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持続可能なまちづくり × エネルギー自立地域をめざす全国ネットワーク

PJ80セミナー特別篇「改めて考える地域とエネルギーの処方箋」を開催しました

今回の講師は、昨年のPJ80セミナーでも大好評だったドイツ・ベルリン在住でクラブヴォーバンPTメンバーの西村健佑氏が帰国し登壇し、満席となりました。西村氏は、欧州エネルギー市場・政策に関するコンサルタントや調査を手がけ、ドイツのVPPやIoT、セクターカップリングなどの欧州の最新のエネルギーの政策やビジネス状況などについて精通しており、今回も会場は満席となりました。

再エネといえば、日本では都市の大企業が地方の森林を大規模に伐採するような乱開発で、地域住民から反対されるようなケースを耳にしますが、再エネ施設が地域住民にとって「迷惑施設」であることはドイツでも同じ。ドイツでは今や全電源に占める再エネの割合が40%を超えるようになってきましたが、どのようにドイツでは、再エネが地域住民に受け入れられるようになってきたのでしょうか?

 

まずは、島根県で太陽光や小水力など自然エネ拡大に取り組んでいる、コミュニティエナジー株式会社の南原順氏より、国内の自然エネの地域課題について。全国でFIT認定数が少ない方の中国地方でも、FIT設備等を含む民間の発電所が増えており、市民にとって家から太陽光発電所が見えるなど、発電所が身近な存在になっています。しかし、震災前は自然エネルギーに対する住民感情が「無関心」であったものが、震災後「“環境によいこと”なら、“原発は不安”だし良いのでは」となったものの、実際に地方の森林の乱開発太陽光発電などが増えたことから、地元住民の感情としては遠方の原子力発電と近隣の自然を壊す自然エネルギーを比較したら、どちらがいいか答えられない、という状態になってしまっています。

 

地元の人は、都会の業者の利益のために、自然破壊や騒音、景観、健康被害、農業への不安を抱えつつ、なぜここでやらなければいけないのか?という思いがあります。しかし、島根西部の3自治体約13万人のエネルギー収支は、電気代だけで数十億円が域外に流出している可能性があるので、エネルギーという観点から、住民が参加できる、受け入れられるプロジェクトで「まちづくり」をしたいと考えている、という話でした。

 

次に西村氏より、「改めて考える、地域とエネルギーの処方箋」と題して、ドイツで再エネが進んできた背景として日本とどのような違いがあるのか説明がありました。第一に、FIT法は日本とドイツで内容が全く違う、ということが挙げられます。ドイツでは「優先接続・全量買取」であること(再エネ電力を他の電源より最優先)、「給電開始時価格」で取引されること(申請時ではなく、実際に給電を開始したときの価格で売買)、「規模・種別の買取価格」が設定されていること(市民の反対感情や問題が起きにくい場所に設置されるよう誘導するため)などがあります。

 

第二に、ドイツでは厳しい土地利用規制や、決定に際しての市民参加のしくみがあることです。ドイツでも再エネは迷惑施設なので、原則として「建てない・建てさせない」だったが、2000年に「再エネ法」ができ、当初は野立ての太陽光は禁止、そののち規制が緩められ、20MWまではOKになりましたが、日本のように100MWといった巨大な太陽光設備が野立てで建てられることはありません。ドイツの都市計画法はかなり厳格で、住宅地と接続のない農地や森林の開発はしてはならず、再エネ施設を作る場合には、そこの議会の過半数の可決を取らなくてはいけません。そのため、建設前に住民説明会が必ず数回開催され、小さな町でもかなりの住民が参加します。これが日本との大きな違いです。そのため、森林伐採によるメガソーラーの開発は、ドイツではあり得ません。

 

第三に、ドイツの再エネの主な担い手は一般市民であること、があります。ドイツでは、再エネ100GWのうち約31%が一般市民、農家が10%、地元企業が13%出資で約半分。残りがシュタットベルケや銀行、大手電力会社などです。ドイツの市民出資の協同組合は全国に850以上(18万人)あり、シュタットベルケ(都市公社)と一緒になり発電施設を作るケースが多いです。組合員の人数はほぼ世帯数と同等ですから、ドイツのかなりの市民が再エネに出資し、再エネ発電による収益が還元されて地域が潤っている現状があります。

 

第四に「ミディエーション」と言って、「侵害規制」という制度があり、例えば太陽光発電で自然を壊したら、その分と同じだけの面積の森林を他の場所で埋め合わせるなど、代償地を用意する義務を負います。また野立ての太陽光発電に関しては、地面をコンクリートや防草シートで被うことは禁止され、草地のままです。また、再エネ発電所を使った、地元の子どもたちへの再エネ啓蒙活動なども活発です。

 

今後の課題としては、20年経過したら太陽光パネルを全て廃棄する、ではなく、まだ使えるパネルについては、発電効率が悪くなっても多少は利益が出るようなビジネスモデルを作って使い続けることが大事とのことでした。

 

そして国内の太陽光パネルの廃棄問題について、ISEPの山下紀明氏より補足がありました。現在、経産省のエネルギー庁の総合エネルギー調査会の中の太陽光発電の廃棄等費用に関するWGに所属。FIT価格は廃棄費用まで含めた金額だったが、太陽光発電の事業者が利益を上げるだけ上げて、しかるべき廃棄の責任を放棄して逃げる、という懸念があるため、それを防ぐ制度を検討している最中だとのことでした。

 

ワーキンググループについての詳細は以下からどうぞ:

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/taiyoko_haikihiyo_wg/001.html