GX戦略において、2023年からの10年間で官民併せ7兆円の投資を目指し、脱炭素社会実現に向け国は大きく動いています。R4年~R6年末補正予算までに既に1兆円の補助金が拠出された、GX部門最大と言える注目株の蓄電池。今やコストが大きく下がり、今後脱炭素社会に向けて、主に自家発電&使用での急速な普及が期待されています。今回のPJ100セミナーでは、蓄電池そのもののトレンドだけでなく、太陽光発電+蓄電池(+AI自動制御)による自家消費向上よって、EVや住宅でいかにCO2排出を削減でき、災害などのリスクも低減させることができるかを学びました。

まずはCV代表の村上より、蓄電池が今注目されている背景について。このPJセミナーが2009年にスタートして以来、蓄電池をめぐる状況は大きく変わった。ほんの数年前まで、蓄電池は価格や性能、廃棄やリサイクルの面で様々な課題があったが、これらの課題に解決の兆しが見え始め、ようやく世界中で一般的に普及し活用されはじめている。政府が進めているGXでも「太陽光の最大限の活用」がうたわれているが、太陽光パネルをたくさん導入しても、自己が消費する電力よりも過剰に発電する時間帯に系統に売電するのはますます難しくなっている。太陽光からの電力を有効に活用するためには蓄電池の有効性は大きい。今後も系統から購入する電気代は上がり続ける予測なので、今こそ蓄電池について学び、令和の三種の神器である①家庭の電化(ヒートポンプ)、②PV+蓄電池導入、③乗用車のBEV(走る蓄電池)化を進めるために備えてください、との話でした。
次に産総研の櫻井啓一郎氏より、蓄電池の技術的な動向や市場で最新のトレンドや将来の見通しについて。35年くらい前にはEV1台分(60kWh)の蓄電池が約1億円だったが、今やその200分の1以下。世界では、普通のエンジン車やハイブリッド車よりも、EVの方が安くなってきている。世界の蓄電池の約3/4が中国製。蓄電池を背景にした経済戦争が進行している。EVの蓄電池も、安くなっただけでなく、バッテリーの体積あたりのエネルギー密度も高くなり、性能も向上、充電速度も耐久性も上がってきている。また、昼間職場でEVの蓄電池を太陽光で充電し、V2Hで電力使用量ピーク時の夕方にその電気を家庭で使えようになると、夕方のコストの高い化石燃料由来の電力を使わずに済む。バスなどの大型車もBEVやEVに置き代わっていく予測が出ている。太陽光発電の多いカリフォルニアでは、昨年あたりから系統に蓄電池を大量に連携させ、昼間の太陽光を夕方の使用電力の多い時間帯に蓄電池から電気として使うことに成功している。
今や世界の新設の電源の9割、既存電源の置き換えでも6割以上が、太陽光や風力など再エネに置き代わっている。理由は再エネをある程度蓄電池に溜めて使う方が、化石燃料よりも安くなってきているから。この10年で完全にパラダイムシフトが起きた。その他セミナーでは、蓄電池の種類と開発動向、現在主流のリチウムイオンやナトリウムイオン電池以外の次世代の電池について、原料や長所・短所、安全性や価格、環境性能などについて解説がありました。
次に代表理事の早田から、住宅における太陽光+蓄電池の活用事例について。家庭分野では、住宅の躯体の断熱と気密をしっかりやりましょう、ということをこれまでやってきた。再エネよりまずは省エネを優先して家を建て、その後いつでも設置したい時に太陽光発電を載せられる家を作ってきた。最近になってようやく採算がとれるようになってきたので、お客さんにも太陽光発電の設備を販売するようになった。電気代は年々上がる一方で、今後炭素税もかかってくるので、太陽光発電設備を住宅に入れるべき。
2025年4月より省エネ基準適合義務化された断熱等級4の基準を満たす新築の家でさえ、一軒あたり年間約3.7トンのCO2を排出する。これは年間ビニール袋53万枚の排出量に相当するので、まだ十分でないレベル。脱炭素社会をめざすには、断熱等級7くらいのCO2をほとんど排出しない家で、太陽光発電で「創エネ」し、蓄電池で「蓄エネ」し、建物設備の自動制御で「活エネ」することが大切である。これらの実例のほか、蓄電池メーカーごとの性能比較や選び方について、解説がありました。
最後の現地参加者によるディスカッションや懇親会では、各立場での悩み事なども出て活発な議論が行われました。
