医療」について。長野の佐久総合病院は、世界でもっとも有名な地域医療病院のひとつです。佐久では昔から佐久総合病院の医師が、古い家でトイレが家の外にあったのを家の中に作るよう、地域の人々に指導して回り、脳梗塞を減らした歴史があります。医者が看護師と一緒に農村に入っていき、演劇などをしながら健康の知見を広め農民の寿命を改善していったとして、色平氏は実際に過疎高齢化で身体が弱り買い物に困るお年寄りの実情を一人芝居で実演。

色平氏は、元々医師を目指す前に建築を学んでいたこともあり、20年ほど前から、外断熱の重要性について地域で講演会を開いたりしていたとのこと。長野では、厚着をして暖房を我慢している農家の方に、「せめて自分のいる一部屋は温めよう」と言って一部屋暖房が始まったが、良い部屋というのは外断熱をしてどこの部屋も温度が同じであること。そして、学問で大事なことは「Leran(学ぶ)」だけでなく、「Unlearn」、つまり学び捨てる・学びほぐし、自分のものにして実践すること、と力説されました。

また、長年世界の地域医療に取り組んで来られた、色平氏の友人の元WHO医務官のスマナ・バルア氏からも、日本の地域の中からどうやって医療従事者を育てていくか、そのためにできることはやっていきたいとのお話がありました。

2018年

2月

23日

1月25日「SDGs を広く知ろう!コンセプト "kWh=¥" のシミュレーションゲーム自治体版体験会」を開催しました

 

2015年に設立した「持続可能な発展を目指す自治体会議」、今回7回目となる開催では、午前中に特別イベントとして、クラブヴォーバンが企画・開発に関わったSDGs の体験シミュレーションゲームを開催し、大変好評をいただきました。

 

特別イベントでは、“SDGs を広く知ろう!コンセプト「kWh=¥」のシミュレーションゲーム自治体版体験会”を開催しました。正会員の4自治体の担当の方々( SDGs 推進室、政策推進課、環境モデル都市推進課、建設課都市計画課、森林総合産業推進課、企画環境課環境モデル都市推進係など)やクラブヴォーバンのコアメンバー約20人に体験していただきました。
 


5ロール(5年間×5回分)のプレイ終了後「人口が半分に減ってしまったら負け」という内容。既に他社からSDGsのカードゲームが発売されていますが、こちらのゲームの一番の特徴・違いは、自治体の職員が一緒にプレイをして懇親を深めたり楽しめたりするというだけでなく、「どんな規模のどういう特色の自治体において、どういう政策を取っていけば人口がプラスやマイナスになっていくかということを、ゲーム上で体感しながら具体的に気づける」という点です。

 

 

資金は豊富にあるが自然資源が少ない“大規模都市型”のチームは、政策の失敗が続き人口が最後には半減してしまいました。一方、“小規模エネルギー型”のチームは、資金はあまりないものの自然資源や戦略を使ってよい政策を打ち出し、人口が毎年▲10%だったものを▲1%にまで改善することができました。
 

 

参加者のみなさんからは、「内容もゲームとしても、とても面白かった」「うちの自治体の職員研修や市民向けイベントなどでぜひ使いたい」などの意見をいただき、大変好評でした。今後クラブヴォーバンとしても、SDGs について、CV理事市瀬を中心に、広報や気づきということの支援の活動をしていきたいと考えています。

 

2017年

12月

14日

10月26-27日「持続可能な発展を目指す自治体会議自治体相互視察@葛巻町」を開催しました

 

2015年に設立した「持続可能な発展を目指す自治体会議」では、正会員自治体の相互視察を行い、会員自治体同士での情報や知見の共有や交流、懇親を重ねてきています。その一環で、年に一回会員自治体の相互視察を開催しています。

 

初年度は北海道・下川町を視察し、次年度の昨年は鳥取県・北栄町予定でしたが直前の大地震のために延期、第2回目となる今年度は岩手県・葛巻町にホストになっていただき、下川町・ニセコ町・二戸市・雫石町・横瀬町・北栄町の町長・副市長・担当の方やクラブヴォーバンの理事やコアメンバーなど、約40人の参加となりました。

 

26日正午前に新幹線のいわて沼宮内駅に集合し、秋の紅葉の美しい山々に囲まれた「くずまき高原牧場(昭和51年に町の第3セクターとして設立、現在は一般社団法人葛巻町畜産開発公社)」へ。ここでは全国から仔牛を預かり、2年間放牧で育てて返す事業もしています。

 

ここで発生する糞尿は、10年前からデュアル式のバイオガスプラントで活用され、エネルギー(電気・熱)と良質な肥料を生産しています。5年前からは一般家庭からの生ゴミもここで処理され、一般ごみが3割削減されたそうです。敷地内の体育館は、町のイベントで使われ、地元のカラマツの集成材が使われています。鉄骨より施工費が2割高いが、地元の林家や製材所などにお金が落ちるとのことです。ショップでは、ここで作られた牛乳やヨーグルト・チーズ・ソフトクリームなどの加工品が販売されていました。

 

 

 

次は、グリーンパワーくずまき風力発電所1基 1750kwの風車が12基あり、電源開発株式会社から町への固定資産税は年に3億円になります。そもそもこの立地に開発できたのは、戦後に葛巻牧場のために作られた道路が存在したからです。絶滅危惧種のいぬわしの生息地もあるため、開発時にはいぬわしの飛行ルートにかからないよう配慮をし、これまでバードストライクの被害もないとのことでした。現在、22基増設中の工事現場にも立ち寄りました。山の連なる尾根に、白いタービンが回っている姿は壮観でした。

 

 

その後、今年新築したばかりの町立江刈小学校へ。葛巻産のカラマツなどの地域材がふんだんに使われたバリアフリーの小学校は、エントランス部分が開放的で、小学生だけでなく住民にも多目的ホールのようにも使われる場所になっていました。暖房は木質バイオマスのボイラーで、地域の木材チップが使われています。

 

第一日目最後の視察は、岩手くずまきワインの製造・販売所へ。地元で採れる山ぶどうが使われたワイン。たくさん試飲させていただき、みなさんお土産にとワインやジュースを買われていました。ワインの樽をたくさん寝かしてある醸造所では、将来はワインの樽についても、地元産ミズナラ材の樽を作っていきたいとの話を伺いました。
 

 

第2日の視察は、町立の葛巻病院&養護老人ホーム葛葉荘。こちらも、新築されたばかりで、地域のカラマツの集成材がたくさん使われ、足湯の施設もありました。今、日本の多くの地域で少子高齢化が進む中で、民間の病院や診療所が撤退していくことが問題になっています。その中で、町として医療と教育と雇用に力を入れる、という町長の強い方針が実現されているのを感じました。その後は、参加自治体のお悩みの相談やそれに対する意見やアドバイスなど、ざっくばらんにディスカッションが行われました。

