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持続可能なまちづくり × エネルギー自立地域をめざす全国ネットワーク

10月16日「第10回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

人口減少や高齢化における持続可能な自治体のあり方として、これまで持続会で会員自治体に対して情報のインプット、及び議論してきた「域内経済付加価値の向上の見える化とその理解」の促進。来年度以降には更に会員自治体でこの取組みを加速させるため、以下プログラムとしました。

① 全国の地域新電力の最新状況や地域電力による域内経済付加価値向上(稲垣 憲治:京都大学大学院 地球環境学 プロジェクト研究員)

② 『熱海の奇跡』著者から熱海が活気をとりもどすまでのまちづくりの取組み(市来 広一郎:(株)machimori 代表取締役)

③ 地域課題解決のためにPFS(成果連動型支払い)/SIBを取り入れたスキームや事例紹介(陶山祐司:(株)至真庵 代表取締役)

④ 欧州で加速する「気候危機」の動き(村上敦:一社クラブヴォーバン代表)

⑤ ニセコ町から委託された公共施設のエネルギー消費量の見える化と対策案の紹介(村上、加藤逍太郎:SHTRKT一級建築士事務所)

 

最初に代表理事早田より挨拶。先の台風19号は甚大な浸水被害をもたらしたが、100年に一度と言われる規模の台風がここのところ毎年、関西や関東など本州に甚大な被害をもたらしている。原因は太平洋の海水の温度上昇。温暖化対策に早急に取り組む必要がある。「持続可能な家づくり」は、そもそもハザードマップの危険箇所には建てないことや、建物の表面積をできるだけ小さくすること。「建物のエネルギー性能を高める優先原則」は、『断熱>気密>日射コントロール>換気>通風>設備>再エネ熱>再エネ電気』の順である。今後80年くらい使う前提の公共建築更新において、再エネ設備は優先順位の最後とし、躯体性能の強化をまずは前提とすることで「穴あきバケツに水を注いではいけない」の原則を貫くことが肝要、などがインプットされました。

 

次に、文科省を経て現在は東京都庁環境局職員として再エネ普及策の企画や新電力の設立・運営などに従事、並行して取り組まれている京都大学大学院研究員の稲垣氏より、「地域新電力の最新状況とまちづくり事業における域内経済付加価値の向上」という研究成果について。平成30年4月閣議決定された環境基本計画において、自治体の環境政策は地域経済政策でもあることが重要で、その手段として地域新電力の推進が明記された。地域電力で「エネルギー地産地消」「地域活性化」「地域雇用増やす」「公共料金低減」「災害リスク対応強化」「温室効果ガス削減」などを目指すのであれば、外部にお任せだと地域にノウハウが残らず地域でお金も回らないので、やり方を間違えないことが大事。自治体新電力の真の意義は、誰もが使う電気によって ①地域内で資金が循環すること ②エネルギー関係のノウハウ蓄積により、省エネや地域に共生した再エネ再投資と繋がって、地域の低炭素化のプレイヤーとなれる可能性があること ③地域がノウハウを蓄積し、事業展開することで「地域の稼ぎ」が向上すること です。また、地域電力以外にも、‘70年代にイタリアで考案され、’90年代からイタリア各地に広がった「アルベルゴディフーゾ(分散型ホテル)」の事業モデルや公園などの公共資本を有効活用した地域マーケット等の地域の稼ぎを増やすための国内事例も共有されました。

 

『熱海の奇跡』著者で、12年前から「衰退した観光地」とも言われた熱海の街の活性化に取り組んできた、(株)machimori 代表取締役の市来氏より「熱海はどのようにして活気を取り戻したのか」について。熱海市(人口3万6千人)の宿泊客数は‘60年代年に530万人だったのが、2011年に246万人。’90年代後半には中心街の熱海銀座の3分の1が空き店舗となり、廃墟のような街並みとなってしまった。このとき感じたのは、外からのお金に依存していると一瞬で街は崩れてしまうということ。「だからこそ、地域に根付いた人・事業・お店をつくってゆく、地域に根付いた事業をやっていこう」と方向性が決まりました。2006年には、熱海市が「財政危機宣言」を出し、地元からの反発もあったが、これにより市民の意識が「行政に依存できない、自分たちで何とかしないと」と変化したきっかけとなりました。その後、地域資源を活かした多彩な体験交流型プログラムを一定期間に集中的に開催し、地域の人材・組織育成、新しいサービスの育成、地域のブランディングを行い、地域における新しい芽を育ててこられました。観光客はV字回復で2015年には307万人に増加するまでの、新しい熱海におけるmachimoriの取組についてお話をいただきました。

