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エネルギー自立地域経済好循環 × イノベーション 
                 持続可能なまちづくり

10月21日「第12回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

前回は、各自治体内における、公共施設別の、電気・ガス・灯油・ガソリン等エネルギー使用量の「kWh=¥」への単位統一、㎡あたり、月あたり、利用者一人あたりのエネルギー使用量の見える化調査について、発表を行いました。それを受け今回は、村上によるEUおよびの気候対策の最新状況の共有を行い、会員各自治体における気候温暖化対策目標とその進捗/達成状況について発表をしていただき、悩みの共有と議論を行う場としました。また、温暖化対策計画の見直しなどの際に、政策手法の6類型を意識し、何かから何まで欲張るのではなく、想定できる権限の範囲内で、期間中に、有効に実行できる仕様に修正してゆくようインプットがありました。環境省・経産省やその他エネルギーの専門家の方々からも、貴重なご意見やアドバイスをいただきました。

 

まずは代表理事の早田よりご挨拶。代表の村上とクラブヴォーバンを始めて12年、ニセコ町さんからの委託事業を受けて3年目、クラブヴォーバンはコンサル会社からついに事業者になり、またニセコ町と地元企業さんとクラブヴォーバンの三者で「株式会社ニセコまち」まちづくり会社を7月に設立することになったご報告でした。気候非常事態宣言を表明する自治体さんも増えてきています。そして早田がドイツに学び、「日本で高性能の家を普及したい」との思いで創業した(株)WELLNEST HOMEが、11月末に開催される「日経SDGsフォーラム冬の陣」に、SDGs企業の4社のベンチャー企業の、パネルディスカッションのトップバッターとして登壇することになったとの報告がありました。

 

次に代表村上より、「気候非常事態宣言、気候中立と 自治体に期待されている取り組み」について。最近は数多くの自治体が「気候非常事態宣言」を出した、あるいは出す準備を始めています。2050年気候中立、つまりCO2排出量をゼロにするという目標を、国に先駆けて掲げる自治体さんも出てきています。今日はみなさんに各自治体の温暖化対策の目標を発表し議論を進めていただきます。みなさんの自治体のHPの温暖化対策を見ましたが、残念ながら計画の半分くらいはダメな施策(笑)。ぜひ意味のある計画にしてほしいと思います。

 

環境省のCOOL CHOICE事業は、やって意味がないということはないですが、申し訳ないがこのまま進めても残念ながらCO2ゼロにはなりません。というのは、2020年の世界各国におけるコロナ禍で、強制や自粛的なロックダウンにより、各国の経済は推計GDP▲5~25%。多くの人が失業したり、大きな工場などが止まったりしたにも関らず、ドイツの電力消費量は上半期で前年比▲5.7%。化石燃料由来のCO2排出量も▲5%。日本の今年の上半期の電力消費量はわずか▲3.6%でした。COOL CHOICE事業や皆さん市民や公共・企業などの「行動変容」の呼びかけで期待できる最大限のCO2排出量は、どんなに頑張っても最大▲5%程度と予測されます。

 

2050年にゼロカーボン・気候中立を目指すならば、従来の「経済 VS. 環境」ではもう限界です。「経済 = 環境」つまり、経済活動が豊かになり、同時にエネ消費量を低減させていくためには、「システムや制度の大転換」が必要です。それは市民による 政治/投票行動と消費(投票/投資)行動 によってのみ達成されます。コロナ影響下においても、今年9月25日、世界170か国3000都市、140万人以上の若者が、気候中立のFriday for Futureデモに参加しました。ドイツでも450か所、20万人が参加(オンライン参加者はもっと)。日本は4千人、ほぼ報道もされていません。

 

ちなみにドイツでは国として2050年に気候中立をすでに謳っていますが、気温を2℃/1.5℃下げる目標値には足りないため、 2035~40年に気候中立を目指すことを、気候危機宣言、FFF(Friday for Future)の活動としています。ドイツで2019年12月、連邦衆議院で決議された《気候保護法》では、1990年を基準年として、2022年に40%弱削減、2030年に55%以上削減が明記されており、ドイツの連邦機関は2030年までに気候中立が義務です。そのために、ドイツは2020年7月、連邦衆議院で《脱石炭法》を可決し、何年までに、何GWの石炭を削減と数値目標を具体的に掲げ、そのために補助金なども投入を予定しています。同じく7月に《建物エネルギー法》も可決、これまでの「省エネ政令」「再エネ熱法」を統合し、2021年以降のCO2税やニアリーゼロエネ新築義務化に対応し、国を挙げてCO2削減に臨む姿勢です。

 

また、コロナ禍において、失業者が増え、経済政策としてEUやドイツで、セクターカップリングなどエネルギー分野に数兆~数十兆円のお金をつぎ込む予定です。これは、今抱える借金は将来の人たちが返すものだから、将来の人たちにメリットがある経済政策を取ろう、ということ。EUの委員長やドイツの首相など、女性ならではの発想です。

 

1997年の京都議定書以降も、CO2排出量を削減するために「行動変容を促す」ことは皆さんの自治体でもこれまでさんざんやって来られたはずです。オブザーバーの田中信一郎さんが常々話されていますが、公共政策とは、 社会(地域)の「問題」を「改善」する取組/人々(企業)の「意識」を変化(維持)させる取組 ではなく、社会(地域)の「課題」を「解決」する取組 / 人々(企業)の「行動(選択)」を変化(維持)させる取組 であるべきです。現在の日本の国の目標や対策は物足りないので、この持続会に参加されている自治体のみなさんは、より高い目標を立て、実行力のある対策を立て、気候対策の計画を策定していってください。というインプットでした。

 

また、持続会の自治体会員の下川町・ニセコ町・二戸市・葛巻町・雫石町・横瀬町・小鹿野町・北栄町から、自らの自治体が掲げる地球温暖化対策やエネルギー政策と目標値の発表と、悩みの共有があり、オブザーバーやCV理事からのアドバイスの時間がありました。聞こえてきたのは、

・気候温暖化やエネルギー対策が複数課にまたがっている、ガバナンスが難しい

・エネルギー使用量管理・統計の難しさ

・気候中立を目指すと掲げながら、そのために有効な具体的方針や合理的な説明のつく数値目標がない

・エネルギーの専門家が役場にいない

・地域再エネを増やしているのに、経済活動の外的影響の割合が大きく、町全体のCO2排出量が減らない

といった声で、自治体間で、各種の専門家も交えてディスカッションしました。

 

クラブヴォーバンでは引き続き、2050年気候中立・ゼロカーボンを目指していく自治体のため、アドバイスやサポートを続けていきます。