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エネルギー自立地域経済好循環 × イノベーション 
                 持続可能なまちづくり

10月19日PJ100セミナー「世界と日本国内の脱炭素先行事例について」を東京とZoomにて開催しました

 今回は代表の村上による、地域を脱炭素する計画づくりにとても役に立つツールや事例について、解説がありました。

 

最近はよく「脱炭素」と聞くようになりましたが、CVの活動を始めた2008年頃は、CO2排出量1990年比20%マイナスを目指し「PJ20セミナー」、のちに80%マイナスを目指し「PJ80セミナー」を開催し、社会としてCO2を削減するために具体的に個々が何をすべきかということを伝えてきました。(現在は「PJ100セミナー」。)CV設立当初は、参加者のメインの人は工務店や建築士など建物関係者でした。CVに関わった工務店や設計士の方々は、ドイツに研修で来られたりセミナーで勉強されたりし、その方々の関わる建築物件においては、断熱や気密の水準が上がり、CVとしてある一定の役割を担えたと思っています。

 

2010年頃には、建物の燃費を客観的に計れる良いツールが日本にはありませんでした。そういったものが必要だということで、ドイツにあった「エネルギーパス」というソフトを日本に輸入し、日本の気象条件や建築条件に改善し、「一般社団法人エネルギーパス協会」を立ち上げ、国内での導入・普及をしてきました。こちらも、これまでかなり多くの方が受講し、「エージェント」という形で、建物のエネルギー計算ができるノウハウを取得し、ご自身のビジネスに活用されるようになっています。

 

その後日本でもFITが始まり、東日本大震災後に再エネの機運が高まり、「地域経済を豊かにするためには、地元の資本によって再エネを導入し使うべき」という話をPJ80セミナーでやってきました。特に、農村部の自治体は具体的に何ができるかを議論してきました。そんな中で特に北海道の下川町さんとCVが共同で取り組みをすることがあり、地域課題を解決していこうということで「持続可能な発展をめざす自治体会議(通称:持続会)」を設立し、現在8自治体が参加し、地域内経済循環を高める取り組みや、エネルギーやまちづくりに関わる勉強会を開催しています。

 

また2020年、当時の菅総理は所信表明演説において、日本が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言。CVはそれまで、建物の省エネ・太陽光発電・EVなどの個別の取り組みをしてきたが、「PJ100セミナー」と名称を変更し、「自分の住んでいる地域や自治体全体が脱炭素に向かっていくために、もっと広い視野で何をしなければいけないか」という観点が必要になり、それに合わせたセミナーの内容にしてきています。前回のPJでは金融の観点から、世界や日本のビジネスの社会においてどう脱炭素の取り組みが始まっているのか、銀行の融資先のポートフォリオで脱炭素をしていく圧力がかかっている社会状況について話をしました。

 

今回は、近頃耳にすることが増えてきた「脱炭素先行地域」と、2050年に日本全体が脱炭素しているという状況に向けて、どんなストーリーやツールが準備されているかという話をします。環境省の「脱炭素地域づくり支援サイト(https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/ )」を見ると、「脱炭素先行地域」の内容がわかります。

 

2050年にいきなり全ての自治体で、ではなく、まず2030年までに全国で100以上の地域エリアを選定し、先行して脱炭素を達成してから、他の地域に横展開していきましょう、という内容で、それを支援するための強力な予算措置も取られています。

 

ここでは、「実現可能性」にとても重点を置かれています。対象は、産業部門は含まず、まずは民生の家庭部門と業務部門と旅客や運輸の一部のみ、とりわけ電力部門にフォーカスされています。つまり、「脱炭素先行地域」は、2030年に民生部門の電力部門は脱炭素し、熱部門や運輸部門は政府目標(今のところ46%マイナス)に準じる、という定義になっています。

 

この「脱炭素先行地域」は、昨年(2021年)12月に応募が始まり、第一回目の選定が今年(2022年)2月にあり、全国で27の地域が選定されています。今後は、年に2回の選定で、2025年度までに毎回約20~30の自治体を合計4~6回で選定していく計画のようです。また、採択された地域では、2030年に自信が設定した地域エリアの電力の脱炭素化を目指さなければなりません。

 

