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エネルギー自立地域経済好循環 × イノベーション 
                 持続可能なまちづくり

環境省内で6月26日「特別篇・持続可能な発展を目指す自治体会議@環境省」を開催しました

 

昨年12月の持続会に参加された森本氏(当時 環境省大臣官房長・現 事務次官)からのご提案もあり、今回は持続会を環境省内で開催させていただきました。

 

持続会自治体会員の皆さまと進めてきた取り組みである「地域経済好循環」モデルの事業について、環境省の職員の方々に発表し、意見交換を行いました。環境省からは、地球環境審議官や大臣官房長、課長や課長補佐、室長など多くの方々が参加され、交流の場としてもよい機会となりました。

 

 

第一部の特別講座、まずは代表の村上より「“kWh=¥”のコンセプトで活動する持続会について」 。ドイツで2010年に策定されたエネルギーシフトの目標値は、一次エネルギー供給量を2050年までに半減することとし、省エネと再エネはセットで進められています。そのためドイツでは、温室効果ガス排出の削減をしながら、かつGDPも成長する経済活動が行われていますが、日本では残念ながらその2つが連動してしまっています。


持続会では、温室効果ガス排出を削減しながらかつ域内GDPを増加させるための「地域経済好循環モデル」の構築を目指し、1)省エネ建築 2)建物設備 3)家電 に取り組んでいます。会員自治体ですでにこれらを実装した「結果」や実装しようとしている「検討」において、簡易モデルを作ってみて中身を共有し、その後新しい実装に向けて検討するために、域内GDPの基本的な考え方として前提となる数値等を設定して持続会で共有し、それを基に計算しました。今日は環境省の職員さんに向けて、自治体の担当者の方々にその発表をしていただく、との内容でした。

 

 

次に、下川町環境未来都市推進課の蓑島氏より「“地域経済好循環モデル”構築の背景と小規模自治体間アライアンスの意義」について。日本全体が人口減少社会へ向かう中、今後人口は東京圏へ一極集中、地方地域は大幅減が予測されます。地方の小規模農山漁村地域が持続的に発展し続けるためには、人口減少の局面を迎えても、域内の総合資産に目を向け、それを有効活用し域内で価値創造することで「持続可能な地域社会」を構築することが重要。一方、小規模自治体は、専門知識を有する人材が少なく、地域資源を活かした環境・エネルギー分野等の取組と経済好循環化を有機的に結びつける知識・技術・ノウハウが乏しいことが共通の課題でもあります。各自治体が培ってきたノウハウを共有し連携をするとともに、専門的知識を有する(一社)クラブヴォーバンと連携し取り組むことで、さらなる進化を遂げ実現を目指しています

 

参加自治体の地域経済循環率は、下川町の46.1%~二戸市の87.2%。漏れるバケツのように地域外に流出しているこのお金の、漏れを塞ぎ循環率をUPさせることを目的として、H27年度に、経済(農林業等)×環境(再エネ・省エネ等)×社会(少子高齢化等)の好循環化により「持続可能な地域社会」を実現することを目的に、「持続可能な発展を目指す自治体会議」を設立しました。H28年度は「地域経済好循環化政策の社会実装」、H29年度は、実装に向けた深化、新たな分野での見える化(交通・通信データ)に取り組んでいます、とのこと。

 

 

次に、環境省大臣官房長の森本氏から、「環境から拓く、経済・社会のイノベーション」として、環境省の現在の取り組みについて。環境省としては、環境政策の展開による社会経済の課題解決を、地域レベルで実践する支援をしたい。経済・社会課題が深刻化・複雑化する現在においては、環境政策の展開にあたって、経済・社会課題の解決も同時解決できる効果をもたらせるような政策を発想・構築することが重要です。そのために地域と環境省のパートナーシップが目指す方向性は 1)同時解決 2)持続可能な開発目標(SDGs) 3)パリ協定の発効 3つのキーワードをもとに、地域でいくつかの解決事例紹介がありました。

 

