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                 持続可能なまちづくり

1月20日PJ100セミナー「2050年 カーボンゼロ社会 実現へ!」をZoomにて開催しました

地球温暖化対策の新たな国際的枠組みが決められた2015年のパリ協定(COP21)から既に5年。この10月、日本政府として初めてそしてようやく、2050年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)にするとの政策目標が発表されました。今から即時に【気候中立Ready】、その後に【気候中立】を目指さなければならない社会状況になりました。

 

2008年から一貫して「低炭素型社会の実現」に向けての国内外のさまざまな事例や取組みを発信・提言してきた一社クラブヴォーバン(CV)。これまで開催してきたPJ80セミナーを “PJ100セミナー”(PJ100:プロジェクトCO2排出量マイナス100%)と名称改め、発信するだけでなく自らも実践者として取り組んでいるCVコアメンバーの、現在進行中の”持続可能な発展”のための活動や取り組みをご紹介しました。

 

 

まず、CV理事で株式会社日本エネルギー機関代表の中谷哲郎氏より、「太陽光発電ビジネスの新しい展開~自家消費メインの取組みについて。

 

CV代表の村上氏、PTメンバーの西村氏、名古屋で再エネの開発に関わる社長さんなどと5人で一緒に設立した、新会社「地域分散型電源株式会社-DEaR」の背景と事業について紹介がありました。

 

2,3年前にドイツで食品商社の3haの敷地内建物のほとんどの屋根にPVを載せている事例を視察。巨大冷蔵庫がたくさんあり電気代が年間約3750万円だったのが、PVを屋根に乗せ電力を自家消費したことで、年間1500万円もの電気代が削減できたそうです。このビジネスモデルはドイツでかなり広まっており、日本でも「電力の買取価格は下落、電力料金は上昇、太陽光システム価格は下落」しているので、自家消費PPAモデルはこれからチャンスだと思い、以来、新事業の可能性を探ってきました。

※PPA…Power Purchase Agreement 電力販売契約

 

太陽光システム導入事業者にとっては、①電気代の大幅削減(40%以上のコストダウン) ②遮熱効果による室温改善(夏場−2~3℃) ③紫外線直射を避けることで、屋根の老朽化防止 ④BCP対策に停電時使える非常用コンセント設置 ⑤CO2削減に貢献する企業としてアピールできる など、導入メリットは多いです。また、ESG投資やRE100など、CO2削減&環境に対する企業活動が評価される時代にもなりました。しかし、CO2削減に取り組みたくても、何から始めたらいいか悩んでいる企業さんも多く、また太陽光システムを自前で載せるには、初期コストが多大にかかる、メンテナンスの難しさ、などの課題が多いのが実情です。そこで、我々の会社が太陽光システムを購入、導入事業者さんの屋根をお借りし設置、メンテナンスまで行い、発電した電気を市場より安い価格で買い取ってもらう契約をする、という事業モデルです。事業者さんは、イニシャルコストゼロ円で、太陽光システムを導入し、電気代を削減(自前では−約40%、PPAだと−約20%)することができます。これまでは、土日休業の事業者さんでは採算が合うまでの年数が長くなるのが課題でしたが、我々としては、できるだけ365日営業し昼間の電気を使う業者さんであること(スーパーやレストランや薬局チェーンなど)、一定の広さがあること、など条件がありますが、ぜひご興味ありそうな方をご紹介ください、とのことでした。

 

代表の村上より、さらに説明がありました。新しい大きな屋根の建物が建てられるのに、太陽光パネルが載っていない、ということは、その分化石燃料がたくさん炊かれ、日本としてチャンスロスをしていることになります。リース会社というのは、初期投資でお金はたくさんかかり、リスクはこちらでとるので、リスクが大きい事業。しかし、電気を使用しない人里離れた山で森を切り開いて、野立てで巨大な太陽光システムを導入するような無駄なことをするよりも、太陽光を無理なく入れられて環境的にもコスト的にも、導入した方がいいところにはすべからく入れていきたい、という想いでやっています。輸入の化石燃料は価格変動が大きいので、長期に渡ってコストの見通しを立てることが難しいが、太陽光システムはいったん入れてしまったら、コストの見通しが立てやすい、ということも事業者さんにとってはメリット。ぜひクライアントをご紹介してほしいですし、地域でこれを一緒にやりたい、という方がいればぜひ手を挙げてほしい、とのことでした。

 

次に、PTメンバーで至真庵代表の陶山祐司氏から「ゼブラ企業と持続可能な企業経営」について。

 

