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エネルギー自立地域経済好循環 × イノベーション 
                 持続可能なまちづくり

1月18日「第19回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

前回は、第7回目の持続会正会員自治体相互視察を兼ねて、北海道下川町で「人口減少と移住・農村の暮らしのインフラ」をテーマに持続会を東京とオンラインで開催しました。下川町は、町の面積の約9割を占める地域資源の森林を最大限・最大効率に活用することを掲げています。循環型森林経営を基軸として、森林総合産業の構築、超高齢化社会にも対応した新たな社会システムの構築、森林バイオマスなどの再生可能エネルギーを活用した地域エネルギーの完全自給と脱炭素社会構築をも目指し、「持続可能な地域社会(森林未来都市)の実現」に向けた取り組みを進めています。また、全産業の共通課題となっている人材不足に対応するため、下川町産業活性化支援機構を立ち上げ、毎年約30人(総人口の1%)が移住し、2016年以降は、20代から40代までの年齢階層では転入超過傾向にあります。

今回は前回に続き「移住と住宅インフラ」がテーマ。自治体の皆さんには課題として「将来の世帯数」「住宅ストック数」を調査していただき、将来の世帯数に対し住宅ストック数が足りるかの予測について発表がありました。少子高齢化と核家族化が進み一世帯あたりの人数は減少しているので、世帯数は人口減少の速度に比例せず将来大きくは減りません。一方、全国で移住先として人気のある自治体では、年々一定数の移住者が流入し状態のよい空き家は既に不足しつつあります。せっかく町で移住促進をしたり仕事を創出したりしても、域内に住める手ごろな住宅がなければ若い人たちも住めず移住者も入ってきようがありません。代表の村上と、田中信一郎氏からは、自治体において脱炭素化を加速させながら、域内の全ての人が安心して暮らせ移住者も増やしていけるまちを実現するために、全国での事例共有や、自治体・自治体職員として何ができるかについてのレクがありました。

 

各自治体において、人口ビジョンで2050年までの「将来の人口」については予測していても、「将来の世帯数」が、「将来必要な住宅戸数」に対応するにも関わらず、将来世帯数の予測をしている自治体がまだまだ少ないのが現実です。なので今回持続会の皆さんに出していた宿題は「将来の世帯数」と、「将来の住宅ストック数」の予測をし、世帯数に対し住宅ストック数が足りていくのかの予測をし、将来の町内の住宅インフラの計画に役立ててください、という内容でした。

 

次に、代表の村上から「自治体における住宅インフラの行く末と脱炭素社会」ということで、レクがありました。クラブヴォーバンでは、昨年度は北栄町、今年度はニセコ町から、地球温暖化対策実行計画の区域施策編を受託。両町の区域施策編の策定においては、可能な限り、既存の上位計画、個別計画を最大限尊重しながら、地域課題をあぶりだし、地域課題の解決と温暖化対策の両立を目指しました。その経験から、自治体内において、脱炭素を進めながらどのように住宅インフラを進めていけばいいのか、既存の総合計画・自治総合戦略や個別計画と、どのように整合性をとっていけばよいかの提案がありました。また、全国で民間が主体となって進められている、先行しているまちづくりプロジェクトの事例共有がありました。

 

続いて、千葉商科大学の田中信一郎氏から「公共施設から始める人口減少時代の脱炭素まちづくり」について、田中氏が関わっている長野県の動き。「確かな暮らしを守る」「ゆたかな社会を実現する」と総合計画に書かれている県知事のことばは、単なるキャッチコピーではなく、きちんと将来の人口減少や脱炭素の社会課題を踏まえ、それに対する地域に根差した対策を考えた上でのことばです。また、市民からのボトムアップの動きとして、NPO法人上田市民エネルギーと地域の多様な人たちで立ち上げた「上田リバース会議」の事例共有もありました。脱炭素だけではなく、地域の課題は他にもたくさんあります。まずは地域の計画や統計データ(人口減少や高齢化、地域のスプロール化・スポンジ化、上下水道や道路などのインフラ整備更新、移動手段、店舗数や不動産価格など)を皆で徹底的に読み込み、の問題を可視化して共有し、未来の地域について話し合いの場が持たれています。

 

この動きが行政も取り込み、上田市は第4次脱炭素先行地域に認定されました。自治体が果たすべき役割は、地域に暮らす人たちが、子ども孫世代の50年後も100年後も安心して暮らせる地域をつくること、これに尽きます。首長からのトップダウンの動きと、職員や市民からのボトムアップの動き、両者がかみ合うと一気に持続可能なまちづくりに向けて動きが加速するので、ぜひここの皆さんも参考にしてほしい、とのことでした。

 

最後に、来年度の環境省の非住宅建築の脱炭素改修加速化事業と、今年4月1日から始まる建物の表示制度についての説明がありました。これまでクラブヴォーバンでは、民間レベルで建物の性能表示をしていきましょう、ということで日本エネルギーパス協会を設立し、建物のエネルギー性能表示をやってきましたが、今年4月より新築の「全ての」建物に、エネルギー表示が義務付け(努力義務)されます。ここで学んでいる皆さんの自治体でも、地域の脱炭素が進むようにいち早くこの動きをサポートしてください、とのことでした。