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                 持続可能なまちづくり

10月22日「持続可能な発展を目指す自治体会議 第5回自治体相互視察 in ニセコ町」を開催しました

2021年10月22日(金)、第5回目となる自治体相互視察では、クラブヴォーバンの自治体正会員の北海道のニセコ町を訪問しました。コロナ禍の影響もあり昨年は開催できず今回も開催は難しいと考えていましたが、片山町長からのお声がけもあり、ギリギリのタイミングでニセコ町にて現地開催することができました。今回は正会員自治体の下川町、二戸市、葛巻町、横瀬町の他、羊蹄山麓の蘭越町、真狩町、京極町、倶知安町、留寿都村からのご参加も合わせ、30人超の参加となりました。

ニセコ町では、2018年に「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に選定され、町がモデル事業として提案した「NISEKO生活・モデル地区構築事業」を推進しています。この事業は2050年までにゼロカーボンを目指す町の中核的・先導的事業として、日本の新しいまちづくりの先進的なモデルとなるべく、ニセコ町一丸となって取り組んでいます。この事業にクラブヴォーバンも2018年より参画しており、2020年7月には、ニセコ町・地域事業者・クラブヴォーバンの共同出資による、「株式会社ニセコまち」を設立して事業を進めています。

今回は、ここ数年ニセコ町が取り組んできた、新庁舎建設や集合住宅の建設、断熱改修やコジェネ導入によるCO2削減を実現した公共温熱施設、SDGsモデル地区予定地などを視察し、参加自治体の今後の政策立案につなげることを目的として開催されました。

まずは、2021年1月から入居がスタートしている高性能アパート(高橋牧場ミルク工房の従業員用の寮)を視察。これは、SDGsモデル地区における高気密高断熱の集合住宅のモデルとなるアパートです。設計、施工の監修はCV代表の早田の創業したウェルネストホーム社、施工は地元の工務店によって実施されました。外観デザインを極力シンプルにした分、家の性能に注力し、ロックウールを使用し60分の耐火試験もクリアした断熱の壁や、アルゴンガスを入れたトリプル樹脂窓は、ウェルネストホーム社オリジナルの建材を使っています。

真冬には-15℃の日が続くニセコ町ですが、Ua値(断熱性能値)で0.25W/m2Kの高気密、高断熱での施工によって、主たる暖房は共用部におけるエアコン暖房のみです。それでもアパートの共用廊下に入った瞬間、暖かい空気に包まれます。この暖房だけでは物足りないという場合に、各戸に念のため小さなパネルヒーターは設置されています。この説明を聞き、厳しい冬の寒さを知っている羊蹄山麓の自治体からの参加者の方々は驚愕されていました。

次に、公民連携の株式会社キラットニセコが運営する駅前温泉施設「綺羅の湯(きらのゆ)」を視察。2018年9月に北海道で大規模停電が生じたことを契機に、ニセコ町でも新たな防災拠点が必要となり、防災機能を兼ね備えた施設となっています。北海道で真冬に停電すると、住民の命に関わる問題です。LPガスバルクを導入し、自家発電をしながら洗い場用の湯沸かしのベース熱供給を行うCHP(コジェネレーション)を導入し、排熱回収設備も設置しましたました。冬場、7℃の水を、温泉の排熱で温めて15℃にすることで、省エネになっています。さらに省エネ性能を高めるために、屋内の照明はLEDに交換され、元々ダブルガラスだった窓のさらに内側に更にダブルの内窓サッシを導入。これらにより、月々の大幅な光熱費の削減になっています。

次に、2021年の4月完成した、冬の寒さが非常に厳しいニセコにおいて、可能な限りCO2を排出しない、高性能な躯体に注力した高気密高断熱のニセコ町新庁舎を視察。「最高級の躯体性能があれば、重厚な設備は必要とされない」という取り組みで、Ua値0.18W/m2Kという超強力な断熱性能、躯体を誇る新庁舎(兼 防災センター)となっています。近年では本州並みに蒸し暑くなる北海道で、オフィス建築の弱点である冷房エネルギーの増大にも対応し、夏も冬も快適に、最小限の設備とエネルギー消費量で、快適な労働環境を保障しています。また、LPガスCHPと非常時の発電設備による自家発電で、ブラックアウト状態でも3日間は対応できる、防災機能を兼ね備えています。

床などの内装には道内産の白樺などの木材がふんだんに使用され、町内の家具作家の方々が制作したテーブルや椅子などが配置されています。普段は町民ホールとして利用開放されている円形議場、働き方改革を取り入れた会議スペース、間接照明やプライベートに配慮したワークスペース、羊蹄山を目前にして住民がくつろげるオープンスペース、ガラス張りの町長室、小さい子どもも楽しめるようなちょっとした仕掛けなど、いたるところに配慮が見られる庁舎となっています。

寒い冬・かさむ光熱費・高齢化や核家族化・ライフスタイルの変化によって豪雪地帯における雪かきや庭の管理が困難・・・従来の農村地域のスタイルのままでは、多くの町民にとって暮らしづらくなっています。同時に、人口の微増と核家族化による世帯数の急増によって、ニセコ町において住宅不足が地域課題となっており、数百人規模の町内で働く方が、町内に住めない事態が続いています。それらの地域課題を解決するために、SDGsモデル地区開発のプロジェクトが2020年から本格的にスタートしています。羊蹄山を望む開発地区を見渡せる来年の造成工事開始前の用地を視察しました。隣接する築約30年の建物は、まちづくり会社の事務所として使用させてもらうため、地域住民と共に断熱改修ワークショップを実施し、冬でも暖かい建物となりました。

最後に、毎年トリップアドバイザーの道駅ランキング上位に入る人気施設「ニセコビュープラザ」を訪ねました。特産品販売と観光案内の情報プラザ棟、農産物直売所やテイクアウトショップなどが立ち並んでいます。ニセコ産生乳のスイーツやチーズなどの乳製品から、焼き立てベーグルや石窯パン、日本酒やワインなどの地酒まで販売され、農産物直売所では「安心・安全・安価」をモットーに、その日の朝とれた新鮮な無農薬野菜をお手頃価格で提供しています。

諸外国に比べ脱炭素の取り組みが遅れてきた日本において、即効性のある地球温暖化対策が急務です。国内の自治体において、優先的に取り組むべき地球温暖化対策は何か。それをいち早く計画・実施している先進自治体の取り組みを視察し、自治体の担当者同士で直に相談ができる関係性を築く場を提供すること。クラブヴォーバンでは、引き続き温暖化対策に本気で取り組む自治体のサポートを続けていきたいと思います。