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                 持続可能なまちづくり

11月28日「持続可能な発展を目指す自治体会議 第8回自治体相互視察 in 横瀬町」を開催しました

第8回目となる自治体相互視察は、2024年11月28日、クラブヴォーバン自治体正会員の埼玉県横瀬町で開催されました。横瀬町への視察は、持続会として ‘19年に続き今回は5年ぶり2回目。横瀬町が進めている官民連携の取組や関連施設などを視察し、人口減少高齢化が急速に進む中で、豊かで持続可能なまちにしていくための、今後の政策立案につなげていくことが目的です。横瀬町の取組みといえば、官民連携の「よこらぼ」! ここ数年、加速する人口減少や高齢化に伴う社会課題対するユニークな取組みとして、メディアでも数多く取り上げられています。クラブヴォーバン(CV)の提唱する「地域内経済循環」につながる政策を積極的に進め、町の人口減少の影響を可能な限り食い止め、まちが豊かになるプラスの循環をつくりだしている先進事例として、持続会正会員自治体の北海道下川町・ニセコ町、岩手県二戸市・葛巻町、鳥取県北栄町の職員や副市長、副町長の方々とCVスタッフで訪問しました。横瀬町職員も含めて、25名で相互視察を行いました。

横瀬町は、埼玉県の西部、秩父地方の南東部にあり、都心から70km圏内に位置する人口約7,700人の町です。町の面積のほとんどが山地。豊かな森林資源と自然環境が特徴ながら、西武鉄道の特急で都心(池袋)から最短約75分でアクセスできるため、秩父地域の東の玄関口として、観光業や果樹を主体とする観光農業が盛んです。近年は首都圏のベッドタウンとしても移住者や関連人口が増加しつつありますが、町の中心・玄関口である横瀬駅周辺には、商店街等はなく、町の中心が希薄で賑わいにかけているという課題がありました。そのため、中心市街地の機能向上、既存施設の再活用によるまちなか再生を行っています。

 横瀬町は安全・安心のまちづくりのために防災機能の向上をはかり、“多様な幸せが花開く「カラフルタウン」の実現” “日本一住みよい町、日本一誇れる町” を目指し、「よこらぼ」によって「日本一チャレンジする町」「日本一チャレンジを応援する町」を掲げています。

 

「よこらぼ」概要:

「よこらぼ」は、‘16年から始めた“横瀬町とコラボする研究所”。横瀬町は小さな町で、人口が少なく予算規模も小さい。でも小さいからこそ、機動力はあります。「横瀬町でこんなチャレンジをしたい」という提案を大中小企業や団体・個人から募り、毎月開催される審査会でプレゼンをしてもらいます。審査に当たるのは地域の商会議所や観光協会、地域金融や町の議員、そして役場の課長の方々。「よこらぼ」の事業として採択されれば、町と協業しながらすぐに始めることができます。提案の内容は、新技術や新サービス・新商品などの実証実験・教育や人づくり・イベントなどさまざま。’16年秋から約7年の間、コロナの影響がありながらもこれまで234件の提案が寄せられ、うち141件が採択。実際にプロジェクトや事業として動き始めたとのこと。うち3/4は県外、主に東京からの応募だそうです。

「よこらぼ」では「こんなことをやってほしい」ではなく、「あなたのやりたいことを横瀬でやりませんか?」と呼び掛けています。「よこらぼ」の先駆的な取組みを、積極的に町からも発信し、町と応募者双方にとってWin-Winの関係構築を目指します。これにより、町の知名度が向上し、また地域内外の「人」がつながる流れが確実にできてきました。地域おこし協力隊の応募も増え、これまで35人が卒業し23人が現在活躍中。卒業した人も、ほとんどが横瀬町近辺に住み続けています。移住者も増えつつありますが、起業や小商いをする人たちの「2拠点移住」など、関連人口も増えています。

 

相互視察について

まずは西武線横瀬駅より徒歩数分にある横瀬町庁舎に立ち寄りました。一階ロビーにある地域の木材をから加工された椅子や棚などは、地域商社ENgaWAが設置。荷物を置き徒歩すぐの「AREA 898」へ移動し、地域おこし協力隊の人が「チャレンジキッチンENgaWA」で調理した美味しいお弁当のランチ。地域の農家さんから購入した野菜が使われているとのことです。そして町長の富田能成氏より歓迎の挨拶がありました。‘15年に町長に就任した後、クラブヴォーバン(CV)の持続会正会員に入会して学び、CVやフライブルクのまちづくりから影響を受けている、とのこと。CV持続会正会員の他の自治体とこの持続会でつながり、お互いの自治体を視察したり、鳥取県北栄町とは今年連携協定を締結し職員研修をしたりなど、積極的な交流がうまれているとのことでした。CV代表村上からの挨拶の後、副町長の井上雅国氏より、この数年「よこらぼ」を中心に広がってきた官民/官官連携の取組みや背景についてレクを受け、関連各施設を案内していただきました。

