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エネルギー自立地域経済好循環 × イノベーション 
                 持続可能なまちづくり

1月25日PJ100セミナー「エネルギー急騰時代 自衛対策 / 高性能集合住宅の傾向」を東京新橋にて開催しました

世界的なエネルギー価格の高騰が生じています。ここに円安が加わり、私たちの電気・ガソリン・灯油・木材・食品・・・・etc. ありとあらゆる生活必需品の価格がここ数年で急騰しています。今回のPJ100セミナーにおいては、代表の村上から、昨今の原油・ガスなどのエネルギー価格の動向やそれによる各方面への影響を解説しました。その際、現状では国による補助で安価になっている一部の化石燃料や電力の価格が、今後どのように推移するかの将来像予測ついてもお話し、そうした影響を見込んだうえで、自衛措置としてやっておくべき有効な対策について議論しました。続いて、ここ2、3年で新たな流れができつつある、高気密高断熱の集合住宅の現状について、代表理事の早田が解説しました。

 

まずは代表の村上より、「2022/23年 エネルギー価格と今後の推移」について。この1月、皆さん電気料金明細を見てびっくりすると思います。ついに電力価格が1kWh=50円を超える時代なりました。ただし2月からは、電力料金に上乗せされている燃料調整費のうち一部(7円/kWh)が補助金でカバーされます。またガソリンも、170円/Lの壁を死守するということで、それを超える分に税金が投入されています。

 

本来なら、こういったケースにおける補助金は、世帯人員1人あたり月にいくら、あるいは事業所であれば従業員1人あたりいくら、という形で補助しておいて、エネルギー価格自体は市場原理に任せれば、競争原理が働き、家庭でも、事業所でも、高いエネルギー代金をどうにか減らそうと努力し、省エネや再エネなどの推進につながりつつ、経済的な打撃は抑制されるはずです。しかし、短絡的にエネルギー価格抑制のために補助金をつけ、価格を抑制したことで、せっかく国が借金した税支出によっても、省エネや再エネの投資に大々的につながりません。残された借金を抱えることになる子どもたちの世代は、親の世代が(省エネや再エネに投資することはなく)エネルギーを安価にするためだけに利用したという批判を浴びせても仕方がないでしょう。

 

次に、天然ガス・石油・石炭などのエネルギー別の長期的・短期的な価格の推移と現在の値上がりの国際的政情も踏まえた背景、今後の予測についてです。ウクライナ・ロシアの情勢により、天然ガスや原油の価格が2倍前後上昇しているのは理解できますよね? ただし、石炭価格については2年前の6~7倍まで上昇しています。日本の火力発電の約半分以上の燃料になっている石炭の値上げによって、電気料金は値上げせざるを得ない状況です。そして、LPGまでが便乗的に値上げされています。日本のエネルギー価格は、エネルギー種別に関係なく軒並み高騰していますが、円安という理由もあって、今後も短期・中期的に大幅に値下がりする要素はあまり高くないといえるでしょう。

 

2022年度は、エネルギー価格抑制のために使われる補助金の合計は9兆円超にもなります。それゆえ、心ある人は、省エネと再エネに未来の子どもたちのためにも、以下のような投資をしてゆく必要があります:

 

エネルギー供給のゲームチェンジ:以下の「3つの神器」に投資してゆくしかないでしょう。電力は、「太陽光(自家消費)」と「風力・一部バイオマス」に。熱は、「省エネ建築」(断熱・気密)と「ヒートポンプ」(エアコン・エコキュート)に。運輸は「EV」に。また、これ以外にも、CVでこれまでもお伝えしているように、適度な密度で人がコンパクトに集まって居住し、車ではなく自転車や徒歩で移動できるようなインフラを準備し、ローカルな食材をローカルで消費し、肉を食べ過ぎない、です。

 

そして、今私たちが大きく注目している省エネの大きなゲームチェンジは、「人口減少に伴う集住化」「まちのコンパクト化」、そしてそれを推し進めるための「高性能・脱炭素型(例えば太陽光自家発電)・集合住宅(メインは賃貸住宅)」です。ですから、次に早田より「高気密高断熱の分譲/賃貸住宅の傾向」と題して話がありました。

 

一般的な戸建て住宅主体の街では、建物は戸別に隙間を作って建てられています。夏冬の暑く冷たい空気がその隙間を通りぬけるので、もったいない。その隙間の土地も活用できないことがほとんどで、もったいない。こうした課題に対して、集合住宅であれば一軒あたりの外皮が少なく熱効率も上がり、土地も活用できることを特徴としています。

 

早田が手掛けたニセコ町内の集合住宅の事例です。ニセコ町の8戸1棟の集合住宅は、UA値0.21W/㎡K、気密性能0.2㎠/㎡です。8戸の建物全体で6畳用エアコンが4台のみで暖房を賄います(エアコンで温められた空気を各戸に分配しています)。豪雪で雪が積もり、日中の最高気温が-4℃、最低気温が-15℃の時でも、室内は常に22℃をキープしています。夏場の外気温が30℃を超える日でも室温は約25℃で、年中同じくらいの室温をキープできます。壁が厚いので音もとても静か。この集合住宅は温かいので人気が高く、常に満室です。

 

この住宅については、入居後2年間かけて、住宅の電力消費量や室温・外気温の計測データについても蓄積してきました。EMSの制御システムの改善運用などを行い、暖房エネルギーをさらに抑制する取り組みも行っています。

 

これから電気代も物価も上がっていくことが予測される中、まず断熱性能を強化して、必要となるエネルギー自体を削減すると、長期的な経済効果も高まります。世界的に見ても、建物の断熱性能UA値は0.2~0.4W/m2Kを目指しています。日本でも本来は、HEAT20で言えば、G2ではなくG3レベル、断熱等級で言えば等級7の建物を目指していくべきでしょう。

 

これほど高性能で少しの電気で快適な住宅を作っていても、賃貸住宅の場合、戸建て注文住宅とは異なり、なかなかオーナーさんに選んでもらいにくい。賃貸ビジネスを考えると、いくら電気を使おうとそれは居住者負担なのでオーナーさんの関心が薄く、建築費は安いがエネルギー負担の大きい普通の集合住宅を建ててしまうことになっています。それで居住者は、音がうるさいからと賃貸を出て、安普請の戸建てに住み替える、と悪循環が続きます。そんな状況で、一体いつこの日本が脱炭素できるのでしょうか?このおかしな構図を変革するためにも、現在、私たちはこの分野に注力して活動をしています。

 

とはいえ、ここまで光熱費が高騰していると、今後、高性能な賃貸住宅の需要が急増するでしょう。まずは、それぞれの地域に1つでいいのでそうした事例を作ること。そうすれば、そこから一気に口コミが広がります。できることを皆さんも一緒に行動してゆきましょう。

 

(参考)SUUMO:ニセコ町に誕生の「最強断熱の集合住宅」、屋外マイナス14度でも室内エアコンなしで20度! 温室効果ガス排出量ゼロのまちづくりにも注目 

https://suumo.jp/journal/2023/01/10/192796/