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2017年

12月

11日

10月19日「第6回・持続可能な発展を目指す自治体会議@イイノホール」を開催しました

 

今年5月に環境省内で開催した特別篇・持続会には、多くの地球審議官や大臣官房長の方はじめ、多くの省庁関係者の方にご参加いただき有意義な会となったため、引き続き持続会の正会員の自治体の方と環境省の方をつなぐべく、環境省近くのイイノホールで持続会を開催しました。

 

今回は、


① 地域にお金が循環する形での自治体が関わる新電力会社の設立方法 
② ドイツの最新の電力市場とVPP(仮想発電所)ビジネス 
③ 地域産材の利用はどの程度地域に利益をもたらすのか
④ 補助金に頼らない稼げる自治体の事業計画の立て方 
⑤ 買い物難民を救う、稼ぐ地域移動スーパー 

 

についての話題提供と、クラブヴォーバン会員自治体が来年度以降、地域経済循環型のどんな事業を計画し取り組みたいかの発表の場を作りました。

 

 

特別講座の最初には、公財東京都環境公社 東京都地球温暖化防止活動推進センターの北橋みどりさんから、「持続可能な地域社会・環境のためになる、地域新電力とは」と題してのレクチャー。全国の新電力の状況について調査された内容について、また、やってみてわかった新電力の様々な誤解、また再エネを活用した新電力を検討するためのポイントなどについて、丁寧な説明がありました。需給管理は、最近は専用のソフトウェアなどもあり想像していたほど大変ではなく、再エネ電気を使っても電気代は高くならないそうです。


続いて、北橋さんと一緒に調査をされた京都大学研究員の稲垣憲治さんから、「地域新電力の地域経済付加価値分析と連携の有効性」と題して、地域と連携してうまく運営されている新電力の事例を分析した上での、事業のポイントについての説明がありました。地域新電力の「目的」と「手段」の一致がとても大切であること、もし、地域でお金を回すことが目的なら「資本はできるだけ地域で」「業務はできるだけ地域内の企業で(需給管理は自前で)」ということが基本であること、需要規模が小さく単独では事業性がない地域新電力についても、連携により事業の実現可能性が高まること、などの説明がありました。


続いて、クラブヴォーバンのプロジェクトメンバーであり、ベルリン在住の調査員である西村健佑さんから、「ドイツの再エネ進展と電力取引市場の進化による仮想発電所(VPP)というビジネス」のテーマで、ドイツの最新再エネビジネスの状況について話題提供でした。VPP(バーチャル発電所)とは、発電所ではなく「エネルギーマネジメントシステム」のことです。ドイツではVPPが発展し、電力供給における「ベースロード」(必ず必要になる電力量)という概念が消失。ドイツの電力市場は、「スポット市場」「調整電源市場」の2つがあり、前者は発電量予測が鍵であり、15分毎の予測と実際の需要の差が小さければ小さいほど儲かる仕組みになっており、後者は柔軟性を確保することが目的なので、電力の容量を確保しておくことにも、お金が支払われる仕組みになっているそうです。そのため、日本での今後の地域新電力を考えたときに、商品は電力だけではなく、地域で持っている情報をいかに収益化するかが重要であるとのことでした。

 

 

続いての本会議の冒頭はクラブヴォーバン代表理事の早田宏徳より開催の挨拶。CV理事で(一社)エネルギーパス協会代表の今泉太爾が開発した、簡単に日本の電力需給実績を見える化できるツール(HP → https://wellnesthome.jp/energy/)と、早田が執筆した「電気料金は本格的な上昇局面へ。ZEHが不可欠な理由とは」(HP→ https://wellnesthome.jp/1262/)の紹介。

 

次に、昨年から準備を進めてきた「地域経済好循環モデル」について、クラブヴォーバン会員8自治体からの報告と、今後の進め方について代表の村上敦が司会を務め、議論が行われました。その後、環境省大臣官房環境計画課の金井信宏さんから、「再生可能エネルギー活用によるCO2削減加速化戦略」として中間報告をしていただきました。

 

さらに、公財自然エネルギー財団上級研究員の相川高信さんから、「地域産材を活用した場合の地域経済における影響」と題して、日本の木材・住宅市場の概観から先行研究例の紹介、2x4住宅の投入される構造用木質製品を、輸入材から地域の木材に変えることで、地域のGDPなど経済波及効果が圧倒的に大きいことの実証について発表がありました。自治体に対しては、地域産材を使った住宅への補助や、公共建築の木造化や公共住宅の可能性、広域連合などに関わり木材加工施設のネットワーク化や複数市町村の物件を継続的にコーディネートすることなどの提案が行われました。

 

次に、一社 エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉さんから、「補助金依存のまちから、稼ぐまちへ」と題して、自治体として関わるべき事業の在り方についてのレクチャーでした。20年近く、まちづくりに関わる仕事をしてきた木下さんは、「事業をスタートするときにかかるお金ではなく、その後かかるお金ライフサイクルコスト(例えば、建設だけでなく、維持費・大規模改修費・解体コストも含め)全体でみて事業モデルを立てないといけない、という基本に戻ることが重要」と強調されます。今年村上の案内でドイツを訪問した際にも感じたそうですが、自治体の皆さんには、ドイツのしたたかな役人のように、施設テナント会社も運営企画会社も役場も黒字ということを目指して、再エネによるまちづくり事業と制度設計を進めていただきたい、とのことでした。

 

最後に、移動スーパーとくし丸 株TサポートCEOの村上稔さんから、「買い物難民をなくせ!歩く民主主義の移動スーパー」と題して、補助金なしで徳島県の買い物難民問題を解消し、全国にもそのネットワークが拡がりつつある話でした。移動スーパーの事業を始める前までは、徳島市議会議員として買い物難民にも関心が高かった村上さん。2012年に二人で始めた事業は、現在徳島・香川で個人事業主さんが走らせる移動スーパーは28台、徳島県内の90%の地域をカバーしているそうです。(全国の買い物難民は700万人、うち7.5万人が徳島県内)スーパーとくし丸は、3つの社会的な事業目的 ①命を守る(買い物難民の支援)②食を守る(地域スーパーとしての役割を果たす)③職を創る(社会貢献型の仕事創出)を念頭に事業を展開。移動スーパーは、従来採算が取れないと思われていましたが、十分採算を確保できる事業モデルを著書の中で公開しているので、ぜひ全国の皆さんも取り組んでほしいとのこと。また、1台の車が1日30~35か所、週に2回、効率的に地域を回るので、その地域の人たちがそれぞれに車でスーパーまで往復で買い物に行くガソリン消費などを考えると、とてもエコ。徳島・香川28台のとくし丸のネットワークで、毎日420~430Lのガソリンを節約していると試算できるそうです。

