物価の上昇が止まりません。社会保障費等の上昇もあり、手元に残る所得は増えない、または減少する世帯は多く、日本における市民の暮らしはますます厳しくなりつつあります。私たちの生活に欠かせない「衣食住」とのひとつ、住宅においても、このわずか数年で土地代・建築費が大きく上昇し、それが住宅の分譲価格や賃貸価格の急高騰につながり、とりわけ若者にとって大きな影響が出ています。
自治体がこの先数十年持続していくためには、まちを担う若い世代が安心して暮らせるインフラが整っていることが必要不可欠です。これまでCVでは、高断熱の建物を建て、太陽光など再エネにシフトすることで、温暖化防止対策・脱炭素対策にもなりますが、同時に可処分所得を圧迫する光熱費も下げることができる、そして地域や自分の足元の経済が回っていけば、社会の物価高やエネルギ―価格の高騰など社会変動があってもそれほど大きな不安がなく暮らすことができる、という話をしてきました。しかし、コロナ禍が明けて、多種多様な物価が急騰したこの数年で、多くの若者が普通に働いたところで、家を持ち子どもを生むことが困難な世の中になっているように見受けられます。そのため今回はこのテーマを代表の村上が取り上げました。
今、日本では、少子化が異常な速さで進行しています。厚労省から2024年度の合計特殊出生率は「1.15」(人)と、過去最低の数値が発表されました。この数値は、これまで社人研(国立社会保障・人口問題研究所)が発表してきた人口推計の「想定しうる最低/悲観的シナリオ」の水準です。これまでも長年、少子高齢化が叫ばれてきましたが、これまでとは違うペースです。子どもがここまで生まれない世の中になると、住宅、暮らし、ビジネスの形態、自治体経営など何もかも社会全体がこれまでと変わってゆきます。
若い世代が(現実の制約がなかったとしたら)持ちたい子どもの数の全国平均は「1.8」(人)。なぜここまで、現実と希望が乖離しているのでしょうか。今回のセミナーでは、人口動態統計や住宅・建築関連などの統計データと、少子化や住宅政策などに関する論文を紹介し、社会で何ができるかについて考察を行いました。
近年は住宅価格が高騰し、都内では普通の新築マンションが1億円を超え、マンションも戸建ても住宅の面積が縮小しています。住宅着工戸数も減少しています。社会保障費などの上昇により、若い世代の可処分所得は増えていないので、多くの結婚や子育てを希望する世帯には、マイホームは手の届かない夢となっています。
社人研が2021年に行ったアンケートでは、35歳未満の若い世代で理想の子どもの数を持たない理由として、1位は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」2位は「育児の心理的・肉体的負担に耐えられないから」3位は「家が狭いから」。
日本ではこれまで、家族ができてから子を持ち、その後で持ち家を持つことが前提の社会でした(持ち家率約7割)。にも関らず、若い人が子育てのために持ち家を持てない社会になっているのは大問題です(ドイツでは持ち家率が35%程度なので、持ち家を持てるかどうかは少子化にそれほど大きなインパクトは与えない)。狭く、部屋数が不足する住環境では、子どもを持とう、もう一人欲しいという希望は叶えられません。最近は若い世代が新築の家を建てよう、購入しようとしても、銀行のローンの審査が通らないことも多くなっています。国や自治体によるインフラとしての住宅政策や、住宅関連ビジネスを、今後どうしていくかによって、今後この少子化トレンドがさらに加速する方向に引き金を引いてしまうのではないか、非常に危惧されるところです。
国が主導し、世界に遅れてようやく脱炭素社会に向けた高性能な住宅の新築基準や制度が整ってきましたが、家自体を持つことができないとしたら、その制度には何の意味もありません。では、若い世代をサポートするためにどのようなアイデアや事例があるでしょうか。セミナー参加者の方々と、公共や民間の様々な住宅インフラ提供の事例やアイデアの共有があり、議論が行われました。答えは簡単に出ませんが、CVでは、引き続きこのテーマについて考え、挑戦していきたいと締めくくられました。

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