熱と交通にはそれほど重点が置かれていませんが、電気の再エネが進められ、省エネではZEH/高効率機器とPV、EVがマストです。また既に実用化されている、市場で普及している技術で、インパクトのある再エネ供給のプロジェクトが必要です。また地域における合意が前提とされます。これまでの、書類のみの計画だったり、新しい技術を先導的に導入したものの実用化に至らなかった失敗事例の反省が強く活かされていると思われます。

 

「脱炭素先行地域」では、再エネや省エネを進めてCO2排出量をゼロに近づけることによって、その地域の「どんな地域課題が、どのように解決されるのか」というストーリーがかなり重要です。地域の資源を有効活用して、その地域をどのように豊かにしたいのかが問われているわけです。「脱炭素先行地域」に選定されると、例えば、省エネ建築を進めて、自家消費型の太陽光発電を設置して、EV車にシフトするということに、たくさんの予算が用意されています。

 

これまで、政令都市や環境モデル都市といった自治体においては、自分の自治体でどれくらいのCO2を排出しているか把握し、場合によっては「地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」が既に作成されてます。しかし、それは、日本に1700ほどある自治体のうちの1/10ほどに過ぎません。これから、脱炭素に向けて対策を考えるほとんどに自治体においては、以下に紹介する便利なツールを使うとよいでしょう。

 

現状を分析し計画を立てるために、これまでのようにコンサルに頼らなくても、行政職員が簡単にできるようになっているので、ぜひ自治体職員の人は自分自身で事務事業編と区域施策編を策定してください。そのためのツールとして、最近とても優れたツールが環境省などから公開されています。

 

今回のセミナーでは、以下のシステム・ツールを実際に動かして見せながら、ツールの使い方や出力される内容、読み解き方などの解説をしました:

 

・事務事業編を策定するためのツールとして、環境省の「地方公共団体実行計画策定・実施支援サイト」の、自治体の温室効果ガス総排出量の算定・管理の支援等を目的とした支援システムLAPSS。(https://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/ )

 

・区域施策編を策定するためのツールとして、自治体全域でざっくりと、どれくらいのCO2を排出しているかを把握するための「自治体排出量管理カルテ」。自治体で、民生・家庭・業務・運輸・産業、各部門全てのエネルギー消費量の推移が一目瞭然、また各自治体のFITによる再エネの状況も簡単にわかります。(https://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/tools/karte.html )

 

・それで出てきたエネルギー消費量に対し、再エネや省エネで賄いカーボンゼロにしようとしたら、どれくらい再エネを作らないといけないか、という試算ができる「REPOS」。自分の自治体の再エネポテンシャルもわかります。(https://www.renewable-energy-potential.env.go.jp/RenewableEnergy/ )

 

・環境省のサイトからダウンロードできる「地域経済循環分析」。ダウンロードしたZIPデータを開き自治体名などを入れ実行すると、昔はコンサルに高い費用を払って作ってもらっていたような地域経済分析の詳細レポートが、簡単に自動作成できるようになっています。数十ページの分析データをよく読めば、その地域の経済の状況がよくわかり、地域課題の発見に役立ちます。(https://www.env.go.jp/policy/circulation/index.html )

 

・千葉大学の倉阪教授が脱炭素を検討する自治体向けに公開している「カーボンニュートラル・シミュレータ」。2050年の人口、2050年までの段階的なZEHやZEBの目標、自動車のEV移行、再エネの計画的導入などの目標%を入力していくと、何年にカーボンゼロが達成できるかが出てきます。(https://opossum.jpn.org/news/2021/09/30/805/ )

 

また、CVメンバーの、千葉商科大学基盤教育機構准教授田中信一郎氏より、「区域施策編」の策定や、「脱炭素先行地域」応募の重要なポイントとして、以下3点解説がありました:

 

1)「地域主導の再エネ」「公共施設の改修に合わせて断熱」「地域との連携、民間主導」の3点セットを常に意識に入れる。

 

2)産業は後回しでいい。大企業や大工場は、小規模自治体は個別の対策をするのには限度があるため、まずは地域の中小企業を支援すること。

 

3)温暖化対策計画を、独立させて作らなくてもいい。例えば、総合計画の中に脱炭素の計画を入れてもいい。

 

これらのツールをぜひ活用して、自分の住む地域をカーボンゼロにしていく取り組みや計画づくりに役立ててください、との話でした。