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エネルギー自立地域経済好循環 × イノベーション 
                 持続可能なまちづくり

PJ80セミナー関西第1回「ドイツのエネルギーシフトから考える日本の省エネ住宅の展望」を開催しました!

関西初となるPJ80セミナー第1回目のテーマは、5月26日「ドイツのエネルギーシフトから考える日本の省エネ住宅の展望?!」。クラブヴォーバン代表の村上敦のほか、ゲスト講師に住宅専門誌「新建ハウジング」発行人・新建新聞社社長の三浦祐成氏と、日経アーキテクチュアで省エネ住宅関連情報を連載中の、松尾設計室の松尾和也氏をお招きし、ドイツやヨーロッパの先進例から見る、日本の住宅や住宅産業の問題点や課題についての講演とパネルディスカッションでした。

まずは代表の村上より、ドイツの再エネと省エネの最新情報。日本の再エネ推進は、市民ではなく地域外の大手企業が主導し、住民の合意を得ず森林を乱開発したりして、住民の心象を悪くしている例が多くありますが、ドイツでは森林の用途を変えるときには議会の承認を得なければならないので、そのようなトラブルは起こりません。また、ドイツの数多くの自治体では、省エネに最初に取り組み、そして次のステップで再エネの普及と平行して地域熱供給の事業を実施しているとのこと。そしてEUでは、政令によりニアリーゼロエネルギー(=超低エネ建築)建築様式(※)への移行が進められています。

※ニアリーゼロエネルギー建築様式:暖房・給湯・冷房・換気・照明におけるエネルギー消費量を究極的に減少させ、それと同時に建物内における再生可能エネルギー相当で賄うこと

次に松尾さんより、日本の住宅と住宅業界の問題点。日本の住宅は、耐震基準はできたものの、耐久性の基準や断熱の基準もなく、30年経てば資産としての価値はゼロ。欧州では、改築し続けることで住宅としての資産価値は下がりません。日本の大学で建築を学んでも、耐震・温熱・内部結露など総合的な観点で見てまともな40坪の普通の戸建住宅を建てられる建築家を育てられる大学は、ほぼないと、教育の問題点も指摘されました。西側に大きな窓を作らないといった基本的なことすらも、知らない設計士が多いのが現状とのことです。

次に、三浦さんより2020年の住宅予測。今後、所得格差が進み、日本経済が低迷し、新築戸建住宅でなくていい、という若者が増え、中古住宅の供給が2020年あたりで新築戸数を抜くのではないか、とのこと。医療・教育・自然などの人が人間らしく生きるための社会共通資本については、資本主義・市場競争にまかせすぎると全体最適ができなくなります。住宅は個人資産、という考え方もあるが、景観なども含め住宅も共通資本でもあると思うとのこと。今後国としてZEHを進めていくので、フォーム市場が増えるが、大手メーカーさんと差別化できるいい住宅を作り改築し、正しく高く売ることで、地域経済を活性化することともつながっていきます。CSV経営、つまり三方よし(売り手・買い手・世間)の経営をし、本業を通して地域に貢献していきましょう、という話でした。

最後に3人とクラブヴォーバン代表理事の早田によるパネルディスカッション。ようやく国によってBELS(第三者機関による建築物省エネルギー表示制度)がスタートしましたが、5段階評価の一番厳しい基準が、断熱性能を表すUA値0.6で適合とされてしまうこと(小さいほど性能がよく、欧州基準では0.28)、UA値が表示されないこと、など問題点があげられました。車がリッターあたり何キロ走る、冷蔵庫1時間あたり何w電力が必要、などの表示のように、住宅も性能で選ぶ人のために、5段階評価ではなく数値を表示することが望まれます。また、少子高齢化と所得格差により新築を購入する人が今後減っていくことが予想されるので、将来は断熱に優れた集合住宅の需要が増えていくだろう、とのことでした。

今回の関西初のセミナーでは、多種多様な業種の西日本のさまざまな府県の方にたくさんお集まりいいただき、大盛況でした。今後も「持続可能なまちづくり」に関心のある方々が業種を超えて繋がれる機会を、クラブヴォーバンとして企画していきたいと思っています。

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