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エネルギー自立地域経済好循環 × イノベーション 
                 持続可能なまちづくり

1月21日「第13回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

会員各自治体の公共施設別の、電気・ガス・灯油・ガソリン等エネルギー使用量の「kWh=¥」への単位統一、㎡あたり、月あたり、利用者一人あたりのエネルギー使用量の見える化調査と発表に引き続き、前回は、会員各自治体からの地球温暖化対策に向けた取り組みの報告の場を設けました。その時に出てきた共通の悩みを受けて、今回は田中信一郎氏から「行政のタテ割りとヨコ割りを内部から突破する」のレクチャーを行い、その後に、会員自治体の中で地球温暖化対策を力強く実質的に進めている3自治体、北海道下川町とニセコ町、鳥取県北栄町3町から事例の紹介と質疑応答がありました。

 

まずは、代表理事の早田より、開催にあたっての挨拶。ニセコSDGs街区着工に先駆けて、早田の創業した(株)WELLNEST HOMEが設計監理を行い、ニセコ町の工務店さんが施工した高性能賃貸アパートのモデルが2020年12月に完成。4戸ある2階の共用の廊下に、6畳用のエアコン2台を設置、そこで暖めた空気を各戸に送って暖房する仕組み。各戸のエアコンを使わず、共用エアコンのみであっても、外気温−15℃時に室温20℃以上を保てることが確認でき、町民の方もここにきて「めちゃくちゃ暖かいね」と言ってくれ、手ごたえを感じています。来年末頃にはいよいよ街区の集合住宅が現れてくる予定なので、コロナ禍が落ち着いたらぜひ皆さんとここで集まれる日が来るといいなと思います。ここに集う持続会の自治体での新築や改修工事については、精一杯やれることはやっていってほしい、との話でした。

 

次に代表の村上より、「前回の各自治体からの温対計画についての振り返り」について。前回10月の持続会で、自らの自治体が掲げる地球温暖化対策やエネ政策の目標値の発表の際、「気候温暖化やエネルギー対策が複数課にまたがっている、ガバナンスが難しい」「エネルギー使用量管理・統計の難しさ」「気候中立を目指すと掲げながら、そのために有効な具体的方針や合理的な説明のつく数値目標がない」「エネルギーの専門家が役場にいない」「地域再エネを増やしているのに、経済活動の外的影響の割合が大きく、CO2排出量が減らない」といった共通の声・課題がありました。これを受け、気候温暖化対策を進めるために、行政の縦割りをなんとかすることはできないかということで、専門的な知見から今回田中信一郎さんにレクチャーをお願いしています。

 

一社地域政策デザインオフィス代表理事の田中信一郎氏の「行政のタテ割りとヨコ割りを内部から突破する」では、行政など日本の組織によくありがちな、タテ割りの例や弊害の具体例、発生原因の具体例を挙げつつ、目の前には「人口減少」「低成長」「環境危機」といった、逃れられない厳しい現実が目の前に迫っているため、タテ割りの弊害を放置する「余裕」はない!ことの認識の共有が行われました。これからの人口減少の時代は、人口増加期に成長で解決できていた課題が、顕在化すると同時に、人口増加を前提とした社会システムと現実のかい離=人口減少に伴う課題が噴出してきます。

 

人口減少時代の自治体の役割は、減少していく行政資源で、増加していく前例のない課題を解決する、というこれまでに前例のない難しいことをやっていかなくてはなりません。とはいえ、「行政のタテ割りを打破するぞ」と、組織を統合したり新設したり、首長の直轄にしたり調整役を任命したり、会議をしたり、業務仕分けをしても、実は根本解決にはならず、新たな問題を生むケースがほとんどです。ですので、「タテ割り打破」のためには、タテ割りはあるものとしてあきらめて、タテ割りを正確に理解・活用して、幹部に「ヨコ業務」をやってもらいましょう。このレクチャーでは、そのために必要な具体的な方法論や参考図書が紹介されました。

 

 

次に、持続会会員自治体の北海道下川町、ニセコ町、鳥取県北栄町からの地球温暖化対策、エネルギー対策の事例が共有されました。これまで、環境モデル都市、環境未来都市、SDGs未来都市および自治体SDGsモデル事業に選定されてきた下川町からは、これまでの「一の橋集住化プロジェクト、省エネ効率化事業」「森林バイオマス事業」「SDGsの取り組み」について紹介がありました。

 

同じく環境モデル都市、SDGs未来都市および自治体SDGsモデル事業に選定されているニセコ町からは、2018年の選定時に核事業に据えたNISEKO生活・モデル地区事業、「SDGsモデル街区の開発」の進捗について、また「第2次ニセコ町環境モデル都市アクションプラン」に基づく3つの条例についての説明でした。世界水準の高断熱・高気密の住宅地群街区を作るこの開発事業については、クラブヴォーバンも深く関わっています。

 

また、老朽化した公共施設を2町の対等合併により多く抱える鳥取県北栄町からは、「公共施設の将来のあり方検討」「断熱DIYワークショップ」などの事業について、共有されました。こちらについても、クラブヴォーバン関連団体の一社エネルギーパス協会が支援をしています。

その後、会員の自治体、オブザーバーの環境省や経産省、大学教授や研究者の方などからも、活発な意見や質疑がありました。この持続会が、ぜひ会員自治体さん同士で、わからないことは相談したり、真似できるところは取り入れたりし合って、次なる具体的な取り組みにつなげていくヒントや機会になればと思っています。次回の持続会では、今回発表していない自治体さんからも、積極的な取り組みの発表を期待しています。