 

 

2017年

8月

07日

環境省内で6月26日「特別篇・持続可能な発展を目指す自治体会議@環境省」を開催しました

 

昨年12月の持続会に参加された森本氏(当時 環境省大臣官房長・現 事務次官)からのご提案もあり、今回は持続会を環境省内で開催させていただきました。

 

持続会自治体会員の皆さまと進めてきた取り組みである「地域経済好循環」モデルの事業について、環境省の職員の方々に発表し、意見交換を行いました。環境省からは、地球環境審議官や大臣官房長、課長や課長補佐、室長など多くの方々が参加され、交流の場としてもよい機会となりました。

 

 

第一部の特別講座、まずは代表の村上より「“kWh=¥”のコンセプトで活動する持続会について」 。ドイツで2010年に策定されたエネルギーシフトの目標値は、一次エネルギー供給量を2050年までに半減することとし、省エネと再エネはセットで進められています。そのためドイツでは、温室効果ガス排出の削減をしながら、かつGDPも成長する経済活動が行われていますが、日本では残念ながらその2つが連動してしまっています。


持続会では、温室効果ガス排出を削減しながらかつ域内GDPを増加させるための「地域経済好循環モデル」の構築を目指し、1)省エネ建築 2)建物設備 3)家電 に取り組んでいます。会員自治体ですでにこれらを実装した「結果」や実装しようとしている「検討」において、簡易モデルを作ってみて中身を共有し、その後新しい実装に向けて検討するために、域内GDPの基本的な考え方として前提となる数値等を設定して持続会で共有し、それを基に計算しました。今日は環境省の職員さんに向けて、自治体の担当者の方々にその発表をしていただく、との内容でした。

 

 

次に、下川町環境未来都市推進課の蓑島氏より「“地域経済好循環モデル”構築の背景と小規模自治体間アライアンスの意義」について。日本全体が人口減少社会へ向かう中、今後人口は東京圏へ一極集中、地方地域は大幅減が予測されます。地方の小規模農山漁村地域が持続的に発展し続けるためには、人口減少の局面を迎えても、域内の総合資産に目を向け、それを有効活用し域内で価値創造することで「持続可能な地域社会」を構築することが重要。一方、小規模自治体は、専門知識を有する人材が少なく、地域資源を活かした環境・エネルギー分野等の取組と経済好循環化を有機的に結びつける知識・技術・ノウハウが乏しいことが共通の課題でもあります。各自治体が培ってきたノウハウを共有し連携をするとともに、専門的知識を有する(一社)クラブヴォーバンと連携し取り組むことで、さらなる進化を遂げ実現を目指しています

 

参加自治体の地域経済循環率は、下川町の46.1%~二戸市の87.2%。漏れるバケツのように地域外に流出しているこのお金の、漏れを塞ぎ循環率をUPさせることを目的として、H27年度に、経済(農林業等)×環境(再エネ・省エネ等)×社会(少子高齢化等)の好循環化により「持続可能な地域社会」を実現することを目的に、「持続可能な発展を目指す自治体会議」を設立しました。H28年度は「地域経済好循環化政策の社会実装」、H29年度は、実装に向けた深化、新たな分野での見える化(交通・通信データ)に取り組んでいます、とのこと。

 

 

次に、環境省大臣官房長の森本氏から、「環境から拓く、経済・社会のイノベーション」として、環境省の現在の取り組みについて。環境省としては、環境政策の展開による社会経済の課題解決を、地域レベルで実践する支援をしたい。経済・社会課題が深刻化・複雑化する現在においては、環境政策の展開にあたって、経済・社会課題の解決も同時解決できる効果をもたらせるような政策を発想・構築することが重要です。そのために地域と環境省のパートナーシップが目指す方向性は 1)同時解決 2)持続可能な開発目標(SDGs) 3)パリ協定の発効 3つのキーワードをもとに、地域でいくつかの解決事例紹介がありました。

 

クラブヴォーバンの会員自治体は、いずれも小規模な自治体で、人口減少や高齢化などの地域課題が、都市よりも早く顕在化・深刻化してきた課題先進地であるが、一方、再エネをはじめとした豊かな地域資源を持つ強みがあるため、「環境から拓く、経済・社会のイノベーション」の先進地となるポテンシャルもあります。地域レベルで、環境政策を通して地域課題を克服するノウハウやヒントを、“小規模自治体から学ぶ”のが地域づくりの大きなトレンドの1つとなると考えられます。地域レベルの取り組みの深化のために環境省の持つ政策ツールを、共創し使いこなすという視点から、地域と環境省とのパートナーシップを捉え、会員自治体をはじめとした地域と環境省とのパートナーシップをさらに深化させたい、とのことでした。

 

 

本会議では、「地域経済好循環モデル」策定の報告と会員自治体の取り組みについての発表がありました。鳥取県北栄町住民生活課、藤江氏から「町内のLED灯への入れ替え事業の評価について」、北海道下川町保健福祉課、仲埜氏から「冷蔵庫の入れ替え事業OR省エネ新築の助成事業の評価について」、岩手県二戸市 総務政策部政策推進課、五日市氏から「二戸市型超省エネ住宅新築の助成事業の検討について」、北海道ニセコ町建設課都市計画課、金澤氏から「住宅省エネ改修事業の評価について」。それぞれの自治体より、モデル計算に従い、補助金をどの事業にいくら投入することにより、○年後にどれくらいのコスト削減と域内GDPが上昇する、という数値とともに、ユニークな取り組みについて発表いただきました。

 

これまでは行政が、例えば100万円の助成措置を行う場合に、数年先まで見てこれまではどれくらいが地域GDPとして循環するかということを考えないまま感覚的に行ってきました。この「域内経済好循環モデル」構築の狙いとしては、町が助成措置を行ったときに、同じ予算の中でどこに優先的に振り分けたらいいのかというのを、なんらかのプロジェクトの後に簡易的に検証できるツールがほしい、ということで、この持続会でモデルの構築をやってきました。今後後少子高齢化が加速するほとんどの自治体において、町のお金は有限なので、限られたお金の中で、その町にとって地域経済の中で最も有効だと思われる対策に、お金を振り向けていく必要があります。行政の担当者が日常業務の中で使えるものとして簡易的なモデルを構築しましたが、もし環境省さんからこのモデルを使ってほしいというような提示があれば、今後自治体の方々もやりやすいのではないか、との意見が出ました。

