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持続可能なまちづくり × エネルギー自立地域をめざす全国ネットワーク

1月25日「第7回・持続可能な発展を目指す自治体会議」を開催しました

一昨年から取り組んできた「地域経済循環モデル」において、省エネ建築事業に本格的に取り組みたいという会員自治体が多かったため、今回は省エネ建築をテーマとし、省エネ建築について多角的な視点からインプットをする会となりました。

午前中には、クラブヴォーバンが企画・開発に関わったSDGs の体験シミュレーションゲームを開催し、大変好評をいただきました。

午前中の持続会特別イベント “SDGs を広く知ろう!コンセプト「kWh=¥」のシミュレーションゲーム自治体版体験会” についてのまとめは(こちら)をご覧ください。

午後の持続会の特別講座の最初には、理事の今泉太爾と代表の村上敦から、「日本における電力需給の現状と仮定での未来について」。再エネを基幹電源と据えて進化を続けるドイツのエネルギービジネス市場の最新の動きと、日本の電力需給の現状と未来の市場予測について、CVで開発し公開した「電力需給実績見える化グラフhttps://wellnesthome.jp/energy/)」を実際に動かしながら解説しました。

また、このグラフ日本の各電力事業者の管内で、太陽光発電と風力発電を主体とする再生可能エネルギーがさらに進展するとどうなるのか、あるいは停止中の原子力発電が再稼働するとどうなるのか、などの試算も行いました。電力市場が自由化された欧州で一般的になってきた「コネクト&マネージ」の考え方も紹介し、日本での有用性について議論しました。

次に、代表の村上から、「ドイツで進展するセクターカップリング対策」の詳細について。ドイツで進められているセクターカップリングとは、再エネ電力が順調に増加し、価格も安価になり続けているので、エネルギーを最終消費する3つの部門「電力セクター」「熱セクター」「交通セクター」のうち、熱と交通部門でも再エネ電力の利用を増やしていくという考え方です。ドイツでは2050年までに一次エネルギー供給量を半減した上で、電力の80%以上を再エネにシフトすることが国として決まっており、そのための3本柱の対策 ①再エネ電力の大々的な普及 ②自動車交通のEV化 ③建物の省エネ化→高断熱・高気密改修による暖房エネの大幅削減 が並行して進められています。

そのようにして一次エネルギー供給量を低下させながら、増加させ続ける再エネ電力で3つのエネルギー消費セクターをつないでゆく、同時に電力需給における柔軟性を向上させる、というのがセクターカップリング対策となります。また、ドイツのセクターカップリングと、日本の過去に進められてきた「オール電化」との違いについても説明があり、議論されました。 

次の本会議では、CV会員自治体(北海道下川町・ニセコ町、岩手県二戸市・葛巻町・雫石町、埼玉県横瀬町、鳥取県北栄町、熊本県小国町)から、「地域経済好循環モデル」の実装の進展について議論と報告がありました。昨年度から進めてきている「地域経済好循環モデル」において、何をこれから具体的に進めていくかということの進捗を共有しました。行政においてどういった補助金などを含めた政策が、その地域が豊かになることに本当につながるか、各自治体の気候や地域資源などの特性によって違うため、クラブヴォーバンでは各自治体の特性を鑑みて適宜アドバイスを行ってきましたが、今後もさらに会員自治体に住む人々が真の意味で豊かになるよう、サポートを続けてゆきます。

その後、CVメンバーで建築事務所プレゼントデザイン代表川端順也氏から「幼稚園における省エネ建築の推進」について。川端氏は、エネルギーパス協会で住宅の断熱性能表示などの普及を行っていますが、住宅だけではなかなか省エネ建築が広まらないので、公共建築などにも広げていきたいと考え、現在、広島の幼稚園の設計なども手掛けています。その関連で昨年視察した、ドイツ最新のパッシブエネルギー小学校の詳細の紹介がありました。日本は子どもよりもお年寄りを大切にする傾向があるが、子どもたちが良い環境の保育・幼稚園で過ごせたら、その子たちが大人になったときに、良い建築を選ぶようになるはず。少子化の今、子どもたちにこそお金をかけるべきだと締めくくられました。

