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エネルギー自立地域経済好循環 × イノベーション 
                 持続可能なまちづくり

10月19-20日「持続可能な発展を目指す自治体会議 第7回自治体相互視察 in 下川町」を開催しました

2023年10月、第7回目となる自治体相互視察は、クラブヴォーバン自治体正会員の北海道下川町で開催されました。2015年、第一回目のクラブヴォーバン自治体相互視察で下川町を訪問し、今回2巡目の訪問となりました。今回は正会員自治体のニセコ町、二戸市、北栄町とクラブヴォーバンスタッフで訪問し、下川町職員の方あわせて約25名の参加でした。

 

下川町は、644㎢(東京23区の広さに相当)の約9割が森林で覆われ、豊かな自然資源を背景に農林業を基幹産業とした、北海道北部の人口約3千人の農山村地域です。まず下川町役場にて、下川町長の田村泰司氏より歓迎のご挨拶をいただきました。クラブヴォーバン代表村上の挨拶とこれまでの持続会の取り組みの簡単な説明の後、総務企画課課長の山本敏夫氏より、持続可能な地域社会の実現に向けたこれまでの下川町の取組について説明を受けました。環境モデル都市やSDGs未来都市の国内第一号として選定され、先進的な取組を積み重ねてきた下川町。下川町の森林資源を活かしたこれまでの「森林・林業・エネルギー政策」の取組ついて、お話を伺いました。「FSC森林認証に基づいた循環型森林経営」「森林資源活用(森林の恵みを余すことなく)」「北海道4町連携によるカーボンオフセット事業」「幼児~高校まで15年一貫の森林環境教育」「森林バイオマスエネルギー利用による地域づくり」「木質バイオマスボイラーと熱供給システム」「一の橋地区バイオビレッジ構想と熱供給システム」「木質原料製造施設」など、下川町では地域住民や地元企業や行政が協働し、多岐にわたって地域内で経済が循環する事業を展開しています。

 

今では、町内の再エネによる熱供給の自給率が56%、再エネによる電力の自給率が104%にものぼります!電力については既にゼロカーボンを達成していますが、2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティしもかわ」宣言を2022年3月に町長が宣言、「持続可能で幸せな地域の創造」を掲げ積極的に取り組んでいます。地域において、地域のエネルギーを活用した新しい事業や雇用がうまれることによって、町外や道外からの若い世代の移住者も増えています。

 

これらの背景を念頭に置きつつ、まず「下川フォレストファミリー株式会社」を訪問。役員の二瓶敏幸氏にご案内いただき、様々な大型機械を使った木材加工の現場を視察させていただきました。下川町で伐採された木は、なるべく丸太のままではなく、集成材や羽目板、フローリング材など様々な形にここで加工し、付加価値を高めてから地域外に流通させるしくみを構築しています。また端材も捨てず、丸太一本をなるべく使い尽くすようにしています。加工過程でうまれた端材は、ここでの木材乾燥用や暖房の燃料として、再活用されています。今では道北で木材加工場は2か所しか残っておらず、木材加工場が地域内にあるというのは町にとって大きなインパクトがある、との話でした。

 

次に訪れた「株式会社フプの森」では、役員・研究開発マネージャーの亀山範子氏にお話を伺いました。「フプ」とは、アイヌ語で「トドマツ」。トドマツは油分が多く、トドマツを中心とした地域内で出る間伐材枝葉を手作業で収集し、ここの大窯で蒸して蒸留し、採取された精油や蒸留水を使ったアロマミストやハンドクリームなどを商品開発・製品化し、全国に販売しています。あくまでも「枝葉など端材を活用する」ということで行っている事業であるため、域内で行われる伐採のタイミングや量は天候に左右され、また新鮮なうちに加工する必要があるため、なかなか生産計画を立てにくいのが悩みとのことでした。トドマツの精油は、リラックスできる素晴らしい香りでした。ふるさと納税の返礼品としても人気が高いそう。FSC認証を取った木で精油を製造しているのは、全国でもあまり例がないのではとのことでした。

 