 

 

また村上からドイツの事例として、①電気温水器 ②古い冷蔵庫 ③シングルガラスとアルミサッシ この3つについては「あってはいけないもの」なので、ドイツの環境省でも、低所得者向けの福祉事業として、冷蔵庫の買い替えにおける助成措置を行ったり、ドイツのプロテスタント教会でも、スポンサーを集め、失業者やシングルマザーなどの貧困層を優先的に回り、「うちエコ診断」事業を実施したりしているとのこと。貧困層からまず、この3つへの対策をしていく必要がある、との提案がありました。

 

また参加者から、「省エネ住宅の新築や改修は、住民がどれくらい知っているかでニーズが決まってくるが、『省エネ住宅は、エネルギー削減だけではなく、快適性や健康にいい』という知識を住民が知らないので、“クールチョイス”されない。環境省でクールチョイスを普及する補助金がある。子どもたちへの環境啓発もいいが、大人向けにこういう省エネ住宅の啓発事業も環境省に応援していただきたい」との意見も出ました。

 

最後に地球環境審議官の梶原氏から、「環境対策を進めていくための判断基準をしていくために、今日は貴重なフロンティアの事業をいくつも聞かせていただき非常に勉強になった。日本の省エネ住宅の基準が低いという話は、言っていった方がいい。こういう議論は、我々にとっても絶対にプラスになるので、今後もぜひ続けさせていただきたい」との締めくくりの言葉をいただきました。

 

2017年

3月

03日

「域内経済循環モデル」事業の具体化に向けて、「第5回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

 

 

北海道下川町・ニセコ町、岩手県二戸市・葛巻町、鳥取県北栄町、熊本県小国町の6自治体が集まり、2017年1月の持続会定例会が行われました。今回の定例会では、エネルギー部門の次の新しい一手として、交通部門における地域経済循環「キロメートル・イズ・マネー」の考え方のほか、省エネ住宅や家電省エネの必要性についての再確認を行いました。また、「課題解決型自治体アライアンス事業」の一環として、持続会では「域内経済好循環モデル」の構築作業が続けられています。策定中の「モデル」についてのディスカッションにも多くの時間を割きました。

 

今回は、上記6自治体のほか、来年度会員として参加が決まった岩手県雫石町と埼玉県横瀬町のほかに、茨城県大子町と岡山県西粟倉村からも参加がありました。

 

一社クラブヴォーバン(CV)が主宰する持続会が発足して約2年、これまで「kWh=\」として、域内の再エネによるエネルギー創出・省エネによって、地域の雇用創出と経済循環について提唱し、会員自治体の取り組みを進めてきました。


第一部の特別講座では、次の新しい一手としてCV代表の村上から、ドイツや欧州の交通政策の先進事例から、「『km=¥』~次の一手である交通での対策について~」のレクチャーがありました。人口1万人規模の小規模自治体においても、ざっと自動車関連支出(車体・修理・維持整備・保険・燃料)の総額は毎年60 億円レベルになります。そのうち、域内で循環するのは半分以下、つまり年間に30 億円以上は域外へ流出しています。今後日本で少子高齢化が進み、自動車の運転ができなくなる高齢者が急増することも鑑み、自転車交通や徒歩交通のインフラを整備し、自動車に依存しないまちづくりの実現と雇用の創出について、欧州の自治体の先進事例が紹介されました。


次に「再エネ、省エネを推進する意味、意義の再確認」として、再エネや省エネが、国民の意識としてどんどん進められるドイツと、まだまだ取り組みが道半ばの日本と、何が違うのか?を村上が紹介。ドイツで「なぜ再生可能エネルギー・省エネルギーの推進に努めているのか?」と聞くと、76%の国民が「子どもや孫たちの安全な未来に貢献するため」と回答しますが、日本ではそうではありません。


この考え方のベースとして、今の時点から考えてできることを、PDCAサイクルを繰り返しカイゼンしていく帰納的な考え方の日本人と、数十年先の未来を見据え究極的な目的を定義した上で、自分のできる枠組みを決めて目的に向かって行動する演繹的な考え方のドイツ人との違いについて説明がありました。

 

本会議では、CV理事の中谷から「『域内経済好循環モデル』を念頭とした省エネ設備の普及について~なんでも『kWh=\』で計算してみよう~」についてレクチャー。家電での省エネの例として、家庭にある電気ポットを電気ケトルに国民全員が替えたら、原発1.3基分、トイレの暖房便座のスイッチを国民全員が切るだけで原発2基分の電力が削減できる、などの試算が紹介されました。また、家の躯体を省エネ改修した際のビフォー・アフターのエネルギー計算だけでなく、家電を入れ替えした際のビフォー・アフターの電力消費量の計算も、すべて「エネルギーパス」のソフトウェアで可能で、その実例が紹介されました。また、エアコンなど暖房に関わる家電は、躯体を断熱改修してから更新しないと、(その暖房器具自体が過剰となって)意味がなくなることもあるので注意が必要です。

 

次に代表理事の早田から、「『kWh=¥』と『経済好循環モデル』を念頭にした省エネ建築の推進」 についてのレクチャー。木造やRC造の住宅の断熱改修事例のほか、室温が低い住宅に住むことによる健康リスクについてのインプットがありました。「断熱改修すれば何年で元を取れるか」という計算をする時に、光熱費だけで考えれば29年だが、病気になって支払う医療費と社会コストまで考慮すると11年で元が取れる計算になる根拠についても詳しく紹介がありました。

 

今回の会員自治体の取組紹介では、熊本県小国町から「地熱とバイオマスを活かした農林業タウン構想」のプレゼンがありました。北里柴三郎の出身地でもあり人材育成に力を入れているという町の特色や、地熱と森林資源を活かした地域復興についての取組を紹介されました。また町と地元の6団体で、新電力会社「ネイチャーエネジー小国」を2016年8月に設立したとのことです。町の森林組合が制作した町のPR動画「スギオとリサ」の放映もあり、参加者の皆さんから好評でした。

 

最後に「域内経済好循環モデル」の構築の検討会では、会員自治体と進めているモデルについて、3月末の完成を目指して自治体ごとに意見交換が行われました。自治体によって、気候条件や既存住宅ストックの広さや断熱の基準などが違うため、クラブヴォーバンではそれぞれの自治体に合う形での計算モデルを提供することにしています。参加自治体が域内で省エネに取り組み、今回できた計算モデルを有効活用して「省エネの見える化」を来年度どのように進めていくか。また、その後の状況をこの自治体連携で共有し、より最適な制度へと進化させてゆくのか、来年度の活動内容についても整理されました。