 

「AREA 898」は、使われなくなったJAの旧直売所をリフォームし、域内外の人たちが交流できる拠点として‘19年春にスタートしたオープン&フレンドリースペース(「よこらぼ」プロジェクトで実現)。町民と横瀬町に関わる人たちが交わる“交差点”として作られました。イベントや講演・セミナー、会議・勉強会など、様々な用途で使えるよう設計され、役場が運営しています。ボランティアの地域住民の人たちと手作りでできるだけお金をかけずにリフォームした内装は、モダンなデザインながらもよく見るとテーブルや物置棚は昔の野菜販売の陳列棚が使われていたり。地域で使われていない古いものをもらって再活用したり。前回の視察ではオープンしてまだ日が浅くこれからの施設という印象でしたが、今回は隣の「LAC横瀬」にも利用者が大勢いて、駅前に商店街のなかった町に人々が集う場として地域に根付いていることが伺えました。

 

元JAちちぶ横瀬支店だった同じ1階フロアの隣接スペースは「LAC横瀬」として‘22年より民間が運営。コワーキングスペースや無料wi-fi、気がねなくオンライン会議ができる木製の設置型個室(これも「よこらぼ」で実現)、共有で使えるキッチンスペースなどがあり、地域の人のコミュ二ティスペースや全国からのワーケーションやリモートワークのスペースとして活用されています。また「よこらぼ」実証実験として、気軽に授乳やおむつ替えができる設置型の個室も設置。2階には短期・長期で滞在できる宿泊施設も運営されています。また2階には秩父産の木をふんだんに使用して作られた子どもや母親のためのフリースペース「AREA 899」も完成しました。平日10~18時は誰でも無料で利用できます。カメラが設置されているので、2階の子どもの様子をリアルタイムでタブレットで確認しながら、1階で親が安心して仕事したり過ごしたりできるので、利用者の方が結構いるとのこと。このスペースを制作したのは、その隣にある「TATE Lab.(たてラボ)」。地方創生テレワーク交付金を活用して整備、最先端の木材加工機材Shop Botが導入され、‘23年春から横瀬町出身の若手家具職人が地元産の木を使ったオーダーメイド家具を作ったりワークショップを開いたりしています。横瀬町役場1階のロビーで使われている椅子や本棚もここで制作されたもの。この時はちょうど連携協定を締結したCV持続会自治体の北栄町から注文が入った、道の駅で使われる予定の椅子を制作しているところでした。

 

次に訪れたのは、すぐ隣の元JAの倉庫だった敷地に‘22年日本財団の「子ども第三の居場所」の助成金を受けて完成した「NAZELAB(なぜラボ)」。広々とした心地よい2階建ての館内の至る所に、絵本などの本が手に取りやすいようたくさん並べられています。運営している元教員の館野氏より説明を受けました。学校へ行かないことを選んだ子どもたちのためのフリースクール(幼稚園~小中学校)として、学校の放課後に過ごす居場所として、子どもたちが様々な体験ができるよう配慮されています。望遠鏡や顕微鏡、小さなキッチンなどもあり、この日は本を読んで過ごすこどもたち、キッチンで持ってきた食事を鍋で温めている子たちなどが過ごしていました。子どもや保護者向けのイベントも開催されています。

 

そこから徒歩数分の「チャレンジキッチンENgaWA」。使われなくなった旧給食センターを、地方創生臨時交付金交付金で解体し整備することができました。‘22年春から農家さんや道の駅等と連携した新しい特産品の開発・販売の拠点として建物部分を活用、屋外部分には飲食スペースなどを設け、人が集い憩う所となっています。形が揃わず販売しにくい野菜を農家さんから購入しお弁当を製造販売したり、土曜日のみカフェをしたり、夏場には近場の飲食店が定休日の日にビアガーデンを開いたり。ここでは、地域の人たちの小商いを応援したい、と高性能のオーブンや急速冷凍できる冷凍庫、真空パックできる機械などを導入。シェアキッチンとして町民の人は有料で借りることができ、この施設でクッキーなどを作り「駅前食堂」で販売している町民の方もいるそうです。

 

‘19年の視察でも訪れた「横瀬町立小学校」では、教育次長の町田氏よりご説明いただきました。

’20年から‘23年まで、新校舎の建築・昭和8年に建築された木造校舎の断熱改修・旧鉄筋校舎2棟の解体が行われました。昭和8年築の木造校舎は、毎年5年生が現役で校舎を使っていたので既に耐震工事済でした。そのため、新校舎検討時、町のシンボル的な一番古い木造校舎は残して断熱改修し、鉄筋の2棟は解体して新校舎を新たに建築することになりました。新校舎では、町有林から切り出され地元企業や職人さんたちによって加工された木材がふんだんに使われています。また前回の視察やCVでの学びを活かし、夏は暑く冬の寒さも厳しい秩父地域においてもできるだけ光熱費を抑えつつ快適に子どもたちが過ごせるよう、外断熱による建築が行われました。味わいのある木造建築も、床や天井など入れられる所には全てぐるりと断熱材を入れて改修。子どもだけでなく保護者にも、暖かくなった木造校舎・新築校舎が喜ばれているとのこと。特に木造校舎を残したことは、親・子・孫3世代に渡って同じ校舎で学べると、地域の人たちにとても喜ばれているそうです。

