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持続可能なまちづくり × エネルギー自立地域をめざす全国ネットワーク

10月18日「第8回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

クラブヴォーバン正会員8自治体のうち、北海道下川町・ニセコ町・熊本県小国町が今年度「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」(全国で10都市)に採択されたことを受け、そのモデル事業についての構想と進捗状況を、正会員と情報共有していただきました。

また、インプットについては、地域における高付加価値林業のあり方や、今後全国の自治体で大量に発生してくると思われる老朽化した公共建築において、改修や建て替え検討の際の高性能化のためのポイント住宅の温熱環境と人権についてなど、盛りだくさんの内容でした。

まずは地域政策デザインオフィス代表理事田中信一郎氏から、「公共建築、非住宅建築の高性能化のためのポイント」について。多くの自治体で「持続可能なまちづくり」に取り組もうと思うなら、まずは「公共施設の持続性の向上」に手を付けてほしい。これをやらないで、住民に対する意識向上の啓発をやっても本末転倒だ、との第一声。そして庁舎、教育(学校など)・福祉(保育園など)・衛生(ごみ処理施設など)施設、文化・スポーツ施設、公営住宅などの公共施設を持続可能にするには、立地・稼働・寿命・トータルコスト(イニシャル+ランニング)・パリ協定の視点が必要です。EUは2019年1月1日から、域内で建てる新築の公共施設はニアリ―ゼロエネビル、つまり、設備など使わなくても躯体だけでゼロエネルギーに近づける建物が義務化。建物のエネルギー性能を高める優先原則は、まずは断熱。次に、気密、日射コントロール、換気、通風、設備、再エネ熱、再エネ電気。この優先順位を、間違えないことが大事で、公共施設の新築・改修をオープンにして行い、地域の事業者などと研究会を構成し、公共施設を題材にして技術力を高めることが重要、との話でした。

 

次に、約40年林業に携わり、農水省や環境省などの委員などを歴任してきた速水林業代表・FSCジャパン副代表の速水亨氏から「速水林業の紹介と日本の林業における持続可能な将来像」について。速水林業は1790年からニ百数十年、紀伊半島の南部や尾鷲で林業をしており、自社保有森林1070haとトヨタ自動車所有の1700haの森林も管理。速水林業の森林経営理念について。一番大事なことは、まず地域住民に理解してもらえる経営をする、そして環境的に豊かで美しい森林を残すこと。また、森林経営は、人間がすべてで、いかに現場の職員をしっかり育てるかが、林業の一番の問題、とのことでした。そして長年にわたり適切な間伐を続けてきた結果、ヒノキの年輪が中から外までほぼ均一で価値の高いヒノキ材を生産できること、また大型の海外の機械や適切な森林作業場を導入した間伐の生産性の向上、FSC認証を取り入れることなど、速水林業のこれまでの特徴的な取り組みを紹介。また、来年4月から新しい法律ができ、これまでの森林所有権の上位に森林管理権を作り、これを市町村が持つことになるので、所有者がちゃんと管理しない場合に市町村が入り、業者に森林管理をさせることができるようになる。これは市町村にとってはチャンスなので、市町村の人たちが勉強して、自分たちの地域の森林をどう作っていくかということから、今ベストの管理を市民の人たちと一緒に考えてやっていくのがいいと思う、とのことでした。

次に、関東弁護士会連合会環境保全委員会委員も務める弁護士岩崎真弓氏より、「住宅の(温熱)環境と人権」について。これまで、里山やダム、311後の脱原発や再エネ普及など環境に関わる問題など勉強会を開き、法的に提言できることがあれば提言をしてきた。最近は省エネも重要と認識し、特に住宅の断熱をテーマに勉強会をしている。断熱を勉強する中で一番問題になるのは、健康問題。入浴中に突然死する人は圧倒的に冬に多いが、都道府県別で見ると、もっとも寒い地域であるはずの北海道が、46位!北海道は冬でも室温が高いから、沖縄の次にリスクが低い。熱中症の危険性は広く知られているが、じつは低体温症(凍死)の方が、死者数は熱中症の1.5倍。室内で凍死するのだから、室温というのはまさしく、憲法上の人権問題。既存の法律で室温に関しての法律があるにはあるが緩い。ドイツでは室温規則や労働者保護で、かなり細かく室温が定められており、例えば厳冬期に住宅の暖房施設が故障すると賃料が全額減額できるなど、住民の権利が守られている。一方日本においては、これまでの判例からしても、適切な室温を享受する権利というのはあまりにも軽視されているように思う。2020年の適合性義務化で、断熱に関しての権利性や裁判所の判断も変わるのではないかと期待している、との話でした。