 

2017年

1月

13日

環境大臣官房長をお招きし、12月12日「特別篇・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

 

2015年12月に開催した特別篇・持続可能な発展を目指す自治体会議(以下持続会)は、省庁連携会議ということで、内閣府・経産省・農水省・環境省にお越しいただき、各省の予算措置の説明と自治体からの意見を議論する主旨で開催しました。

 

2016年12月の持続会では、環境省の森本大臣官房長にお越しいただき、環境省の予算措置の目的、意義についてご説明いただくとともに、自治体からの意見を発表し、深く議論する場を設けました。また、持続会で「域内経済好循環モデル」を2017年3月までに構築していくにあたり、各自治体とディスカッションを行いました。

今回は、会員自治体の下川町・ニセコ町、岩手県二戸市、鳥取県北栄町+熊本県小国町からの参加に加え、来年度会員自治体に入会を希望する岩手県雫石町が参加されました。

 

第一部の特別講座では、東京大学先端科学技術研究センター 特任研究員、谷口信雄氏より、「国の政策、助成、促進プログラムとの付き合い方」について。環境省・林野庁事業で、国が自治体や企業に対する委託研究や補助事業等の審査員、地域に根ざした再エネ事業の補助申請の委員やアドバイザーを務めている立場から、何を目的として、どのような枠組みで事業を実施するのかのポイントについてレクチャーいただきました。

 

次に代表の村上敦から、「『kWh=¥』で稼いだお金の回し方〜ドイツでの組合出資型の事例」 について。ドイツの都市部や農村部で、省エネ+再エネの推進によって域内が潤ったお金で、どのようにうまくお金を地域市民のために回しているか、という事例紹介がありました。

 

 

第二部の本会議の冒頭では、2016年10月に大きな震災の被害を受けた鳥取県北栄町の担当者より、震災後の対応、進展などについて報告を受けました。自治体会員の皆さんと相互視察で北栄町を訪ねる予定をしていた3日前にまさかの地震で、視察は直前にキャンセル。しかし、震度5強という大きな揺れにも関わらず、大きな人的被害がなかったことは、不幸中の幸いでした。

 

その後、代表の村上敦から「『kWh=¥』の考え方、地域経済を強化するための持続会の取り組み」について、この「持続会」が目指すところについて再確認を行いました。続いて、環境省大臣官房長の森本英香氏より、「次年度の環境省の施策と人口少数自治体の活躍について」。まちづくりに役立つことのために大事なことは「地域の資源(資産)に目を向けること」「ひとりひとりに出番があって、その人たちが活躍できるような形を作っていくこと」「少しでも人の役に立っているという想いを地域の人が持てるようにする」などの力強いコメント共に、環境省としては、近年は環境だけというのではなく、環境xエネルギー、環境x観光といった事例に注目し、事業を推進しているという説明を受けました。環境省が注目している地方の事例の紹介の後、参加者からのたくさんの質問や意見に対しても真摯に耳を傾け、非常に丁寧に回答されている森本氏の姿が印象的でした。

 

その後は、国の交付金を受け「課題解決型自治体アライアンス事業」として策定中の域内経済循環を測るためのモデル構築についてディスカッション。家電・設備・建築それぞれの分野で、各自治体がどのような省エネ+地域経済を回す取り組みを行っていきたいのか、どういうデータなら現実的に取れて、その効果が推し量れるのかについて、ヒアリングと意見交換を行いました。


クラブヴォーバンでは引き続き、域内経済好循環モデルの構築についての取組みの加速化や数値化・見える化の具体策を、会員自治体の皆さんと共に考え、全力で支援していきます。

 

 

2016年

11月

14日

10月20日東京国際フォーラムにて「第4回持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

北海道下川町・ニセコ町、岩手県二戸市・葛巻町、鳥取県北栄町、熊本県小国町の6自治体で、「課題解決型自治体アライアンス事業」モデルとして国の加速化交付金を受け、各自治体での取り組みが行われています。今回は、「里山資本主義」著者の藻谷浩介氏から「地方創生」についてのレクチャーのほか、小規模地域における公共交通の話から再エネの話まで専門家にお越しいただき、盛りだくさんの内容で持続可能な発展を目指す自治体会議(通称:持続会)を開催しました。

今回は年に一度の持続会オープン(公開形式)ということで、上記6自治体の町長、副市長、副町長、役場の担当の方々のほか、クラブヴォーバン(以下CV)法人会員、非会員自治体の岩手県雫石町の町長、群馬県長野原町の副町長も参加されました。

 

第一部の特別講座では、前職で長野県のエネルギー政策に携わっていた自然エネルギー財団の田中信一郎氏から、県としてエネルギー自立や再エネ政策に積極的に取組んでいる長野県における取組みの特徴についての話がありました。次にCV代表の村上敦より、今後少子高齢化で人口減少の局面を迎える自治体が、上下水道などのインフラ維持や住民の交通手段を、どのようにコストを抑えつつ確保していくか、ドイツの事例を元に集住化やコンパクト化をベースとしたまちづくりについての提案がありました。次に日産自動車モビリティ・サービス研究所主管研究員の藤本博也氏から、欧州や中国・韓国・インドネシアの公共交通・施策のシフトや最近のトレンド、まち中心部に人を呼び人が集える仕掛け、小規模自治体目線から考えた将来の移動手段や目指すべき方向性の話がありました。

 

第二部の本会議では、CV会員自治体のうちの3自治体から最近の取組みの報告。北栄町の西尾浩一副町長からは、今年度省エネ改修をテーマにエコ加算制度を策定し、町直営の風力発電所の売電収入の一部から遮熱などの改修に補助金拠出について紹介。ニセコ町建設課都市計画係長の金澤礼至氏からは、公共建築の改修・新築、民間建築の改修・新築それぞれのカテゴリで、どのような断熱工事に対し交付金や補助金を出してきたのか、具体的な断熱効果を現す数値とともに事例紹介。人口が急増中のニセコ町では、今後町で定める断熱・遮音性能などを満たし性能表示を行うものについて建築費を補助し、町内の民間賃貸住宅の良質なストック形成と市場適正化をはかるそうです。

 

下川町の環境未来都市推進課地方創生推進室室長の簑島豪氏からは、地域熱供給施設を中心とした、各公共施設やコミュニティセンターやカフェ、集住化住宅、EV充電器による ①エネルギー自給の向上②環境配慮建築の導入③地域資源の活用による新産業創造④集住化による自立型コミュニティモデルの創造 について。また、地区ごとの10年後の人口動態の数値を具体的に算出、就農・定住を目指す若者と離農したい高齢者を相互支援し、離農後もこの地域に住み続けたい高齢者は町の集住化住宅へ移住、共同菜園で農業を続けられるようにといきがいの創出も行っています。