 

次に、経産省のエネルギー政策担当を経てベンチャー企業の立ち上げなどを支援してきた(株)至真庵代表取締役の陶山氏から、「政策効果を最大化させる先進的潮流:成果連動型支払い」 について。PFS= Pay for Success(成果連動型支払い)は、SIB=Social Impact Bondよりもう少し広い概念。経産省時代、社会の改革が難しいのは“構造的な”問題と感じていた。通常の行政サービスの民間委託・補助事業は、成果の有無にかかわらず活動にかかった経費を支払うのが普通。事業目的の達成や予算の適正な使用について、チェックはされるが、目的の達成については0か1かで判断されるため、事業の成果がきちんと問われることはない。しかしPFSでは、0/1指標ではなく、あらかじめ定めたアウトプット/アウトカムの達成度合いを第三者の事業者が評価し、その度合いに応じて報酬を支払う方式。少子化、高齢化、都市への人口流入、自然災害の多発化、コミュニティの希薄化、格差拡大など、行政だけでは対応できない複雑な課題が差し迫っている中、民間事業者の力をうまく活用する際のひとつの切り口となる。これを活用し一定の成果を上げたイギリスでの再犯防止や神戸市での健康増進・医療費削減の事例が共有されました。適切な評価指標や成果目標の設定など、まだまだ課題は多いが、政府中心に積極的な検討が進められており、医療・健康、介護、再犯防止と言う分野を中心に今後も世界・国内において進展が見込まれるとのことです。

 

代表の村上からは、「地球温暖化の進展、気候危機とFridays For Future」 について。欧州では、「気候温暖化」ではなく「気候危機=Climate Crisis」という言葉が日常的に使われるようになった。IPCC第5次評価報告書は、第4次報告書よりさらに踏み込んだ内容。日本の年平均気温は1898年~2014年で、100年あたり約1.15℃の割合で上昇している。熱エネルギーは、海に蓄積される。日本近海の海面水温上昇率は、世界全体の上昇率よりかなり大きく、毎年のように、これまで想定できなかった規模で日本に豪雨があるというのは当然のこと。現状での気候難民は世界で約2~3千万人だが、現状の温暖化の進展が2050年まで続いてしてしまうと、その数は2~7億人になることが予測されている。欧州ではマスコミでも、教育現場でも、こうした話がごく普通に俎上に上り、10代の若者にも意識共有されている。その象徴が2018年に国会前でデモを始めたスウェーデンのグレタさんから始まった“Fridays For Future”。毎週金曜日に学校をスト&デモを行う動きがSNSを媒体として西ヨーロッパから世界に拡散。2019年3月には世界120万超の若者が、さらに2019年5月欧州議会選挙前に行われた世界規模の呼びかけには、世界1700都市180万以上の若者が参加。この動きに刺激され、欧州議会選挙では『緑の党』が大躍進、右派ポピュリズム政党の進展を抑制し、ドイツでは第二党の座に。ドイツではこの動きに刺激を受け「気候保護法」が閣議決定され、年内に成立予定、来年春に施行予定。エネルギー戦略で明記されていたドイツの2050年までの段階的な削減目標をさらにアグレッシブな目標に更新し、2050年に‘90年比CO2削減量を100%にするために、2030年までにはマイナス55%の目標を死守すると決め、それに向け各界が動いている、との話でした。

 

最後に、「ニセコ町から委託された公共施設のエネルギー消費量の見える化と対策案」の紹介。環境モデル都市ニセコ町が毎年集計していたエネルギー消費量データを使い、(一社)日本エネルギーパス協会が昨年度委託を受け、調査分析し、対策の提案をした事例がSHTRKT一級建築士事務所の加藤氏より紹介されました。また、参加各自治体への次回持続会までの宿題、縦割りに管理されている公共施設における電力、化石エネ、再エネ、自動車ガソリンのエネルギー消費量の集計方法について説明。老朽化した公共施設において、改築した方がいいのか建て替えをした方がいいのかを検討するためにも、誰かがどこかのタイミングで、きちんと施設ごとのエネルギー消費量を管理・把握しておく必要があり、今後その集計を、統計を使い問題・課題を発見し、そこに対しどんな手を付けるかということを提案していく予定です。

 

 

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エネルギー消費量の「見える化」を自治体の職員が毎年やり始めると、毎年チェックをしてアクションを決めてと、PDCAサイクル的なことができるようになってきます。引き続きクラブヴォーバンとして、「見える化」や、持続可能でCO2排出量が少ない公共施設の更新のあり方について、サポートを行っていきます。