そして今回、「SDGs未来都市における構想とプロジェクト」のテーマで、今年度国から「SDGs未来都市」に選定されたクラブヴォーバン自治体正会員の下川町・ニセコ町・小国町、ゲストで鎌倉市からの取り組み発表と、二戸市によるPPPによる取り組みの紹介。4つのSDGs未来都市の共通点は、選定されるために特に何かをした、ということではなく、環境モデル都市として、環境問題に長年取り組んできた積み重ねが評価された、とのことでした。そして、SDGsを地域内外とのコミュニケーションやブランド発信のツールとして、他地域や企業、市民など多様な連携を進めて行きたい、とのことでした。環境省からも省の白書や方向性、予算などの説明がありました。

北海道下川町政策推進課SDGs推進戦略室長 蓑島氏:下川町は「持続可能な森林管理・生産」がまず町の中心に来て、廃棄物をできるだけ出さないゼロエミッションの木材加工、最近は森林環境教育や森林セルフケア、林地残材を使った地域のエネルギー自給と低炭素化、エネルギー自給を核としたコンパクトタウンの実現、集落の再生、といったことに統合的に20年、森づくりでは半世紀以上取り組んできた。最近では人口減少率も緩和されてきており、ここ5年では人口転入超過の年も。小さな町なので、本当にパートナーシップが重要。さまざまな協議会や協定などを通じて、全国の地方自治体や企業・団体などと連携していく。

北海道ニセコ町企画環境課自治創生係長 川埜氏:ニセコ町は、世界的なスキーリゾート地として観光客は年々増加、人口は約4600人からここ10年ほどで人口約7%増加。1シーズンで64万泊もの観光客滞在があり、町外から町内に働きにきている人で町に住みたいが住めない人がいるので、将来的に5600人まで人口増加を想定。ニセコのまちづくりを語る上で重要な考え方、有島武郎の遺訓「相互扶助」をもとに、防災センターを兼ねた環境配慮型のニセコ町庁舎の新築やSDGsモデル都市事業に選ばれた「NISEKO生活・モデル地区構築事業」で環境配慮型の集合住宅の建築促進などについて、クラブヴォーバンと共に取り組み中。モデル地区構想は、市街地に隣接している土地を、単なる分譲地ではなく、住むことが誇りに思えるようなNISEKO生活を象徴する生活空間、生活形態まで設計された地域として開発し、高い基準での高気密・高断熱住宅を整備して義務化、外に流出しているエネルギーコストを、そこに住む人の資産形成として振り向けていく。

熊本県小国町環境モデル都市推進係長 長谷部氏:九州大陸のど真ん中、熊本県の最北端にある町。南国だが標高が高いので冬はとても寒く、面積の約8割が山林、農業・林業・観光業が中心。地熱と森林資源に恵まれた町なので、それを活かした地域振興を行っていくヴィジョン。太陽光発電や蓄電池、薪ボイラーを入れたエネルギー自立型避難所を作ったり、林地残材を地域通貨で買取する「木の駅プロジェクト」を始めたり、地域新電力会社(PPS)を設立したり、地熱をあちこちに引いたりといった取り組みをしてきた。小国町のSDGs未来都市計画は、簡単にまとめると「環境を守りつつ、地熱・森林資源で儲けすぎない程度に儲けながら、社会を潤わせていこう」ということ。今年度クラブヴォーバンと、環境省のクールチョイス事業で、省エネ住宅普及事業を年間通して実施中。

鎌倉市共創計画部企画計画課担当係長 青木氏:東京から1時間、横浜から30分の歴史的遺産や自然を身近に感じられる首都圏のオアシスとして、人口17万人、年2千万人以上の観光客が訪れる緑の多い町。高度経済期に住宅造成ラッシュでかなり緑が削られ、日本初のナショナルトラスト地ともなった50年前の御谷騒動と呼ばれる住民による開発阻止運動など、市民の環境意識が高く、今でも市民がボランティアで山林管理をしている所が多い。「働くまち鎌倉」「住みたい・住み続けたいまち鎌倉」を二本柱に、職住近接による豊かな暮らしを実現、若年層の流出を防ぎたい。今年7月に日本初となる「Fab City宣言」を行い、ものづくりによる地域活性化、世界に発信をしていきたい。