 

次に、「里山資本主義」の日本総合研究所主席研究員藻谷浩介氏からは、当日前後の講演の合間を縫ってお越しいただき「地方創生の考え」について。「CV村上さんおよび持続会の活動は極めて重要だと思うので、ぜひ会員が増えるようにお話ししたい」とのお言葉もいただきました。いくら地域が稼いでも、銀行にお金をためるだけや地域振興にならない使い方をしていては、サステナビリティがないこと、また、具体的な人口動態を元に、少子高齢化は田舎ではなく地方の都市部でこそ急速に進んでいることが示されました。地域の活性化に必要なことは、交通の便を更によくすることでも工場を誘致することでも好景気不景気と騒ぐことでもなく、「人口が減らなくなること。」「若者が戻ってきて、子どもが生まれ続けること。」「誇りを持って地域を残すこと。」この3つだとの指摘がありました。自動車工場のある豊田市や原発立地自治体でも、労働可能世代の人口は減少し高齢化が進行している一方、高齢化しても人口構造が安定している北海道西興部村や島根県隠岐島の海士町では、若年層の出生増による人口増加や青年層のUIターンや島留学受け入れで人口増をはかっている例が紹介されました。会員自治体のニセコ町は、人口が急増中(外国人だけではない)なのは、食材も建材も道の駅もニセコ町産のものだらけで地元にたくさん仕事があるからで、「地域内でお金を回す超優良なまち」と評価されていました。


次に龍谷大学リサーチセンターの櫻井あかね氏から、再エネ事業を誰が担い、自治体が何をして、どうやって地域のお金を地域に振り向けていくのか、という視点での発表がありました。太陽光のメガソーラー発電所と風力発電所を例に挙げ、住民とのトラブルや景観などの問題に配慮しつつ、地元資本で発電し、再エネの利活用の利益は地元に還元して地域内で資金循環を創出するために、地域住民が議論して決定・実行していく自治力が必要のとこと。地元に利益が還元されている再エネ事業の成功事例紹介がありました。


立命館大学経営学部教授のラウパッハ・スミヤ ヨーク氏からは、再生可能エネルギーによる地域の経済的付加価値を数値化・見える化をするためのドイツの評価ツールの日本版モデル(京大や環境エネルギー政策研究所などとともに構築)を使った事例研究の発表。「地域の付加価値」=「事業に関わってきた人たちの所得+事業者の利益+地方に落ちる税金」。このモデルによる試算では、長野県では2000~2034年度累積で再エネ事業への補助金がたった50億円だが、6300億円の売上げ、600億円もの地方税増収、売上げの約25%の1500億円が、地域の付加価値になるとのこと。このようなツールを使って、自治体の政策策定に活かすべきではないかと提案がありました。

持続会では、会員自治体が順番でまちアピールをする機会があります。今回は岩手県二戸市副市長の大沢治氏より、二戸ブランドの地酒や漆、国名勝の馬仙峡や折爪岳のヒメボタルの乱舞、3年先まで予約いっぱいだった座敷わらしが出ると人気の金田一温泉郷の旅館再建の話、りんごやさくらんぼ、雑穀や短角和牛などの市の逸品などのまち自慢。続いて、地域経済循環への仕組みづくりとして、省エネルギー住宅「二戸型住宅」の取り組みを行い、市民対象のエネルギーシフト・省エネ住宅の啓発を行っている話がありました。昨年から今年にかけ、CV村上、今泉などが講演会を行いましたが、今後ガイドラインを策定して市民向けに啓発を行い、市としてはガイドラインに沿った住宅建築に対し支援を行っていく予定で、低燃費住宅モデルハウスの性能(外皮平均熱還流率UA値0.28W/㎡K)を目指すとのことでした。これに対し、代表の村上から、「自治体のガイドラインで具体的な目標数値《UA値0.28W/㎡K》を掲げるところがこれまでなかったので、ここがすごく重要。北海道では例があったが、UA値0.4~0.7W/㎡Kだった」とのコメントがありました。

 

クラブヴォーバンでは、会員自治体を相互視察したり、本音のところで自治体が抱えている悩みをディスカッションする機会を設けたりしています。会員自治体が内閣府の地方創生加速化交付金を受けているため、今後域内経済好循環モデルの構築についての取組みの加速化や数値化・見える化の具体策を、会員自治体の皆さんと共に考え全力で支援していきます。

 

2016年

6月

17日

5月18日「特別開催・持続可能な発展を目指す自治体会議」開催、自治体会員(下川町・ニセコ町・二戸市・葛巻町・北栄町)の首長さんたちがプレゼン!

2016年度、「課題解決型自治体アライアンス事業」モデルが国の加速化交付金交付対象として採択されることになったこともあり、5月18日東京国際フォーラムにて「特別開催・持続可能な発展を目指す自治体会議(通称:持続会)」を開催しました。

このモデル事業は、地域にある豊富な地域資源等を最大限・最大効率で活用し「経済(農林業等)×環境(再エネ・省エネ等)×社会(少子高齢化等)=地域経済好循環化」により「地方創生」を実現することを共通の目標とし、6自治体(参加5自治体+熊本県小国町)は地域経済好循環モデルの構築に取り組みます。各自治体は、これまで培ってきたノウハウを共有して連携、専門知識を有する民間団体(一社クラブヴォーバン 以下CV)とも連携し、共通の課題を解決していくことを目指します。

今回の企画は、今年度国からのこの交付金で、参加自治体がどのようなモデル構築のための取り組みをしていくのかのアウトプットの理想形を、首長の方々が集まって皆さんの前でコミットする、というもの。

CV自治体会員の北海道下川町・ニセコ町、岩手県二戸市・葛巻町、鳥取県北栄町からは、町長・副市長(葛巻町は町長代理)、役場の担当の方々が集まり、町長および副市長、町長代理の方が、それぞれの自治体の今年度の事業のアウトプットの理想形を発表しました。


また、「課題解決型自治体アライアンス事業」を取りまとめた下川町環境未来都市推進課の簑島さんからは事業の内容の説明と確認について、また内閣府からは、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局参事官補佐の高野さんに、平成 28 年度の地方創生の交付のポイントなどについてお話をいただきました。

CV代表の村上からは、ドイツの農村の人口500人の村民が、地域熱供給をするために出資し、銀行の融資を含めて投資、バイオガスのコジェネと木質バイオマス・ボイラーで熱と電気を自給しはじめ、12年で投資を回収して地域内経済を豊かにしている事例、また高齢化が進むドイツの小規模自治体で市民バスや市民タクシー、ヒッチハイク停留所のような形で交通の課題解決が行われている例などのインプットがありました。


