今回は、新橋現地開催&オンラインにて、理事の田中健人氏による「持続可能なまちづくりに地域を巻き込むためのマーケティング講座」でした。田中氏は、北海道札幌市を拠点に、企業や自治体、金融機関などを対象に、主に情報発信のサポートする会社を経営。WEBや映像、VRなどのコンテンツ制作や、SNSやWEBを活用したマーケティングなどのコンサルティングを行っています。映像分野では、一仲間と制作した作品が第一回SDGsクリエイティブアワードで部門大賞を受賞。ほかにも北海道の委託事業等で地域の魅力を高める活動をされています。田中氏のこれまでの経験から、社会によりインパクトを与えるマーケティングのヒントについて学びました。
まずは代表の村上より、ニセコ町で進んでいるSDGsモデル街区の進捗についての情報共有。ニセコ町は「NISEKO生活モデル地区構想事業」を含むSDGs未来都市計画を策定しており、2018年に「SDGs未来都市」として内閣府から採択されました。日本各地で人口減少が加速化しているのに、ニセコ町では人口が維持され、同時に核家族化の進展により、世帯数が大幅に増加しています。ニセコ町への移住希望者はもとより、ニセコ町で働いている地域の住民も、町内に住める住宅がなく町外から通っている人もたくさんいます。
2050年脱炭素社会に向けて、ニセコ町が重要視している取り組みは、「脱炭素型の集合賃貸住宅」をつくること。従来の社会福祉的な機能を持つ公営住宅とは別に、地域の中でこれ以上人口減少を加速させないためにも、脱炭素型である程度品質のいい集合住宅を整備する必要があります。この整備を急ぐ理由は、30代など若い世代がローンを組んで新築の家を建てるのが難しい時代になってきていることもあります。建築費はこの3年間で急騰し、普通に働いている人ではローンを組んで新築の家を建てることが難しくなっています。地域で賃貸住宅がなければ、移住者の増加も望めません。
この約10年で日本の人口は激減し、各自治体は人口ビジョンを作り、人口が減っていくことを前提に政策を考えてきました。しかし、都市計画やまちづくり、住宅政策の場面での問題は、人口数の推計はあっても「世帯数」の将来推計がほとんどの自治体にないこと。人口減少の進行と同時に核家族化が進んでいるので、実は世帯数はあまり減らない、横ばい、あるいは微増になっていき、大きくは減らないケースも多々あります。また高度成長期に大量に供給されたことを理由として、空き家はあっても、手直しして住めるような状態のいい家は残っていない、という状況がいろんな自治体で起きつつあります。
これらのことから、多くの自治体では、いずれ世帯数と住宅ストック数のミスマッチが起きるでしょう。2030年頃には、住める家がなく賃貸住宅のある都市部に人が移り、人口減少が加速化する自治体が増えていく恐れがあります。ですから、CVは率先してニセコ町とタッグを組み、町営住宅だけでは手の届かない住宅政策を担う会社として「株式会社ニセコまち」をつくり、高性能の集合住宅の街区を手がけています。
次に田中氏より、実際に5年前から取り組んでいる「NISEKO生活モデル地区構想事業」の住宅地、「ニセコミライ」のプロジェクトでどのように地域の人にまちづくり会社を知ってもらい、関係を築いてきたかについて。街区開発を担う「株式会社ニセコまち」は、ニセコ町と地域企業、クラブヴォーバンの共同出資で設立し、田中氏は取締役として関わっています。最初から意図してやったわけではないが、やってみて結果的によかったことを皆さんに共有するので、ぜひ1つでも役に立ててもらえれば、とのことでした。やってよかったことは、難易度A・B・Cの難易度別に、具体例を交えながら解説がありました。また、失敗談や、地域や地方に対する誤解や落とし穴、地域を巻き込んでいく上で大切だと思う考えなども共有されました。