クラブヴォーバンの会員自治体は、いずれも小規模な自治体で、人口減少や高齢化などの地域課題が、都市よりも早く顕在化・深刻化してきた課題先進地であるが、一方、再エネをはじめとした豊かな地域資源を持つ強みがあるため、「環境から拓く、経済・社会のイノベーション」の先進地となるポテンシャルもあります。地域レベルで、環境政策を通して地域課題を克服するノウハウやヒントを、“小規模自治体から学ぶ”のが地域づくりの大きなトレンドの1つとなると考えられます。地域レベルの取り組みの深化のために環境省の持つ政策ツールを、共創し使いこなすという視点から、地域と環境省とのパートナーシップを捉え、会員自治体をはじめとした地域と環境省とのパートナーシップをさらに深化させたい、とのことでした。

 

 

本会議では、「地域経済好循環モデル」策定の報告と会員自治体の取り組みについての発表がありました。鳥取県北栄町住民生活課、藤江氏から「町内のLED灯への入れ替え事業の評価について」、北海道下川町保健福祉課、仲埜氏から「冷蔵庫の入れ替え事業OR省エネ新築の助成事業の評価について」、岩手県二戸市 総務政策部政策推進課、五日市氏から「二戸市型超省エネ住宅新築の助成事業の検討について」、北海道ニセコ町建設課都市計画課、金澤氏から「住宅省エネ改修事業の評価について」。それぞれの自治体より、モデル計算に従い、補助金をどの事業にいくら投入することにより、○年後にどれくらいのコスト削減と域内GDPが上昇する、という数値とともに、ユニークな取り組みについて発表いただきました。

 

これまでは行政が、例えば100万円の助成措置を行う場合に、数年先まで見てこれまではどれくらいが地域GDPとして循環するかということを考えないまま感覚的に行ってきました。この「域内経済好循環モデル」構築の狙いとしては、町が助成措置を行ったときに、同じ予算の中でどこに優先的に振り分けたらいいのかというのを、なんらかのプロジェクトの後に簡易的に検証できるツールがほしい、ということで、この持続会でモデルの構築をやってきました。今後後少子高齢化が加速するほとんどの自治体において、町のお金は有限なので、限られたお金の中で、その町にとって地域経済の中で最も有効だと思われる対策に、お金を振り向けていく必要があります。行政の担当者が日常業務の中で使えるものとして簡易的なモデルを構築しましたが、もし環境省さんからこのモデルを使ってほしいというような提示があれば、今後自治体の方々もやりやすいのではないか、との意見が出ました。

 

 

また村上からドイツの事例として、①電気温水器 ②古い冷蔵庫 ③シングルガラスとアルミサッシ この3つについては「あってはいけないもの」なので、ドイツの環境省でも、低所得者向けの福祉事業として、冷蔵庫の買い替えにおける助成措置を行ったり、ドイツのプロテスタント教会でも、スポンサーを集め、失業者やシングルマザーなどの貧困層を優先的に回り、「うちエコ診断」事業を実施したりしているとのこと。貧困層からまず、この3つへの対策をしていく必要がある、との提案がありました。

 

また参加者から、「省エネ住宅の新築や改修は、住民がどれくらい知っているかでニーズが決まってくるが、『省エネ住宅は、エネルギー削減だけではなく、快適性や健康にいい』という知識を住民が知らないので、“クールチョイス”されない。環境省でクールチョイスを普及する補助金がある。子どもたちへの環境啓発もいいが、大人向けにこういう省エネ住宅の啓発事業も環境省に応援していただきたい」との意見も出ました。

 

最後に地球環境審議官の梶原氏から、「環境対策を進めていくための判断基準をしていくために、今日は貴重なフロンティアの事業をいくつも聞かせていただき非常に勉強になった。日本の省エネ住宅の基準が低いという話は、言っていった方がいい。こういう議論は、我々にとっても絶対にプラスになるので、今後もぜひ続けさせていただきたい」との締めくくりの言葉をいただきました。