続いて「下川町木質原料製造施設」では、総務企画課課長の山本氏にご案内いただきました。ここでは、地域内での倒木や支障木、ゴミになる木などを受け入れ、一年ほど自然乾燥(水分100%→40%に)した後に破砕機で細かく切削し、木質バイオマスボイラー用の燃料用チップを製造しています。私たちが訪問した時、「クローラー自走式切削チップ製造機械」を稼働させ、実際に大きな木からチップが製造される現場を見せていただきました。ここでは、ガソリンスタンドなど地元の燃料関連企業で構成する下川エネルギー供給協同組合が指定管理を行い、人件費など経費を除いた利益分は指定管理者と町で折半しているとのこと。石油燃料から木質バイオマスへのエネルギーシフトによる地元エネルギー企業の減収を、最小限に留めるよう配慮しました。現在、木質バイオマスボイラーは合計10基30施設(公共温泉・認定こども園、高齢者複合施設・町営住宅・エコハウス・小中学校や一の橋地区や病院の熱供給施設など、公共施設全体の約7割)に熱を供給しており、ここで年間約3,500tのチップを製造しています

 

次に、町の中心市街地から約10km離れた「一の橋地区バイオビレッジ」の、高気密高断熱の集住化住宅と木質バイオマスボイラー施設、しいたけハウスを視察しました。この地区は林業の衰退やJR線廃止などにより顕著に過疎化が進んでいましたが、地域住民と行政などが議論を重ね2010年に「一の橋活性化プラン」を策定。一の橋バイオビレッジ構想がスタートし「新産業の創造(経済)」「超高齢化対策(社会)」「エネルギーの自給(環境)」をコンセプトに集落再生に取り組んでいます。この地区の熱需要の9割は、エリア内にある2基の木質バイオマスボイラーによって賄われています。1LDK~2LDK 22戸の高性能な低層集合住宅内の共有廊下は、寒さの厳しい道北の10月下旬にも関わらず暖かでした。このエリアの熱供給を担う地域熱供給システムは、ボイラー棟にある太陽光パネル(主に夏場)と木質ボイラー2基。このエリアの集住化住宅のほか、障がい者支援施設や、郵便局や警察官立寄所も兼ねた住民センター、カフェ、椎茸栽培や薬用植物などの育苗などに温熱を供給しています。このボイラー棟や集住化施設の管理は、地域おこし協力隊が退任後も地域内でNPO法人を立ち上げ、集落再生に取り組んでいます。地域熱を活用したしいたけハウスも、ただ栽培してまとめて出荷するのではなく、ここで各等級に選別しパッキングまでしてから、近隣や道内のスーパーなどへ出荷しているとのこと。付加価値を高めて出荷することで、ここに雇用もうまれ地域が潤うとのことでした。これらの取組が功を奏し、このエリアの人口構造は、子どもや現役で働く世代が増え、バランスがよくなっています。

 

最後に宿泊・懇親会場となる五味温泉へ。泉質は「美人の湯」とも言われる、国内では珍しい良質な「含二酸化炭酸水素塩泉」とのこと。露天風呂では、赤く色づいた木々が見え、森林浴が楽しめました。ここのロビーや廊下も、熱供給による床暖房で素足でも暖か。温泉の加熱も、地元産の木質バイオマスが燃料として活用されています。夜の懇親会では田村町長と市田尚之副町長にもご参加いただき、五味温泉ワインや近隣の旭川の地酒も差し入れいただき、大いに盛り上がりました。翌日は下川町職員の方々の職員研修も兼ね、「人口減少と移住定住と農村の暮らしのインフラ」をテーマに役場でクラブヴォーバン持続会を開催させていただきました。

 

町内のあちらこちらの施設で、町の森林を活用した地域経済循環型のまちの経営や木質バイオマスエネルギーの取組がとてもわかりやすい形で紹介されているパネルを見かけました。下川町では移住者への支援もきめ細やかに行っており、寒冷地域の小さな農山村地域であるにもかかわらず、職もあり起業する人たちも多く、全国からの若い世代の移住者にとても人気の高い町であるのが頷けました。