CV理事で一社日本エネルギーパス代表の今泉からは、スイスで自治体職員が燃費測定を希望する市民の家に赴き、設計士でなくても簡単に入力するだけで簡易な省エネ診断ができるしくみとツールの紹介がありました。この日本版も開発されていますので、興味のある自治体にはぜひ導入をご検討いただきたいとのこと。

省エネ改修に取り組み、地域外に流出していた光熱費などのお金が、地域内の雇用に回り、豊かになる地域」。自治体が本気で取り組み、雇用が生まれ、豊かになれば、その自治体の将来も明るくなるでしょう。CVとしても、各自治体の課題解決のサポートに全力で取り組んでいきたいと思います。

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2016年

4月

27日

持続可能な発展を目指す自治体会議

 

「特別開催・持続可能な発展を目指す自治体会議」開催

新年度を迎え、「課題解決型自治体アライアンス事業」モデルが国の加速化交付金予算採択を通過したこともあり、「特別開催・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催します。

【会議の概要】

日 時:2016年5月18日(木)13:00~17:00

場 所:丸の内・東京国際フォーラム G701 会議室(東京都千代田区丸の内3丁目5番1号)

内 容:地域経済好循環のエリアモデルを設計するためのノウハウや先進事例について、とりわけ省エネ建築の分野、および小規模自治体内の交通政策等について、連携自治体の首長 及び担当職員の知識・ノウハウの蓄積等の機会と連携強化のための議論の場とします。

 

特別編『持続可能な発展を目指す自治体会議』プログラム

 

12時30分~   開場

13時00分~   主催者の挨拶と会議の趣旨の説明

            「持続可能な発展を目指す自治体会議について」

               (一社クラブヴォーバン代表 村上敦)

【第一部】

13時30分~  「建物の簡易省エネ診断と省エネ改修について」

           (一社エネルギーパス協会代表 今泉泰爾)

14時00分~  「小規模自治体における交通政策について」

         (一社クラブヴォーバン代表 村上敦)

14時30分~    休憩、懇談

【第二部】

15時00分~  「平成 28 年度の地方創生のポイントについて」  (内閣府)

       1  新型交付金について  2 企業版ふるさと納税について

15時40分~  「課題解決型・地域間連携の強化について」説明

           (下川町の環境未来都市推進課)

15時50分~  「自治体会議参加の自治体首長によるパネルディスカッション」

       テーマ:

      「課題解決型・地域間連携のプロジェクトにおけるアウトプットとは?

        どんな政策提言/規制緩和希望内容/新しい制度・予算執行のプロセスが

        考えられるか?」

16時40分~   内閣府担当者からアドヴァイス、コメント

16時55分~     閉会の挨拶

           (一社クラブヴォーバン代表理事 早田宏徳)

※ 当日のプログラムは変更されることがあります。

 

 

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「持続可能な発展を目指す自治体会議」アーカイブ

2015年、クラブヴォーバンは持続可能なまちづくりを実現するため全国の先進自治体とともに「持続可能な発展を目指す自治体会議(以下「持続自治体会議」)」を設立しました。

日本では今後急速に人口減少が進み、地域経済が崩壊し、半数以上の自治体が消滅の危機を迎えると考えられます。(参考:国土交通省「国土の長期展望」)
このような状況でも自治体の持続可能な発展を実現するためには、
 ①域外にできるだけお金を流出させないこと
 ②地域に還元できる形で価値を生み出し、流入するお金を最大化すること
 ③地域内で経済を循環させること
 上記①〜③を実現する仕組みづくりが重要です。

そこで、持続自治体会議ではエコノミー・エコロジー・ソーシャルをキーワードに、エネルギー(省エネ建築、再エネ等)・都市計画・地域資源の有効活用など様々な分野で情報交換・レクチャー・議論を行い、参加自治体がここで得られた情報やノウハウを具体的な政策や事業につなげ、上記の仕組みづくりを実現することを目指して活動します。

2016年

1月

28日

毎日新聞に持続可能な発展を目指す自治体会議が掲載されました

2016年1月28日の毎日新聞(東日本版)に、21日に開催した「持続可能な発展を目指す自治体会議(第三回)」の様子が掲載されました。

http://mainichi.jp/articles/20160128/ddm/010/040/022000c

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2016年

1月

26日

持続可能な 発展を目指す自治体会議第三回目を開催しました!

1月21日、第三回目の持続可能な発展を目指す自治体会議(以下「持続自治体会議」) を開催しました。


この会議では、「持続可能なまちづくり」を進める上での高度なノウハウや知見を持つ専門家や研究者らと、すでに先進的な取り組みを始めている全国の自治体が集まり、交流を深めています。
 
今回は、住宅の空き家問題解決・集住化、省エネ建築の推進、再生可能エネルギーの推進、過疎地・高齢化の交通インフラ対策など、人口減少・高齢化社会に向けての課題解決やエネルギー自立に向けて、専門家・研究者らから様々な視点で自治体への提案が行われました。
 
また、北海道下川町・ニセコ町、岩手県二戸市・葛巻町、鳥取県北栄町の町長や副市長、自治体職員の方々(持続自治体会議の会員)が、地域を超えた連携提案について話し合い、先進事例として鳥取県北栄町の取り組みが共有されました。
 
今回は設立から数回目の顔合わせということで、本会議の休憩中や会議終了後の懇親会の場で、参加者の皆さんが活発な意見・情報交換を行っていたことが印象的でした。
 
今年度も、会員自治体の持続可能なまちづくりの先駆的な取り組みがさらに加速するよう、事務局であるクラブヴォーバンとしてもさらにサポートを続けてゆきたいと思います。
 
ご参加、ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました!