岩手県二戸市総務政策部政策推進課主任 工藤氏:2030年「人が輝き 未来をひらくまち にのへ」を目指す。人口減少、市税や交付税の減少、まちの魅力や真に魅力的な雇用や生活の場の不足があり、地域経営課題解決のため、関係団体や民間企業、金融機関と連携し、稼ぐ民間を行政が支援する公民連携事業に取り組むことに。「まちづくり会社」を7月に設立、老朽化した市営の温泉施設のリニューアルに合わせて複合開発、これまでなかった宿泊や飲食の施設を併設、隣接するプール・公園の新しい使い方など「訪れてみたくなる」新しいコンテンツを開発中。建物は、Ua値は0.3~0.4W/m2Kの高断熱・高気密で建物全体の光熱費を抑えるよう配慮。構造は木造2階建て、地域産材を使用、既存チップボイラーを活かし再エネ活用予定。従来の委託手法だと、市がほとんど費用負担して指定管理業者を探し、指定管理料を払い続けることになるが、官民一体運営方式だと市の負担を減らし大きな事業ができる。金融機関のしっかりした審査を受けることで、筋肉質な事業計画を立てられる。

環境省大臣官房環境計画課課長補佐 金井氏:環境省白書にSDGsが入り、環境分野も、経済と社会の地域の課題解決と、統合的に取り組んでいこうということが環境基本計画に盛り込まれ今年閣議決定された。資料にある「地域循環共生圏の創造」で足りないところを補完し合ったり、強みを生かし合ったり、これがSDGsのパートナーシップや持続可能な地域づくりにもつながり、環境負荷の低減にもつながっていく。このクラブヴォーバンの持続会の活動も、こういう考え方を入れていくとさらにブラッシュアップしていくのではと期待している。SDGsにある「誰一人取り残さない社会」というのは、行政依存をより高めるような誤解を生まないか心配。うまくいっている自治体は、住民が「自分ごと」として意思決定に関わっているから、持続可能な取り組みになっている。この持続会の自治体の人たちはこの理解が深まっていると思うので、ぜひ全国に横展開してほしい。

最後に、クラブヴォーバン代表村上敦より、「ニセコ町における環境アクションプランとその住民参加について」。これまで「環境」と言われていたのに「SDGs」へ。これまでこの持続会に参加された自治体の方は「環境モデル都市」が何をしなければいけないかわかっていると思うが、それがSDGsに変わることになり、これまでの「環境」だけから「持続可能性」の考慮まで必要になった。SDGsの持続可能性の三角形は、「環境」「経済」「社会」。「社会」が入ってくる意味とは?これまでの「住民参加のレベル」を突き抜けないと、社会の持続可能性をモデル地域として模索しているとは言えなさそう。ドイツ/ヴォーバン住宅地で実現されたときのように、「拡大住民参加」の実現が鍵。ニセコ町の環境モデル都市アクションプラン策定事業に、クラブヴォーバンが手を上げ厳正なプロポーザルの結果、委託を受け、実際に住民参加を行っているので、事例として紹介。これまでのニセコ町の環境モデル都市アクションプランのやり方では、CO2の排出は増え続けている。理由は、人口と観光客が増えているから。今のままでは、CO2排出を減らせる見込みがない。なのでニセコの新しいアクションプランを考えるために、我々がこの夏ニセコでワークショップ・住民アンケート・住民説明会を実施したが、従来の方法ではなく、①目的を定義 ②枠組みを確定 ③自分の立ち位置を確認することで方針を整理 ④方法(取組内容)を確立 ⑤あとは邁進するだけ という「方法」の部分は我々が決めて実施。結果、私たちの推測・仮説では分からなかった問題点や住民の不安を拾うことができた。現在ニセコ町と進めているので、来年度またみなさんに面白い話をシェアできると思います。

 

今後、持続会メンバーの自治体で、企業との連携や、再エネ条例策定などの取り組み、FIT切れの町営風力発電の更新問題などいろいろ話題がありますので、ぜひこの持続会で共有し議論していきましょう。