 

次に訪れたのは町産のジビエ加工販売を行っている民営の「カリラボ」。こちらも「よこらぼ」がきっかけで生まれた事業で、振興課の若林氏に案内していただきました。横瀬町でも、鳥獣による農作物への被害のみならず、鳥獣害対策のノウハウを持った狩猟者の高齢化や後継者問題などの問題がありました。ここに、ノウハウの相互活用や新たな担い手作成、ジビエによる地域ブランドづくり、狩猟体験やジビエを返礼品としたふるさと納税の活用、狩猟体験を活用した移住促進や観光施策などをめざし、町と株式会社カリラボで包括協定を’22年に締結しました。こちらの加工販売所もコロナによる補助金で建設。罠による狩猟や捕った鹿肉の解体技術の継承を行いつつ、ここで月に2回ジビエ料理のレストランをオープン、あとの肉は加工され、あしがくぼの道の駅や都内のレストランで販売されています。解体の過程を外からも見学できるような作りになっていました。

 

 

次に訪れたのは町産のジビエ加工販売を行っている民営の「カリラボ」。こちらも「よこらぼ」がきっかけで生まれた事業で、振興課の若林氏に案内していただきました。横瀬町でも、鳥獣による農作物への被害のみならず、鳥獣害対策のノウハウを持った狩猟者の高齢化や後継者問題などの問題がありました。ここに、ノウハウの相互活用や新たな担い手作成、ジビエによる地域ブランドづくり、狩猟体験やジビエを返礼品としたふるさと納税の活用、狩猟体験を活用した移住促進や観光施策などをめざし、町と株式会社カリラボで包括協定を’22年に締結しました。こちらの加工販売所もコロナによる補助金で建設。罠による狩猟や捕った鹿肉の解体技術の継承を行いつつ、ここで月に2回ジビエ料理のレストランをオープン、あとの肉は加工され、あしがくぼの道の駅や都内のレストランで販売されています。解体の過程を外からも見学できるような作りになっていました。

 

最後に、西武横瀬駅併設の案内所・食堂・土産店「駅前食堂」。元々民営でしたが ‘21年9月にコロナ禍で閉鎖。「チャレンジキッチンENgaWA」のコミュニティカフェを ‘21年10月にオープンさせる予定でしたが、駅の食堂&売店はできるだけ早く再開した方がいいと方針が決まり、カフェオープンを延期しこの駅前食堂の運営を地域商社ENgaWAが急遽引き継ぐことになりました。新しい「駅前食堂」では、それまで販売していた一般的な大手メーカーの飲料や製菓などの販売をやめ、売店や土産物は横瀬・秩父地域に限定。食堂も季節ごとに地元の食材にこだわったメニューを開発、徹底的に地域経済循環を意識しています。最初は、これまで買えていたものが買えなくなったと地元の人たちからの反対意見もありましたが、ここでは地元のものを応援していくという主旨を丁寧に説明し、今ではその人たちも地元のものを購入してくれるそう。地元のおばあちゃんがチャレンジキッチンで作ったオートミールクッキーや、横瀬町産の規格外のぶどうの粒「まごぶどう」を使った新クラフトビールなども開発し販売。とても人気とのことです。日中は観光客向けメインの通常営業、曜日限定でモーニング(登山客・地元住民向け)開始、火曜日夜は駅周辺の店舗が定休日なので、地域住民向けに火曜日夜のみ特別夜営業をしています。

 

視察後「三代目山ちゃん」の懇親会では、鍋や焼き鳥のほか、特別に上述の「カリラボ」の鹿肉、「よこらぼ」で実現したどぶろくなどもいただき、大盛会となりました。また翌日は横瀬町庁舎にて、クラブヴォーバン第20回持続会定例会を開催させていただきました。小さな町で公務員としてこれまでやってきたことを踏襲しているだけでは町は消滅してしまうかもしれない。前回の視察から5年で、まちの中心部にそれまでにあまりなかった活気や賑わいが着実にうまれ、有機的にさまざまな事業やプロジェクトが関連し合い、地域に活力がうまれ潤い始めていることを感じました。「すべては地域の人のWellbeingのため」(町長言)。全国的な傾向になっている、少子高齢化と都市部への人口流出という流れにあらがい、今の幸せ度を維持するために「楽しく、町を変える、町が変わる」「町の職員にしかできないことがある」「町はチャレンジしつづける」という、役場や町の人たちの強い意志と本気度が伝わってくる視察でした。