最近日経新聞などで見られビジネス用語で使われている「ユニコーン企業」とは、ベンチャーやスタートアップ界隈でよく聞かれるが、1千億円以上の未上場企業ことを指します。もともとユニコーンは、幻想上の動物。だが今ネットでしらべると、“ユニコーン”は世界で491匹いる、と出てきます。この“ユニコーン”は、アメリカや中国の企業が多く、テクノロジーを駆使して急成長している企業。Airbnbや、今は上場し“ユニコーン”でなくなったが、しばらく前のメルカリやUberもそうです。

 

これに対し、2016年からアメリカ西海岸で4人の女性起業家が「ユニコーンの経営スタイルでいいのか?」という問題提起をして、始まったトレンドが「ゼブラ(シマウマ)企業」で、「“ユニコーン”が壊したものを、“ゼブラ”が直しているんだ」とブログで発信。これにBBCやNew York Timesなどのマスコミなどが反応し、賛同する動きが世界で出てきて、「ゼブラ企業」を支援するグローバルな潮流が起こりました。“ゼブラ”のコミュニティには今や、アメリカ、ドイツ、イギリス、シンガポール、オーストラリア、日本など60以上のエリアから在籍しています。アメリカでは、もともと非営利形態で始まりましたが、協同組合へと法人形態を変更し、投資活動も開始。陶山氏と田淵良敬氏が中心となって、2019年に共同で「Tokyo Zeburas Unit」を設立しました。そのあと、日経新聞やForbes Japanなどでも、特集として取り上げていただいています。

 

日本は「ゼブラ企業」ととても相性がいいと思います。世界の創業100年以上のうち、日本企業の割合は41.3%。創業200年以上のうち、日本企業の割合は65%。老舗の日本企業の強みと、ゼブラ企業の強みが重なるのではないかと思い活動しています。

 

私は以前経産省でエネルギー政策などに関わっていましたが、日本はなかなか新しい産業が出てこないと思い、問題意識を持っていました。日本で400万社の企業があるといわれている中で「上場企業」といわれるのはたった4千社。誰もが上場企業の株を売買できるため、上場にはきわめて厳しい基準が設けられており、そのため、上場すると企業の成長が遅くなりがちです。また、未上場企業投資は、VC/PE型、つまり短期間で時価総額を最大化し上場・売却するのが主流であったり、社会的インパクトを追求する「インパクト投資」もVC型投資が主流であったり、対象とする社会的課題に偏りがあったり、短期的な時価総額の最大化が適した事業ばかりでなく、既存の金融でカバーされていない領域が存在する、といったことです。そして2018年、長い時間軸で上場を必ずしも目指していない社会的インパクトのある会社を応援しようと思い、前職を辞めて、ベンチャー企業やこのクラブヴォーバンやウェルネストホーム(代表理事早田が創業)など、複数の企業などの経営に従事したり、ゼブラ企業の潮流にも会って、応援することになりました。

 

従来の株主至上主義から、幅広いステークホルダーへ還元する経営の必要性が世界各地で提唱されるようになってきました。我々としても、「短期的な時価総額の最大化の先に、どういう社会課題を解決したいと思っているのか」「明確なゴール設定があり」「長期的かつ包括的な視点で活動している」企業を応援したいと思っています。

 

ゼブラ企業としてまず応援している企業が、ウェルネストホームです。会社の成長自体を目的とするのではなく、日本の住宅性能をいかに上げるか、またCO2削減も掲げ、「持続可能なまちづくり」をしていくことで、人々や社会を持続可能にしていこう、という目的意識を持っています。その他に、ウニノミクスという「海の磯焼け」という海藻や藻がなくなる海の砂漠化問題に取り組んでいる企業、アズママという子育て支援の会社、島根の石見銀山近くの群言堂などの会社を応援しています。今、こういった企業の投資や経営に参画しつつ、ゼブラ経営の可視化や体系化を行っており、これから本を出す予定です。さらに、ゼブラのムーブメントやコミュニティづくり、資金供給の増大やゼブラ経営人材の強化などを支援していきたいと思っています。まだまだ始まったばかりの取り組みなのでぜひ応援してください、とのことでした。

 

参考:

「Tokyo Zeburas Unit」 https://zebrasunite.coop/tokyo

Forbes Japan 2020/7/5「キーワードは「相利共生」ゼブラ企業が次世代を担う」https://forbesjapan.com/articles/detail/36040

 

