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エネルギー自立地域経済好循環 × イノベーション 
                 持続可能なまちづくり

10月20日PJ80セミナー 「SDGs未来都市・ニセコ町 持続可能なまちづくり会社始動!」をZoomにて開催しました

クラブヴォーバンサポーター・会員(個人・法人・自治体)を対象に、10月20日、PJ80セミナー「SDGs未来都市・ニセコ町持続可能なまちづくり会社始動!」をZoomにて開催しました。

 

北海道・ニセコ町は環境モデル都市に国から認定され、これまで日本で先進的な取組をすすめてきました。そして、クラブヴォーバン(CV)は2018年より、ニセコ町の「第2次ニセコ町環境モデル都市アクションプラン策定にかかる調査研究」「NISEKO生活・モデル地区都市事業構想策定・基本設計等」の委託業務を行ってきました。

 

さらに2018年、ニセコ町は「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」に認定されました。そしてSDGs未来都市のモデル事業に選定されたこの「NISEKO生活・モデル地区」の計画を、 “絵に描いた餅” で終わらせないために、今年7月、ニセコ町・地域事業者・CVで共同出資し、まちづくりを実行していく主体となる地域まちづくり会社「株式会社ニセコまち」を設立しました。

 

まずはその新会社のヴィジョンやコンセプト・事業内容などについて、CV理事であり新会社の取締役に就任した田中健人氏が説明しました。

 

この会社の事業として、SDGsモデル地区のまちづくりとエネルギー、街区のブランド化を担っていきます。日本のこれまでの一般的な土地開発とはまったく違った新しいコンセプトのもと、地域から流出しているエネルギー費用を地域内に押しとどめることによって、未来に向かって長期的に地域をより豊かにしていくことを目指します。エネルギーについては、これまで町内外のエネルギー事業者が供給し、利益の大半が町外に流出していたものを、地域エネルギー会社を立ち上げ自分たちで担っていくことで、利益(付加価値)を町内に還元し、ノウハウも蓄積していきます。

 

元々の計画では、まずは分譲住宅エリアの分譲住宅を購入する人を全国から広く募り、それを賃貸その他のエリアの開発資金に回す予定でしたが、町からの強い要望で、分譲住宅はまちづくり会社で保持してほしいということになったため、今後資金集めが大きな課題です。

 

CVからは、田中氏や代表の他、PTメンバーの仲埜氏や陶山氏が深く関わり、またニセコ町役場・地元企業のほか、新たな仲間として迎えたのが、建築家/くらし研究家の土谷貞雄氏・参加型まちづくりのファンド「ハロー!RENOVATION」を運営している(株)エンジョイワークスの福田和則氏・東南アジアで自立支援などを行っている魯迅美術学院現代芸術学部教授の沓名美和氏。元々CVは省エネや再エネといったエネルギーには強いですが、“まちづくり”には多様な専門性が求められるため、暮らし・ファンディング・デザインといった専門性を持つ方々に新たに仲間に入っていただきました。

 

この事業は、計画段階にもかかわらず、すでに本事業の取り組みが各種メディアなどから多数取材の依頼が来ています。また、地元金融機関にも、「SDGsモデル街区」ということで注目をいただいています。

 

次に代表の村上から、「ニセコ町SDGs 街区における省エネ・地域熱供給の取り組み 気候中立Ready!」についての話題提供がありました。

 

ニセコ町は、2050年に気候中立・気候ニュートラルを宣言しましたが、残念ながら冬場の莫大な暖房需要をカバーできるだけの、太陽光も風力も地熱(調査中)もあるわけではありません。環境省のCOOL CHOICE事業は、やって意味がないということはないが、申し訳ないがこのまま進めても残念ながらCO2ゼロにはなりません。というのは、2020年の世界各国におけるコロナ禍で、強制や自粛的なロックダウンにより、各国の経済は推計GDP▲10~25%。多くの人が失業したり、大きな工場などが止まったりしたにも関らず、ドイツの電力消費量は上半期で前年比▲5.7%。化石燃料由来のCO2排出量も▲5%。日本の ‘19年上半期の電力消費量はわずか▲3.6%でした。COOL CHOICE事業や皆さん市民や公共・企業などの「行動変容」の呼びかけで期待できる最大限のCO2排出量は、どんなに頑張っても最大▲5%程度と予測されます。

 

2050年にゼロカーボン・気候中立を目指すならば、従来の「経済 VS. 環境」ではもう限界です。「経済 = 環境」つまり、経済活動が豊かで、エネ消費量を低減させていくためには、「システムや制度の大転換」が必要です。それは市民による 政治/投票行動と消費(投票/投資)行動 によってのみ達成されます。コロナ影響下においても、今年9月25日、世界170か国3000都市、140万人以上の若者が、気候中立のFriday for Futureデモに参加しました。ドイツでも450か所、20万人が参加(オンライン参加者はもっと)。日本は4千人、ほぼ報道もされていません。

 

ちなみにドイツでは国として 2050 年に気候中立はすでに謳われていますが、気温を2℃/1.5℃下げる目標値には足りないため、 2035~40年に気候中立を目指すことを、気候危機宣言、FFF(Friday for Future)の活動としています

 

ドイツは、2019年の電力消費量に対して、再エネ発電の割合は40%になりました。再エネ推進前の1990 年は水力の3%のみだったので、再エネ割合は29 年間で37%の増加(年に1.3%ずつ増加)です。ドイツ、2019年12月、連邦衆議院で決議された《気候保護法》では、1990年基準年で2022年に40%弱削減、2030年に55%以上削減が明記されています。「気候中立」は電気部門だけでなく、熱部門や交通部門も併せてのことなので、ドイツで拡大余地がある太陽光・風力発電を現状の更に4~5倍程度増やしていくことが必要です。また気候中立の世の中では、一度建物の中を、エネルギーを使って冷やしたり温めたりしたら、1週間そのままで過ごせるくらいの高気密高断熱の性能の家でなければなりません。そのような建物インフラの整備に目途が立ってから意味があることですが、次は再エネの余剰電力を活用する、Power to Heat は2015~25年ぐらいにドイツでは普遍化している最中です。Power to Gas、Power to Liquid、Power to Industryといった技術開発やインフラも順次、整ってきています。

 

そのような世界の先進的な動向を踏まえ、気候中立を目指すニセコの街区の基本設計・構想にどのように活かし、具体的に検討しているか、一部を紹介しました。

 

ディスカッションでは、資金調達などについて、参加者のサポーターの方々から貴重なアドバイスやご意見もありました。今後も引き続き、サポーターや一般の方々向けに、オープンにできることから全国に発信していきます。