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エネルギー自立地域経済好循環 × イノベーション 
                 持続可能なまちづくり

1月24日「第9回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

これまでの持続会で、「持続可能なまちづくり」のために、様々な角度からのインプットを行ってきましたが、公共建築を含めた省エネ建築に関連する実装を予定している正会員自治体が多いため、この分野を再度ブラッシュアップすること、また今回はソーシャルファイナンス太陽光発電の日本・世界の最新動向自治体新電力などのインプットを行いました。

また、担当者が相互に自身の自治体における過去の公共施設の更新における現状、悩み等の状況を率直に報告し合い、他の正会員と議論しました。さらに、新規で埼玉県小鹿野町から正会員自治体として加入いただくこととなり、町長より町の概要やこの持続会の場を通して解決していきたい課題等について、発表いただきました。  

まずは、震災の時に経産省でエネルギー政策立案に従事し、のちに退職され、ベンチャーキャピタルの立ち上げ運用にコンサルタントとして関わり、現在は地方創生や社会的インパクト投資推進などに携わっている(株)ウィルフォワードの陶山裕司氏から、「持続可能な暮らしに向けて~新たな金融の潮流:ソーシャル・ファイナンス」について。この数年で急激に増えているESG投資や社会的インパクト投資、SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)などのソーシャルファイナンスについて、従来の金融との違いや今注目されている背景、具体的な事例についての解説がありました。

 

次に、独立行政法人産業技術総合研究所櫻井啓一郎氏より「今後の太陽光発電の世界、日本での動向」について。太陽光発電など再エネを進めるポイントは以下の3つと指摘がありました。①将来コストが読めない化石燃料(石油・石炭・ガス)の価格高騰リスク、②地球温暖化(科学的・国際政治的に対策は不可避)、③経済・産業の環境変化(再エネ、特に太陽光の劇的コスト低下など。新しい市場創出)。化石燃料は高騰しており、日本は近年、年に23~28兆円も燃料の輸入をしています。世界の新設発電所の主流はすでに再エネにシフトしています。国際エネルギー機関IEAでも、太陽光や風力のような変動性電源を大量(25~40%)に使うことは、長期的コストを大きく増やさず可能である、と実績に基づいたレポートを出しています。ただし、日本の太陽光発電は高い(事業者毎におけるコストのばらつきが大きい)ため、太陽光発電システムを安く供給できるトップクラスの技術を普及させることが急務という指摘がありました。

 

次に、元下川町職員で今は全国のいくつかの自治体の新電力立ち上げに携わっている、一社集落自立化支援センター仲埜公平氏より「地域循環共生圏と地域電力」について。地域電力においては、各地域がその特性や資源を活かし、自立・分散型の社会を形成し、地域資源の価値を循環させる「地域環境共生圏」の考え方が大切です。地域が投資する地域新電力で売電し、利益を生み出し、その利益で地域の事業や公益的サービスに再投資する流れができると素晴らしい。市民の電気代支払額を(世帯数 × 電気代 1 万円/月 × 12 ヶ月)で計算すると、2000世帯の自治体で年に2億4千万円。さらに、公共施設の電気代は、自治体によっていろいろですが、いくつかの自治体を調べると住民一人あたり6~8千円もの負担があります。この分を地域新電力で賄うことが当面の目標とされるのでは、との話でした。

 

そして今回は自治体会員間で悩みや現状を共有し、今後の各自の自治体における参考にすることを目的に、「自治体における公共インフラとその更新について、悩み共有と議論」のテーマで時間を設けました。会員各自治体から、「老朽化した庁舎や小学校など公共施設の建て替えや改修」「将来の人口減少を見据えた施設の統合や複合・集約化」「それらを具体的に実行に移していくためのロードマップやスケジュールの作成や住民への説明」「公共施設管理に関わる部署間での情報共有の難しさ」「公共建築改修時に工事予算を抑えたために却って追加の工事費用が掛かってしまった事例」など、悩みや事例が共有され、それに対して活発な意見が交わされました。

その後、㈱日本エネルギー機関代表中谷哲郎氏より、「長野県 建築物の省エネ性能簡易診断ツール」について。長野県ではH26年度から「建築物環境エネルギー性能検討制度/自然エネルギー導入検討制度」が導入され、長野県で新築住宅を建てるときは、建物エネルギー性能を診断の上、検討することが義務化され、省エネ建築が推進されています。中谷が理事を務める一社日本エネルギーパス協会では今年度長野県から「簡易版エネルギーパス」のツール作成の委託事業を受けました。従来の建物エネルギー性能を診断する「エネルギーパス」ツールでは結果の精度は高いものの、入力に数時間かかるため、簡易版では10分ほどで入力できるように簡素化し、簡単な診断レポートにおいて性能ランク(6段階)、Ua値、年間の光熱費などが、概算値として表示することを可能としています。これによって、地域の工務店は新築だけではなく、既存住宅の改修案を提案・施工できるようになるため、今後長野県の中古住宅の性能の底上げにもつながる可能性もある、との話でした。

 

最後に、クラブヴォーバン代表理事の早田宏徳より、「公共建築の省エネ化提案 ニセコ町での取組事例紹介」の発表がありました。ニセコ町で今年度に取り組んだ様々なプロジェクトを紹介した後、とりわけ移設・新築を計画している新庁舎については、改善提案を行い、役場、設計事務所と議論を続けたことで、最終的な建築仕様として、UA値で0.18 W/㎡・Kという高性能な建物躯体が実現されることになった経緯と結果、影響についての紹介がありました。新築でも、既存の改修でも、公共建築物(とりわけ庁舎や学校など)の省エネ化によって、地域全体の省エネへの気運を高めることができ、また対策の分野も「運用方法」「外皮性能の強化」「設備の改善」など多数の選択肢が可能なので、町のシンボルとなるような省エネ建築物を作り、各自治体の省エネ化が進むことを願っている、と総括されました。

 

また、今回は埼玉県小鹿野町から森町長が町の概要や今抱えている課題についての説明、そして持続会に入ってぜひ町の課題をみなさんの話も参考にしながら解決していきたい、との決意を話され、他の会員の了解とともに、来年度より自治体正会員として活動されることになりました。これで持続会の自治体正会員は、下川町、ニセコ町、二戸市、葛巻町、雫石町、横瀬町、北栄町、小国町(北から順)に続き、小鹿野町で9自治体となります。持続会では設立当初から、人口小規模で、かつ持続可能な発展を目指すために熱心な取り組みを行うことを決めている、約10自治体で、密な交流活動を行うことが決められています。