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2015年

10月

29日

自治体相互視察 in 北海道下川町 を実施しました(持続可能な発展を目指す自治体会議)

2015年10月19日~20日に持続可能な発展を目指す自治体会議(持続自治体会議)の会員自治体の皆さんとCVスタッフ合計16人で下川町視察を実施しました。

まずは下川町役場でオリエンテーション。
谷町長のご挨拶、参加者の自己紹介、下川町の取組や将来像、戦略についてのレクチャーがありました。
下川町は人口約3,500人、町面積の88%が森林です。豊富な森林資源を活用し、循環型でゼロ・エミッションの林業・林産業、森林と企業・都市をつなぐイベントやサービス、木質バイオマスによる地域熱供給、集住化による集落再生…などなど、持続可能な発展のための様々な取組を行っています。
平成20年に環境モデル都市・平成23年に環境未来都市として選定され、数々のモデル事業を実施。
地方創生の柱はエネルギー自給で、公共施設の熱供給の60%を木質バイオマスを中心とした再生可能エネルギーに転換しています。外部からのエネルギー購入費の削減分は基金として積み立て、再エネボイラーの更新や子育て支援などに充てています。
そんなパイオニア自治体・下川町の取組の現場を見せてもらいました。

1 森林組合北町工場

こちらでは町内の森林から伐採した木を建築・土木用資材や木炭に加工しています。
こちらで行っているのはただの木材加工ではなく、1本の木のあらゆる部位を活用して加工・販売する”ゼロ・エミッション木材加工”です。
木材加工の過程で出てくる木酢液は木材の天然の防腐材に、端材やオガコは調湿剤や融雪剤に…というふうに、地域資源である木を余すところなく活用し、付加価値をつけて販売しています。
さらに、木材だけでなく枝葉も活用。トドマツからエッセンシャルオイルを抽出し、アロマオイル・ミスト、枕、石鹸などに加工して販売しています。どれもとてもいい香りでデザインもお洒落。インターネットでも販売しており、首都圏で人気を集めています。

▼エッセンシャルオイル等はこちらから購入できます(フプの森)
http://fupunomori.net/

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2015年

10月

26日

持続可能な発展を目指す自治体会議(第2回)を開催しました

2015年10月15日に第2回会議を実施しました。
前回は会員自治体と講師・スタッフのみに限定していましたが、今回は会員以外の自治体関係者をはじめ、研究者や一般の方などにもオープンなかたちで実施し、合計約70名にご参加いただきました。

特別講座では、省エネ建築・改修とエネルギーの高効率化をテーマに3つのレクチャーを実施。
ドイツのエネルギーシフトの全体像や日本の自治体でエネルギーシフトに取り組むと地域はどうなるのか?などを解説し、自治体ができる具体策について提案しました。

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2015年

3月

23日

2015年2月26日 設立会議

2015年2月26日に設立会議及び特別講座を実施しました。
概要は次のとおりです。

<特別講座>
日 時:2015年2月26日(木)13:00〜14:30
場 所:新橋CVサロン
参加自治体:北海道下川町、ニセコ町、岩手県二戸市、葛巻町、鳥取県北栄町
テーマ及び登壇者:
 公団型住宅の省エネ改修事例とその効果(CV理事 中谷哲郎)
 地域暖房とコジェネ、エネルギーの高効率化について(CV代表 村上敦)
 再エネの世界で今起きていること 風力発電の現状と展望
                   (CVコアメンバー/ウィンドコネクト代表 斉藤純夫)

詳細はこちらをご覧ください

<設立会議>
日 時:2015年2月26日(木)15:00〜18:30
場 所:新橋CVサロン
参加自治体:特別講座と同じ
テーマ及び登壇者(抜粋):
 省エネ建築の推進とエネルギーパスの活用(CV理事 今泉太爾)
 長野県環境エネルギー戦略(長野県環境部環境エネルギー課企画幹 田中信一郎)
 空き家対策とその展望について(CVコアメンバー/不動産コンサルタント 長嶋修)
 地域力を強めるニセコ町(ニセコ町企画環境課 大野百恵)

詳細はこちらをご覧ください

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2016年

1月

28日

毎日新聞に持続可能な発展を目指す自治体会議が掲載されました

2016年1月28日の毎日新聞(東日本版)に、21日に開催した「持続可能な発展を目指す自治体会議(第三回)」の様子が掲載されました。

http://mainichi.jp/articles/20160128/ddm/010/040/022000c

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2016年

1月

26日

持続可能な 発展を目指す自治体会議第三回目を開催しました!

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2015年

10月

29日

自治体相互視察 in 北海道下川町 を実施しました(持続可能な発展を目指す自治体会議)

2015年10月19日~20日に持続可能な発展を目指す自治体会議(持続自治体会議)の会員自治体の皆さんとCVスタッフ合計16人で下川町視察を実施しました。

まずは下川町役場でオリエンテーション。
谷町長のご挨拶、参加者の自己紹介、下川町の取組や将来像、戦略についてのレクチャーがありました。
下川町は人口約3,500人、町面積の88%が森林です。豊富な森林資源を活用し、循環型でゼロ・エミッションの林業・林産業、森林と企業・都市をつなぐイベントやサービス、木質バイオマスによる地域熱供給、集住化による集落再生…などなど、持続可能な発展のための様々な取組を行っています。
平成20年に環境モデル都市・平成23年に環境未来都市として選定され、数々のモデル事業を実施。
地方創生の柱はエネルギー自給で、公共施設の熱供給の60%を木質バイオマスを中心とした再生可能エネルギーに転換しています。外部からのエネルギー購入費の削減分は基金として積み立て、再エネボイラーの更新や子育て支援などに充てています。
そんなパイオニア自治体・下川町の取組の現場を見せてもらいました。

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2015年

10月

26日

持続可能な発展を目指す自治体会議(第2回)を開催しました

2015年10月15日に第2回会議を実施しました。
前回は会員自治体と講師・スタッフのみに限定していましたが、今回は会員以外の自治体関係者をはじめ、研究者や一般の方などにもオープンなかたちで実施し、合計約70名にご参加いただきました。

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2015年

3月

23日

2015年2月26日 設立会議

2015年2月26日に設立会議及び特別講座を実施しました。
概要は次のとおりです。

<特別講座>
日 時:2015年2月26日(木)13:00〜14:30
場 所:新橋CVサロン
参加自治体:北海道下川町、ニセコ町、岩手県二戸市、葛巻町、鳥取県北栄町
テーマ及び登壇者:
 公団型住宅の省エネ改修事例とその効果(CV理事 中谷哲郎)
 地域暖房とコジェネ、エネルギーの高効率化について(CV代表 村上敦)
 再エネの世界で今起きていること 風力発電の現状と展望
                   (CVコアメンバー/ウィンドコネクト代表 斉藤純夫)

詳細はこちらをご覧ください

<設立会議>
日 時:2015年2月26日(木)15:00〜18:30
場 所:新橋CVサロン
参加自治体:特別講座と同じ
テーマ及び登壇者(抜粋):
 省エネ建築の推進とエネルギーパスの活用(CV理事 今泉太爾)
 長野県環境エネルギー戦略(長野県環境部環境エネルギー課企画幹 田中信一郎)
 空き家対策とその展望について(CVコアメンバー/不動産コンサルタント 長嶋修)
 地域力を強めるニセコ町(ニセコ町企画環境課 大野百恵)

詳細はこちらをご覧ください

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