最後に、CV理事で株式会社ニセコまちの取締役の田中健人氏より、前回のPJセミナーに引き続き、「ニセコ町SDGs街区の進捗」について。

 

ニセコ町と町の地元企業とクラブヴォーバンで出資をして立ち上げた「株式会社ニセコまち」で構想事業を行っている「NISEKO生活モデル地区構想事業」は、国がSDGs未来都市選定の際に、特に先導的な提案事業について「自治体SDGsモデル事業」として、選定初年度の2018年に選定した10事業の中の一つです。

 

今ニセコ町が人口約5千人、そのうちの約400~500人くらいが新たに住むエリアとして構築を計画しています。本邦初公開のニセコ街区のCG画像をお見せします(WEB公開の際は改めてお知らせします)! 30年前に造成された団地と、新しく我々が造成するエリアを中央の広場がつなぎます。第一工区の1棟8戸×4棟の造成開始が2021年春、建築・入居が22年以降、その後2025年から建築・入居が始まる移住者向けの第四工区まで約7~10年間の計画が立てられています。先ほどのゼブラ企業の話にもありましたが、ぜひこのようなことに投資したい、またはニセコのこの街区に住みたい、自分のノウハウを活かしたい、ということがあればぜひお声がけください。

 

クラブヴォーバンも関わって作成してきた、このSDGsモデル街区を貫く8つの柱は ①人口増加圧力への対応 ②適度な人口密度の確保 ③緑のインフラ整備 ④超省エネの建物 ⑤再エネ・地域熱供給の活用 ⑥集合型駐車場の整備 ⑦既存の地形や植生を生かす ⑧活発な人的、社会的な交流 です。この街区のポイントとして、まずは、空き家が町内にほとんどなく、仕方なく町外から通勤している世帯への「中価格帯で住める賃料で、高性能の住宅の確保」。寒い日には−15℃になる中で、一般的な住宅で光熱費が冬場は3万円も4万円もかかるエリアです。これからのモデルとなる高性能なファミリー向けの集合賃貸住宅を作っていきます。マイカー所有台数を可能な限り減少させるため、街区にEVのカーシェアを配備。将来的には、遠隔医療や遠隔教育、自動運転による公共交通など、社会課題を解決していく可能性を追求していきます。

 

SDGs街区の建物は、外皮の断熱仕様が現行の省エネ基準をはるかに凌駕する、暖かくて快適な家にします。市場平均では0.5~0.6W/㎡ですが、この街区では0.3 W/㎡以下に規定。地元の工務店でも建築が可能な木造建築による、ニセコの風土や景観に溶け込む集合住宅です。CV代表理事の早田氏に技術指導をしてもらい、株式会社ニセコまちと共同開発・共同研究に取り組んでいます。これにより、住宅地内のエネルギー消費量(暖房・給湯・電気)を半減させ、湿度調整機能を外皮内側に持たせ、熱橋を排除し、結露を抑制することで建物の長寿命化を実現していきます。そもそもエネルギーをできるだけ使わない街区にしつつ、必要な電気は極力再エネやコジェネを利用し供給します。補助金に頼るのではなく、民間主導で採算性も考慮し、持続可能な経営を目指します。

 

またソフト面では、街区における住民参加のプラットフォームとして「ニセコ 明日をつくる教室」という集いの場を展開し、住民自治の活性化を目指しています。また、WEBサイト上で、国内や世界から知見、技術、ノウハウ、資本、実行力を有する企業や研究者が集い、ニセコ町をフィールドとして、来たる世界的な高齢化・少子化・人口減少社会において、持続可能なあり方を模索する〈実験場〉「都市未来研究会IN NISEKO」も設立しました。ここで得られた知見を、まずは北海道内へ水平展開することを目指しています。

 

そしてニセコ町ではSDGs街区着工に先行して、ウェルネストホームが設計監理を行い、ニセコ町の浦野工務店さんが施工した高性能賃貸アパートのモデルが、2020年12月に完成!最小の設備と光熱費で快適な居住性を担保できることが確認できました。今後もさらにエビデンスを取り、設計や施工のノウハウを地元に蓄積していきます。地元の想いある事業者と、クラブヴォーバン、役場の皆さんと一緒に、「理想のまち実現」に向けて「2021年本格始動!」で動いているところです。定期的に今後も情報発信していきますので、ご支援お願いいたします、とのことでした。

 

参考:「都市未来研究会IN NISEKO」 https://www.toshimiraikenkyukai.com/