次に、クラブヴォーバン広報室長の高橋彰氏から、「現在の日本のZEHの推進状況と制度について」。高橋氏はこれまでBELSという制度の立ち上げや省エネ基準適合の義務化に関わっていました。欧州やアメリカ、アジアの先進国の各国比較で、住宅・建築物の省エネ規制は、主要先進国で日本だけが義務基準がなく(努力義務にとどまり)、またそもそも日本の省エネ基準自体が、諸外国と比べて非常に低いレベルとなっています。

また、例えばドイツでは3~5年毎に建築の省エネ基準が強化されていますが、日本の省エネ基準値は長年厳格化がなされていません。以前より日本のZEHは進んできてはいるが、断熱の基準だけでなく、欧州で定められている気密の基準が日本のZEH基準には入っていないので、気密についても進めていくべき、との話がありました。一般社団法人 ZEH推進協議会( http://zeh.or.jp/)でもZEHを推進しており(現在の自治体の会員は、青森県、横浜市など)、建築の断熱を進めていきたい自治体は入会を検討しては、との紹介もありました。

次に、代表理事の早田宏徳から、「日本のZEHの功罪について」。あと2、3年で日本の「ZEH」が当たり前になってくると思うが、やり方に問題点があるので、よりよい制度になってほしいとの話でした。ドイツの場合、照明・空調・換気光熱費・家電すべて含め、全館の室温を、夏27℃以下、冬20℃以上に冷暖房含めコントロールした上で、エネルギーがプラスになる条件を満たした建築を“ZEH“と呼べるが、日本の“ZEH“は、家電が抜かれ、室温基準がなく、18年前と同じレベルの建物でもZEHと言えてしまうので同じ“ZEH“ではありません。

今の大手ハウスメーカーのUA値0.6のZEH住宅だと、室温基準がなく家電も前提から外されているので、太陽光パネルを相当搭載しなければなりません。消費者は“ZEH“と聞けば冷暖房費がかからないと思って買ってしまいますが、実際は冷暖房で電気がかなり必要になるので、要注意。とりわけ10~15年で買い替えが必要な太陽光や蓄電などの機械設備をたくさん搭載している家なので、問題です。さらに断熱のUA値は意識されても、気密性能がおざなりなのが問題なので、会員の自治体さんには、ぜひ高いレベルでのZEH住宅の推進を目指してほしいとの話でした。

次に、理事の中谷哲郎から、「建物の長寿命化対策の状況について」。これまで、公営住宅の省エネで 1)入居者の光熱費を削減させる 2)入居者の医療費を削減させる として改修を促進させる取り組みをしてきたが、なかなかハードルが高く、大きな推進にはつながっていません。しかし、実際公営住宅の断熱改修をした自治体さんに公営住宅の断熱改修に着手した理由を聞いたところ ①入居者からのクレーム(結露)②結露原因のカビで退去後の原状回復工事にコストがかかるため ③長寿命化対策(不良資産化した建物を資産価値向上)ということだったので、「省エネ推進」だけでなく、とりわけ「結露問題の解決」という切り口からも自治体の公営住宅の再生を推進していくとより推進されるのでは、との話でした。

最後に、佐久総合病院地域医療部の医師、色平哲郎氏から、「住宅の室温と健康・第一線医療」について。長野の佐久総合病院は、世界でもっとも有名な地域医療病院のひとつです。佐久では昔から佐久総合病院の医師が、古い家でトイレが家の外にあったのを家の中に作るよう、地域の人々に指導して回り、脳梗塞を減らした歴史があります。医者が看護師と一緒に農村に入っていき、演劇などをしながら健康の知見を広め農民の寿命を改善していったとして、色平氏は実際に過疎高齢化で身体が弱り買い物に困るお年寄りの実情を一人芝居で実演。

色平氏は、元々医師を目指す前に建築を学んでいたこともあり、20年ほど前から、外断熱の重要性について地域で講演会を開いたりしていたとのこと。長野では、厚着をして暖房を我慢している農家の方に、「せめて自分のいる一部屋は温めよう」と言って一部屋暖房が始まったが、良い部屋というのは外断熱をしてどこの部屋も温度が同じであること。そして、学問で大事なことは「Leran(学ぶ)」だけでなく、「Unlearn」、つまり学び捨てる・学びほぐし、自分のものにして実践すること、と力説されました。

また、長年世界の地域医療に取り組んで来られた、色平氏の友人の元WHO医務官のスマナ・バルア氏からも、日本の地域の中からどうやって医療従事者を育てていくか、そのためにできることはやっていきたいとのお話がありました。