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持続可能なまちづくり × エネルギー自立地域をめざす全国ネットワーク

第12回 市瀬慎太郎(クラブヴォーバン理事 / そらべあ基金理事 / エネルギーパス協会理事 / イーソリューション株式会社代表取締役)

クラブヴォーバンの拠点、新橋のオフィスで活躍する市瀬慎太郎さん。彼は、場所の提供からさまざまなイベントの企画、運営、そして教育コンテンツのプロデュースまで、裏方としてグループに欠かせない存在になっています。

かつて老舗の紙の卸業をしていた市瀬さんが、なぜ持続可能なまちづくりに携わるようになったのでしょうか。現在の主要な仕事である環境教育にかける思いについても伺いました。

■紙屋から環境活動へ
Q:紙の販売を広げるためのツールだった「環境」が、どうして本業になったのでしょうか?

環境活動を手がける流れの中で、環境NGOや林野庁、林業家の方などとも協力して、日本の森林を守りながら紙の新しい可能性を探る、さまざまな活動に力を入れるようになりました。そのうちに、本業よりもそちらをメインにしたくなりました。

そして2007年に独立して、「㈱イーソリューション」を設立することになります。イーソリューションの主な収入源は、企業からの企画料とコンサルタント料です。企業の社会貢献活動(CSR)について相談を受け、場合によっては企画も実施しています。

例えば会社の設立当初には、コンビニエンス・ストア「ミニストップ」の割箸を国産材にするプロジェクトを実施しました。最近増えているのは、企業が主催する子ども向けの環境教育の開催です。大手セメント会社の例ですが、その会社では、ビルを解体する際に出る廃棄物や焼却ゴミの灰、一般家庭から出るゴミなどを、セメントの原料に利用しています。それを子どもたちにわかりやすく解説するための授業や教材をつくります。子どもたちにわかりやすい教材は、大人からも好評を得ています。

 

人と人とをつなげる
Q:クラブヴォーバンとの関わりや、現在の役割について教えてください。

主に、クラブヴォーバンでは、メディアやイベントなどを通じて、人と人とをつなげる役割をしています。当初は、住宅とかまちづくりについては興味がありませんでした。2005年、環境活動を通じて知り合った早田宏徳さんが作ったモデルハウスを訪れ、耐震性や断熱性能を体感したとき「これはすごいな!」と価値観が変わりました。

また、村上敦さんの話を聞いて、「持続可能なまちづくり」という概念にすごく共感しました。自分がやってきた環境の分野と住宅やまちづくりが、こんなにつながっているのかと驚いたんです。だから早田さんや村上さんたちがクラブヴォーバンを立ち上げて、日本にも持続可能なまちを作ろうと言ったときに、自分も参加しようと決めました。

 

とはいえ、村上さんはドイツ、早田さんは名古屋というふうに、中心メンバーは東京にいません。そこで、東京に会社を持っているぼくがクラブヴォーバンの東京事務局も兼ね、東京でイベントをする際にお手伝いするという形で始めました。具体的には、イーソリューションの事務所と共有する形で、クラブヴォーバンやエネルギーパス協会など、さまざまな関連会社がオフィス機能を置いています。クラブヴォーバンには、暮らしやまちづくり、エネルギーなどに関する世界最先端の情報が集まってきます。それをいかに広めていくことができるか、という意味でぼくが貢献できる部分もあるのかなと思っています。

人と人とをつなげるSDGsを広めるカードゲームを製作
Q:社会の環境意識を高めるためのゲームも作成されたそうですが?

2015年に国連で、SDGs(※)という持続可能性を高めるための17の目標が定められました。このSDGsの認知度を高めていくことで、環境教育とか持続可能なまちづくりが進んでいくと考えています。企業でも、CSRの部署の人はSDGsについてだいたい知っているのですが、それを本業に照らしてどう活用すればよいかはわかっていません。また、その会社の管理職の方は、SDGsというキーワードそのものをほとんど知りません。一般の方はなおさら知らないと思います。だから、まずはその認知度を高めることが大事だと思います。

多くの方に知ってもらうツールがあればという面白いのではと考えて、クラブヴォーバンが主体となってSDGsをテーマにしたカードゲームを開発しました。現在は、自治体版と企業版の2種類ができたところです。中でも自治体版は、村上敦さんの書籍『キロワットアワー・イズ・マネー』をベースにしたもので、自治体の方にも意見を伺ってつくりました。

 

適切な政策を実施しないと人口がどんどん減っていくという、人口減少社会のリアリティを反映したものになっています。財政が破綻したり人口が50%以下になったら負けになります。やっていただいた方の反応はかなり良いですね。こういうゲームを通して、どうすれば自分の町が持続可能になるのかと真剣に考えてもらえればと思います。ゲームは、自治体が主催して市民に参加してもらうという使い方もできます。こんなふうに、世の中に今までなかったものを生み出していくのは得意だし、好きですね。

 

※SDGsは、2015年に開かれた国連サミットで採択された、2030年までに達成するべき持続可能な開発のための17の目標。17の目標では「貧困をなくそう」「気候変動に具体的な対策を」といった大枠を定められ、さらに具体的な169のターゲットが挙げられている。

■企業や自治体を通じた環境教育を
Q:持続可能な社会を実現するには、何が大切だと思いますか?

特に大切なのは教育です。これまでは、企業から依頼されて環境教育をしてきたのですが、先日、クラブヴォーバンの自治体会議に参加している熊本県小国町の中学校で、環境教育の授業をさせてもらいました。小国町は、森林の効果的な利用や持続可能なまちづくりに取り組んでいますが、子どもたちは自分の町の活動を知りませんでした。

でも、中学生はその活動の意味をちゃんと理解すれば、すごく良い反応をしてくれます。地域の将来を担う子どもたちが地域の環境を意識することはとても大切なので、今後もこのような機会を増やしていければと考えています。